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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第3章 マルシェラ領運営編

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第39話 あるモヒカンの世紀末なファンタジー

◆モヒカン◆


 薄暗い裏通りを歩く。

 碌に人通りも無い通りだが、細い路地の奥からは時折刺すような視線が襲ってくる。

何でもない通りに見えるここは、しかし一瞬の油断で全てを奪われる地獄の一丁目である事を俺は知っている。

道の隅でいびきをかいて寝ている浮浪者も、隙を見せれば後ろから殴りかかってくる強盗に早変わりする、そういうところだ。


 何事も無いように振る舞いながらも、俺は最大級の警戒を続けながらより細く深い路地へと入ってゆく。

 その先は行き止まり、いや建付けの悪い扉がそれを壁ではなく入り口だと主張している。

 俺は容赦なく扉を蹴り破ると、その中に入って行った。


「ヒャッハー! マスター酒だ酒! 酒をくれ!!」


「馬鹿野郎! もっと静かに入ってきやがれ!!」


 そこは酒場だった。

 胡散臭いロクデナシ共の集まる世紀末の憩いの場。


「おー、来たなモヒカン! お姫様のお守りはどうよ!」


「はっ、退屈の連続だぜスキンヘッド!!」


 俺はスキンヘッドの男の横の席にドカッと座ると、カウンターに向かって酒を頼む。


「まったくお前等が乱暴に入ってくるからドアがすっかり開かなくなっちまった!」


「おいおい、マスターの店は昔から建付け悪いだろー」


「そうそう、早く店ごと建て替えろよ!」


「うっせー! そんな金ねーよ! この店を買うのにいくらしたと思ってんだ!」


 などと荒くれ者共を相手にしているとは思えないようなカタギのセリフを吐くのにも理由がある。

 そう、ここに居るメンバーは店の店主も含めて全員がILLのプレイヤーだ。

 ここはヘルダウン。ロクデナシ御用達の場末の酒場。


 最も、ギルドマスターであるマスターはもっとしっとりとした店をご希望だったらしい。が、生憎と金が足りなくてこんなボロっちい最悪立地の店しか買えなかったって訳だ。

 それでも本人の話じゃかなり割引して貰ったらしいが。


だがまぁそれが俺達には心地よかった。

 気取った高級店でも、活気と希望に満ちた表通りの酒場でもない。

 人生の落後者達が後先考えずにバカ騒ぎ出来るこの店が、俺はたまらなく好きだったのだ。

 気取った店を望んでいたマスターには申し訳ないがな。


「ところでマスター、例の件どうなってる?」


 俺は酒を持ってきたマスターに小声で問いかける。

 こう見えてマスターは腕利きの情報屋だ。

 最初は売れない酒場の副業で始めたらしいが、今じゃすっかり本業よりも儲かると嘆いている。

 で、その噂を聞きつけた俺のような連中が集まってすっかりそんな輩の店になっちまった訳だ。

 ある意味才能があり過ぎた訳だな。


「まだ有力な噂は見つかってないな。空を飛んでいるドラゴンを見たって話はあるが。場所が北の領地ってのが問題だ。信憑性が怪しい上に北の領地は雪の寒さデバフが酷いらしく十分な装備をしていかないと遭難する恐れが高い。討伐するなら防寒と性能を両立した装備が必要だろうな」


「それをレイドに参加する人数分揃えるか……確かに厄介だ」


 前回のアースドラゴンとの戦いを考えれば、次の戦いもレイドバトルになるのは間違いないだろう。


「いっそ他種族の大陸に行った方が早く見つかるかもな」


「いや、そんな時間はねぇ。マスターも知ってるんだろう?」


「第4王女との決闘だな。 まだ日付は決まってないと聞いたが」


「一か月後だ。それまでにドラゴンを探して討伐してお嬢をクラスチェンジさせる必要がある。それに加えて俺自身もクラスチェンジして強くならねぇとだ」


 船での移動には時間がかかる。

 国交回復式典でも片道で数日かかったからな。

 帰りがワープで一瞬だとしてもそれ以外の移動時間も含めると未知の大陸はリスクが大きい。


「忙しいねぇ。クラスチェンジに関してはまだ情報が足りねぇんだよ。条件自体がバラバラで再現性が無い。恐らく一度クリアしたイベントは消滅するか再利用するにしても他大陸でのイベントで出るかだろうな」


「プレイヤーの種族ごとに大陸が分けられているのは再利用イベントの攻略難易度を上げる為って事か」


「繰り返されるほど最高効率の進め方が確立されるからな」


 運営も色々考えてんだな。

 将来的にはそうしたイベントも簡単に攻略されるだろうが、ゲームリリース直後には有用な方法だろう。


「そっちは引き続き探しておいてやるよ」


「頼んだ」


「そうだ、その姫さんのギルドホームにあるワープアイテムって他にもあるのか? 他大陸に遠征する連中が欲しがってるんだが」


「あいにくと知らねぇ。ウチのお嬢の話だと魔王から貰ったっていうから、手柄を立てれば貰えるんじゃねぇのか?」


「あー、それじゃウチの客には無理だな」


 ま、あのワープアイテムは誰でも欲しいわな。

 俺達もお嬢が特別なNPCだから使わせて貰えてる訳で、プレイヤーのギルドが使えるにようになるには、まだまだ時間がかかるだろう。


「おう、コソコソ話は終わりか?」


 俺達の話が終わると、それまで待っていたらしいスキンヘッドが酒をもってテーブルに戻ってくる。

 コイツこの見た目で意外と気遣いが出来るんだよな。


「ああ、結果は芳しくなかったがな」


「だったら気分転換に行かねぇか? 町の東のエリアに面白いものがあるんだよ」


「面白いもの?」


「誰も使っていない廃砦さ」


「へぇ」


 廃砦と聞いて俺の世紀末センサーが働く。

 そういった場所は総じてロクデナシ共のたまり場になる。

 そう、俺達のような、な。


「面白そうだな。いつ行くんだ?」


「メンバーは既に集めてある。お前が良いならこれからすぐだ」


 わざわざ俺が来るのを待ってたのか。本当に気遣いの出来る奴だぜ。


「いいぜ、乗った。お嬢様のお守りで上品な戦いをするのには退屈してたところだ!」


 ◆


「おいおい、話が違うじゃねぇか」


 スキンヘッド達と廃砦にやって来た俺だったが、砦の様子が聞いてた話と全然違っている事に文句を言う。


「砦が補修されてるぞ。いや、まだ補修中か?」


 一部は修繕されているが、まだこれからやる為の足場が組まれている箇所が見える。


「騎士団が再利用する為にやってるのか?」


「いや違うな。見ろ、あそこにいる見張りを。どう見ても正規の兵士じゃねぇ」


 廃砦の入り口を見ると、ボロい革鎧を着た明らかにカタギじゃない連中の姿が見える。


「盗賊か?」


「恐らくな。どこかから流れて来た連中が自分達のアジトにする為に改造してるんだろう」


「なんてこった、先を越されたって訳か」


 廃砦を再利用してアジトにするなんざ、まるで漫画かゲームの悪党じゃねぇか。


「どうする? 撤退するか?」


 先客がいた事に弱気になったスパイクヘアが予定を中止するか聞いてくる。


「ウニみたいな頭してる癖に弱気になってんじゃねぇよ。そのトゲで刺し殺してやるくらい言いやがれ」


「バッカお前、この髪型にするのも大変なんだぞ」


「馬鹿話はそこまでだ。計画は続行、寧ろ俺達の獲物を横取りした事を後悔させてやれ」


「砦に籠られたら不利じゃねぇか?」


 スキンヘッドの一声ですぐさま作戦会議が始まる。


「いや、まだ補修中でそこかしこが穴だらけだ。寧ろ高所と遮蔽物の確保が最優先だな」


「よし、一斉に全周囲から侵入。見張りは可能な限り無視して侵入を優先。陽動している間に飛び道具使える奴等が高台を確保して有利を取れ」


「「「おうっ!!」」」


 全周囲から襲う為に他のメンバーが移動していると、スキンヘッドが話しかけてくる。


「やっぱりお前がいると作戦がスムーズに進むな。今からでも俺達のギルドに入らねぇか?」


「気持ちはありがてぇが、今の俺はお嬢のお守りをしてるんでな。まだしばらくはあのお人好し達と一緒に居るさ」


「そうか、まぁ気が向いたらいつでも来い。そうでなくても暇なら遊びに来い。俺達ゃ同じ趣味の仲間だからな」


「ああ、そうさせてもらう」


 そうこうしている間に包囲した連中から合図が来る。


「よし、行くぞ!!」


「「「「うぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」


 雄たけびを上げて一斉に飛び出してゆく俺達。

 コソコソ隠れて接近なんざチンピラのするこっちゃねぇってな!


「な、何だ!? 敵襲か!?」


「メーザーフレイム!!」


「ぐわぁぁぁぁっ!!」


 突然の襲撃に戸惑った見張りに魔法を叩き込み、その隙に他の連中が壁の穴から内部に侵入してゆく。

 そしてすぐに扉が内側から開かれると、残ったメンバーが殺到してゆく。

 が、敵襲を察した盗賊達もすぐさま反撃を開始して城門付近から悲鳴が溢れる。


「だから隙間から入り込めっつったろうが」


 どいつもこいつもチンピラムーブし過ぎて頭までチンピラになってやがる。


「けどよ、こういう抜け道から入って後ろから殴りかかるのもチンピラらしいだろ!!」


 俺は城門に殺到した仲間達を攻撃している高台の弓使いに死角から魔法を放ち叩き落とす。


「ぐわぁぁぁっ!!」


「ハイジャンプ!!」


 それを好機と見た何人かがスキルで大きく跳躍して高台を制圧する。


「こっちは制圧した!!」


「よし向こうの高台も狙うぞ!!」


 落とされた盗賊を蛸殴りにした後で別の高台を狙って一斉攻撃を仕掛ける仲間達。

 そこに砦の中にいた盗賊達も騒ぎを聞きつけて飛び出してくる。

 だが既に高台のほとんどはこちらが掌握しており、下にいる連中と合わせて出口にから出てくる奴を各個撃破する状況を作っている。

 が、そこはそこかしこが壊れた廃砦、壊れた壁からこっそり抜け出して仲間を後ろから攻撃しようと動く連中もいた。


「そうはさせねぇぜ! ラディアムメーザー!!」


 俺の放った範囲魔法が不意打ちを仕掛けようとした盗賊達を一掃する。


「壊れた壁から出てくる奴らが居る! 高台の連中はそいつらを狙ってくれ!!」


「分かった!」


 既に高台は全て奪い取り、戦いは完全にこちらが有利になっていた。


「ちっ、情けねぇ野郎共だ!!」


 その時だった。上空から苛立ちの籠った声が轟く。

 同時に高台の更に上から無数の攻撃が降って来た。


「ぐわあぁぁあっ!!」


「うわぁぁぁぁっ!!」


「なんだ!?」


 俺は建物の陰に隠れて攻撃をやり過ごす。

 だが高台に居た連中は想定外の上からの攻撃の直撃を受けてしまい、地面に落下してしまった。


「まさか空でも飛んでるってのか!?」


 攻撃が止んで上を見ると、空には誰もいなかったが代わりに半壊した砦の最上階に人影が見えた。

 なるほど、壁がないならあんな場所でも高台になるか。


「俺様のスネーク団に手をだそうたぁ生意気な連中がいるじゃねぇの!!」


「どうやらアイツがボスみたいだな……」


 ボスは物陰に隠れた俺にはまだ気づいていないようだ。


「おいお前、こっちを見ずに話せ」


 近くにいた仲間に声をかけると、俺は作戦を伝える。


「スキンヘッドにパーティ会話で伝えろ。ボスの視界に入ってない連中を砦の中に侵入させて上に上りボスを後から攻撃白ってな。俺も一緒に中から攻める」


「……分かった」


 仲間は小声で答えるとパーティ会話でスキンヘッドに連絡する。

 俺はマスターのギルドメンバーじゃねぇからパーティ通話できないからな。


「リーダーもその作戦に応じた。人数は少ないが死角に居て気付かれなかった連中が向かうそうだ」


「よし、こっちは任せた!」


 ◆


 廃砦の中を俺は進んでゆく。

 ただしボスの死角に居た連中はバラけていた所為で個別に最上階を目指す形になっていた。

 当然外に出ていない雑魚が行く手を阻んでくる。


「侵入者だ!!」


 メーザーフレイム!!


「ぐわぁっ!!」


 ボロい鎧だけあって防御力は低いな。


「オラァッ!!」


「ちぃっ!!」


 そこかしこの壁が壊れている為、不意打ちを喰らってしまう事もある。

 だがこっちは装備をしっかり整えていることもあってダメージは少ない。


「武器もボロいな。この辺りの敵ってよりも他所のエリアから流れてきたのか?」


 普通ならそれも含めて難易度調整されてると思うんだが、このゲームだとそういう事もあるのか?


「まぁ弱い分には楽でいいか!」


 今は実質ソロだしな!!

 装備パワーで敵の群れを突っ切りながらついでにお宝をちょいちょい頂いて上へ向かうと、既に集まっていた仲間達がボスに向かって攻撃をすべく準備をしていた。

 そして時間が惜しいとばかりに俺の到着を待たずにボスへ攻撃すべく部屋の中へと飛び込んでゆく。


「ばぁーか!」


 が、ボスには気付かれていたらしく逆にボスの攻撃を喰らう仲間達。


「お前がばぁーか! ブルーメーザー!!」


 が、これ幸いと跳びこんで攻撃直後のボスに必殺の一撃を叩き込む。


「なにぃっ!?」


 倒しきれなかったもの、直撃の勢いで壁際に居たボスが足を踏み外す。


「場所が悪かったなぁ!!」


「う、うわぁぁぁぁぁぁっ!!」


 反射的に手を伸ばすも、その手は宙を掴むばかりで無慈悲に重力がその体を地面へと吸い寄せる。


ドッ、という音と共にボスが地面に落ちると、まるで蟻のように下にいた連中がボスへと群がっていった。


「よくも好き勝手やってくれたなぁ!!」


「オラオラ! 経験値寄こせボスがよぉっ!!」


「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」


「ありゃもう駄目だな」


 今から降りても無駄足だと判断した俺は、ボスの部屋を見回す。

 一見すると崩れた壁の破片ばかり。本棚の中身は既に持ち出された後なのか空っぽ。


「ふむ、お宝の匂いがするな」


 だからこそ逆に怪しい。


「これだけボロボロだと壁に隠し金庫は無いだろうな。なら床か」


 古びた絨毯をめくって床を見ると、壁に比べれば綺麗な床が見える。


「位置的にこの辺りに砦の主の机があったと考えると……ビンゴだ」


 床の石材に一つだけ不自然に埃が詰まっていない部分が見つかる。


「定期的に開け閉めしてるから埃が積もらねぇんだよ」


 床を外すと中にはお宝が隠されていた。


「宝石類、それに書類と装飾された短剣か。ありがたく戴くぜ」


 俺達ゃゴロツキの集まり。仲良くお宝を山分けなんて仲良しこよしな真似なんざしないぜ。

 どうせ他の連中も同じことしてるだろうしな。

 あの酒場にたむろする連中はそういう部分も混みでゴロツキを楽しんでるんだからよ。


「むっ!? これは!!」


 お宝を懐にしまい込んでいると、一つだけ気になるアイテムが見つかった。



『エンドオブザエンチュリー:クラスチェンジアイテム:世界がどれほど終わろうとも、人の欲望が終わる事はない。いつの世もしたたかな者達は蔓延るものだ』


「お宝ゲットだぜ」


 誰かに奪われる前に早速アイテムを使う。


『エンドオブザエンチュリーを使用しました。特殊クラスチェンジが始まります』


 直後、俺の体が炎に包まれる。


「おお!? コイツは!?」


 だが炎は決して俺を害するものじゃない。

 寧ろ俺の心を高揚させようとしているかのようだ。

 そして炎が掻き消えると、俺は新たな力を手に入れた事を実感する。


『クラスチェンジ完了。クライムリーダーに進化しました』


 ははっ、随分と物騒な感じのクラスになったもんだな。


『クライムリーダーにクラスチェンジしたことで『クライムコール』『焼却滅菌』を習得しました』


―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

クライムコール:忠誠心の低い部下を上手く指揮できるスキル。NPCへの命令の服従率を上昇、全体のステータスを5%上昇。

焼却滅菌:炎系スキルの威力を一時的に5倍にする:クールタイム60秒

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ヒュウ! コイツはご機嫌なスキルだぜ!!」


 士気スキルはともかく炎系のスキルの威力を上げる方は最高だな!!


「気分転換で遊びに来たら思わぬボーナスをゲットだな」


 そうして、思いがけずクラスチェンジアイテムを手に入れた俺は、何気ない顔で勝鬨を上げる仲間達の下に戻っていくのだった。

 さもお宝なぞどこにも無かったような顔で……

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― 新着の感想 ―
ヒャッハーがクラスチェンジしてもハート様にはならないか、あの消毒ヒャッハ一は所属が違うからなあ。 なら修羅にもならないか?
>焼却滅菌 「ヒャッハーッ! 汚物は消毒だ~!!」という事か もはやお約束だね
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