第37話 平和な日々(平和とは言っていない)
『王位継承権を賭けた決闘を申し込む』
庭を散歩してたらなんか矢文が届いた。
「ついにコレが来てしまったか……」
俺は矢文を握りしめると……
「とりあえず燃やすのじゃ」
「任せろファイヤ―!!」
間髪入れずモヒカンに燃やしてしまった。
「これで証拠は無くなった。決闘の申し込みなど最初から無かったのじゃ」
「お待ちなさ――――いっ!!」
突如庭園の木々の陰から飛び出してくる影。
「草むらのなかから野生の魔族が!!」
「誰が野生の魔族ですか!!」
「そうだよマルスくんちゃん。野生の魔族じゃなくて不法侵入者だよ。衛兵を呼んで牢屋にブチ込まなくちゃ!」
「不法侵入者でもないですわー!!」
「ノリの良い不審者じゃのう。今なら見逃してやるから帰れ帰れ」
「貴女! 姉に対してなんて口の利き方ですか!!」
「姉?」
成程出て来た不審者の姿はよく見ればドレス姿のお姫様だ。
見た感じ俺よりも年上で……胸はデカいな。これは人気が出る(確信)
「そう! わたくしはベリラ=ラム=オーヴァロド!! 貴女の姉で第4王女ですわ!!」
「マルシェラじゃ。ではさようならなのじゃ」
「お待ちなさい!!」
挨拶も終わって自然に追い返そうとしたが駄目だった。
「あんまり邪険にされると泣きますわよ! わたくしが!!」
何だこの面倒な生き物は。
「すみません、お嬢様はこの通り面倒くさい性格なのです」
ガサガサと生垣の間からメイドさんが出て来る。これまたデカい。
第4王女周りはデカい人達で揃えているのだろうか?
「面倒くさい!? わたくしが!?」
「それと不法侵入ではなく入り口から入ってきましたのでご安心ください」
更にもう一人メイドが現れ、姉を名乗る人物を無視して不法侵入ではないと告げてくる。
「いや待て、わらわに報告無かったのじゃが」
「大変です領主様! 第4王女殿下が突然いらっしゃって門番の制止を振り切って強引に中に入って来たそうです!!」
そこに慌てた様子のセバスティアンが駆けこんでくる。
「という事です」
「という事です、ではないわ!! 許可を出す前に勝手に入り込んで更に好き勝手歩き回る事は家族でもNGじゃ!!」
「あら、では姉であるわたくしに対してどうするというのかしら? わたくし、後ろ盾も権力も貴女よりも上よ。 もちろん、貴血の覚醒段階でも、ね」
「とりあえず王都の魔王陛下に姉を名乗る不審者が不法侵入して好き放題した上に一切反省が見られないから王としての資格が無いと正直に報告するのじゃ。あと国中に第4王女は不法侵入して好き放題する迷惑王女だと言いふらすのじゃ」
「本気で嫌な嫌がらせはやめてくださる!?」
リリック効いてるツッコミ来たな。
この第4王女、もしかしたらアホの子なのでは?
「~~っ、仕方ありません、今回の件はわたくしにも多少の非があったと認めましょう。ここは可愛い妹がみずからわたくしを迎えに来るのを待つのが姉とての寛大な振る舞いでしたわね」
「いや、その場合は普通に追い返していたのじゃ」
「だからわたくし姉ですわよ!?」
最近の人工知能は凄いなー。文字通り打てば響くという奴じゃないか。
人工知能漫才とか出来そう。
「ははは、あまり虐めるのも可哀そうじゃし、この辺で勘弁しておくのじゃ。今度わらわも姉上の屋敷を自由に歩かせてもらう事を許可して貰えるのなら今回の件は水に流すのじゃ」
「あら、そんな事で良ろしいの?」
「後で家人と揉めないように一筆したためて欲しいのじゃ」
「ええ、お安い御用よ」
スッとメイドが紙と筆を差し出し、サラサラと侵入許可を記入する姉ことベリラ。
「はい、これでおあいこですわね」
「うむ! うけとったのじゃ!」
合法侵入許可証ゲットだぜ!
「では姉上をお見送りするのじゃ」
「ええ!」
スタスタと屋敷の門へと歩いてゆく俺とベリラ。
「って違いますわ! 何しれっと帰そうとしてるんですの!!」
「ちっ、気付いたのじゃ」
「貴女! 姉を敬う気持ちはありませんの!?」
「そこの棚になければないのう」
「あらそうなの? って、棚なんてありませんわーっ!!」
やっぱり芸人適性高すぎるんだよこの姉。
本当に中の人いないの?
「なんだこの姉妹、芸人か?」
「血のつながりを感じるねー」
「くっ、ふふ、くくっ」
やめろよ、俺を巻き込むのは深刻な風評被害だぞ。
あとヒメキバカウケじゃん、笑いの沸点低すぎるだろ。
「ともかく! 矢文を見ましたでしょう! 決闘ですわ!!」
「文などありませぬが? この通り」
俺は空っぽの両手を見せる。
「燃やしたじゃありませんのーっ!!」
「燃やした証拠などありませんから」
「なら今から証拠を作ってあげますわ!!」
ベリラが手を伸ばしと同時に差し出される紙と筆。
「決闘ですわ!」
「モヒカン」
「あいよファイヤ―!!」
「渡した傍から燃やすのはおやめなさいっっ!!」
「いや、寒いのかと思って火をくべただけじゃが」
「いい加減にしないとあなたの屋敷に大量の矢文を送りつけますわよ!」
何故そこまで矢文にこだわるのか……。
「マルシェラ姫、王族である以上決闘をも仕込まれたのなら受けない事は恥となりますよ」
とメイド達が主の援護を行ってくる。
「分かっておる。ちょっとからかっていただけじゃ」
「ちょっと!? あれが!?」
「しかしアレじゃの。姉上はあれだけ自分はわらわよりも上だというのに格下に決闘を挑むのじゃな」
「だからこそです! 魔族として強き者が相応しき地位に就くべきなのです!」
「じゃが圧倒的に実力が上の者が格下相手に大人げなく力を振り回すことには変わりないじゃろ? その場合姉上がこれ幸いとわらわに継承権が移るまでコソコソ待っていたと、意気地なしだと言われてしまうのう」
「なんですって!?」
ヒューッ、ノリツッコミ良いだけに沸点も低いぜ!
「そう思われない為にも戦力を拮抗させぬか? 姉上一人に対しハンデとしてわらわは家臣と共に戦って良いというのはどうじゃ?」
「ええ、かまわな「お待ちください」
ベリラが承諾する直前にメイド達が割って入る。
「ハンデはわれわれも問題ないと考えますが、それはそれとしてマルシェラ姫様の貴血への覚醒段階が低い事は自己の責任と判断します」
「故にハンデは参加する家臣の人数とマルシェラ姫が次の覚醒をする前の猶予期間を設けるという形でどうでしょうか?」
「あら、よいですわね! 貴女も覚醒すれば対等ですわ! できれば、ですが!!」
「むぅっ」
痛いところを突かれた。姉の方はともかく、メイド達は侮れないな。
「という訳で決闘は成立ですわ! 正式な日取りは後日おって伝えますで覚悟していらっしゃい!!」
痛い事を言い終えるとベリラは去って行った。
◆
「嵐のような姉じゃったのぅ……」
「それで戦うの?」
「戦わねばならんじゃろなぁ」
それについては以前にそういうものだからと説明を受けたから仕方ない。
問題は……
「貴血への覚醒じゃな」
カグランタ王子との戦いで貴血への覚醒段階の差は相当な不利になると分かった。
だが俺の場合、その覚醒がネックとなっていた。
「まさか特殊進化をすると同系統の魔王核でないと進化出来ない制限が付くとは盲点だったのじゃ」
カグランタ王子の最期の言葉が気になった俺はヴィロゥにあれはどういう意味だったのかと尋ねた。すると……
「ああ、君はアースドラゴンの魔王核で貴血覚醒しただろう。これがちょっと問題でね。強力なモンスターの魔石で覚醒するとその分強くなるんだが、この強力が仇となって更なる覚醒をする為にはより強い同種のモンスターの魔石が必要になるんだよ」
「より強いドラゴンの魔石じゃと!?」
アースドラゴンでもレイドを組んで戦う必要があった。
あれ以上のドラゴンと戦えっていうのか。
「今の強くなったわらわ達ならいけるか?」
「と、思うだろう? でもね。ドラゴンの巣は到達が困難な場所になばかりあるんだ。アースドラゴンの時は偶然鉱山と繋がったから分かっただけで、そうでなかったら今頃誰にも見つからなかっただろうね」
偶然……というよりは魔王核関連のイベントなんだろうなぁ。
ゲーム的に考えると他のプレイヤーでも魔王核を手に入れればレア職業になれるって流れだと思うんだ。
俺の場合は生まれが関係する個別イベントで大事になってるけど。
「ちなみに魔王核以外で覚醒するにはどうすればいいのじゃ?」
「特定の儀式を行う、特定の魔石を規定数集めるなどあるね」
「意外に種類があるんじゃな」
「ようは魔族の血が覚醒するきっかけなら何でもいいんだよ」
余談だが数か月、ゲーム内スイーツを100種制覇したプレイヤーが覚醒するというビックリニュースが流れる事になったりする。
「という訳で君が進化するならどこかにいるドラゴンを発見し、その魔王核を手に入れる必要がある!!」
というやり取りがあったわけだ。
「冒険者ギルドを通じてドラゴン捜索依頼を出しておるが、今のところ報告がないのう」
「姫様だけではありませんよ。決闘に参加する者達も覚醒する必要があります」
と、そこにガメッツがやってくる。
「第4王女殿下が来た事は既に聞き及んでおります。そして決闘に関する噂がすでに流れています。恐らくは姫様が逃げられない様にでしょう」
キャラ的に絶対メイドの提案だろうなぁ。
「第4王女殿下ですが、我々の集めた情報によれば家臣にも覚醒している者が多く、傍に侍るメイド達も覚醒済みとの事です」
「って事は俺達も覚醒しないと戦いにならねぇな」
「わ、私も頑張るよ!!」
「覚醒に関する情報はこちらでも集めております。一度ギルド内で情報を共有するべきでしょうな」
「分かったのじゃ。ドラゴンの情報を集めつつ、皆の覚醒も急ぐのじゃ! レフリスはそれに合わせて装備の開発も頼みたい。必要な素材は領地運営の予算から持っていくのじゃ!」
「任せて!!」
「それならばオークションに参加されるとよろしいかと」
「オークション?」
このゲームそんなものまであるの?
「はい、冒険者が自分の入手した素材やアイテムを少しでも高く売る為のものですが、貴重な品でも自分には使えないからとレアな品が流れてくる事もあります。中には困窮した貴族が先祖伝来の品を手放す事もありますので、掘り出しものが手に入る可能性も高いですよ」
成程、プレイヤーが売る品以外にもランダムでレアアイテムが出品される可能性があるのか。
賭けだけど他のプレイヤーの先を越すチャンスって訳だな。
「よし、あからさまに強そうな武器はパスして素材系を最優先で落札するのじゃ!」
「武器系は攻略組のプレイヤーが狙ってるだろうからなぁ」
こうして俺達はドラゴンの情報、上級職にクラスチェンジする為の条件探しと攻略、そしてオークションの三つの作業を同時に進めるのだった。
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