第35話 新装備、完成……?
「マルスくんちゃん! 新装備出来たよ!!」
サバンナでの戦いから数日後、レフリスが装備を抱えて飛び込んできた。
アイテムボックスあるんだしわざわざ重いもん持ってくる必要なくない? とは思ったが野暮なことは言わないでおいた。
「ほほう、今度の装備は大きいのう」
「うん! のじゃロリ王国領は大型のモンスターが多いからね。大きな敵とやりやすいように大型の武器にしたよ! あとちっちゃい子が大きな武器や防具を装備して戦うのってすごくいいよね!」
まぁその意見には全面的に同意する。
「いやまて、なんじゃそのくんちゃん王国領とは?」
「家臣達の愛称だよ! ギルド名がのじゃロリ王国だし」
「思いっきり国家分裂を企んでいそうな愛称は止めろ! 反逆を疑われるわ!!」
味方のフリをした離間工作かよ!!
愛称についてはギルド内の情報網で一度しっかり話し合った方が良いな。
「という訳でさっそく装備してみてよ!」
「何がという訳なんじゃ……」
なんかもういきなり疲れてしまった。
ともあれフリスに急かされ渡された新装備を身に付けてゆく。
『さ迷える犀角の祭刃:攻撃力80:非常に頑丈で大きく特に刺突攻撃をした際に効果を発揮する。刺突ダメージ上昇。装備時スキル『ホーンバスター』が使用可能になる』
「ほう、刺突ダメージが上がるとは面白いのう。それに専用スキルがついておるのか」
流石は新エリアの装備だな。色々効果が付いている。
『ホーンバスター:攻撃スキル:強力な突進刺突攻撃を行う。突進時の速度3倍、吹き飛ばし効果、突進時は一定時間無敵となる。クールタイム40秒』
おお、こりゃ強そうなスキルだ。
クールタイムが大きいがMP消費が無いし何より無敵効果が緊急回避に使えるのが嬉しい。
「防具はマルスくんちゃんのオーダー通り変装用に大きなパーツで顔を隠しやすくしておいたよ! 勿論髪型も変えようね!」
髪型は関係なくね?
『さ迷える犀革の大髪帯:クオリティ8:防御力25:蒸れ防止とデザイン性の両立した革製の大きなリボン。デバフ攻撃に対する耐性を有する。大きなリボンの幼女はとても可愛い』
『さ迷える犀革の大肩鎧:クオリティ8:防御力120:さ迷えるサバンナの主の革を使って作られたシンプルに頑丈な鎧。大きな一枚革をぜいたくに使った肩鎧は盾としても機能する。デバフ攻撃に対する耐性を有する。大きなパーツを装備した幼女はとても可愛い』
『さ迷える犀革の大ブーツ:クオリティ8:防御力40:まるでデフォルメキャラのように足が大きく可愛らしく見えるブーツ。通常移動速度がやや落ちるが、走ると移動速度が通常よりも早くなる。デバフ攻撃に対する耐性を有する。大きなパーツを装備した幼女はとても可愛い』
「……まぁ、うむ、強いな」
強いは強いんだが、なんか文章がいちいち気になる。
これはレフリスが自分で書いているのか? それとも運営の仕込みなのか?
どっちにしても地獄だな。
『装備コンボボーナスが発生しました。さ迷える犀革シリーズを装備時、デバフ耐性が大幅に上昇』
「おお、装備ボーナスも付くのか。これはデバフ攻撃をしてくる敵相手には心強いのう」
ゲームが進むと面倒なデバフが通常攻撃に混ぜてくる敵がいるもんなぁ。
「今回も良い装備なのじゃ!」
「うふふ、気に入ってくれてよかったよ。私としてはイマイチな所があるから手放して喜べないんだけどね」
褒めたにもかかわらずレフリスは不満そうだ。
「何が気に入らんのじゃ? 見た目も悪くないと思うのじゃが」
「デザインはね。でも色がちょっと」
あー、確かに灰色は女の子の装備としては地味と言えるか。
「じゃがサイはそういう色じゃし仕方ないのではないか?」
「ううん、染料さえあればもっと良い色に出来るんだよ」
「染料?」
「特定の草を煮込んだ液体や鉱石を砕いた粉末液に布を漬け込んで色を付けるんだよ。このエリアから解放された生産要素なんだ」
「ふむ、その為の染料が欲しいと?」
「出来ればこの装備に合った色の染料が欲しいんだけど、そういう色に限って貴重で高いんだよ」
「わらわの装備じゃし予算こっち持ちで市場で買い集めてよいぞ?」
「市場に流れている数が少ないから自分で集めるしかないんだよぅ」
「となると後は冒険者ギルドに依頼するかじゃな」
「そっちも他の生産職が募集かけてるから早く受けて貰うには報酬が割高になっちゃう」
あっちを立てればこちらが立たず、は意味が違うか。
「そうなるとわらわ達で素材集めに行くのが手っ取り早いのじゃな。モヒカン達の装備も用意してあるのじゃろう? 装備の試運転も兼ねて皆で借りに行くのじゃ!」
「うん!」
◆
「という訳で全員新装備になった訳じゃが……」
俺はチラリと横を歩くモヒカンを見る。
そこにはあちこちに針や鋲が固定された革鎧を着ている世紀末感マシマシな不審syの姿があった。
「ハッハーッ! ご機嫌な装備だぜ!」
口に革製のマスクを着けて不審者感倍増しだが不思議と声がくぐもったりはしていない。
「のうレフリス、これは一体どういう事じゃ?」
「モヒカンさんにせっかく良い素材だからこういうのを頼むってデザイン画を渡されたんだよぅ。私のセンスじゃないよぅ」
モヒカン、お前デザイン画まで!?
「ちなみにクオリティは8だから貴族の依頼も受けられるよ。何でか分かんないけど」
作った人間にも分かんねぇのかよ。
「デザインって何かな?」
「デザイナーが己を見失うでない……」
「皆もっと周囲に気を配れ。ここは新エリアなのだぞ」
そんな中、ヒメキだけは真面目に皆を叱咤する。
ちなみにヒメキの装備は騎士鎧風の革鎧だ。
「普通の皮だと金属鎧みたいな形状には向かないっていうかできないんだけど、マルスくんちゃんのレア素材を加工したら鉄みたいに硬くなったから出来たんだよね」
流石ファンタジーゲーム素材。物理法則を無視してるぜ。
「ふふ、これでますます姫の騎士に相応しくなりましたね!」
ヒメキがご機嫌なのは装備を新調したからだけじゃなかった。
それというのも王都を発つ前、ヒメキに対して正式な騎士叙任式を行ったからだ。
カグランタ王子との決闘でヒメキの事を騎士もどき揶揄された俺は、バットンに正式な騎士の任命方法を教えて貰ったのだ。
そしてギルドメンバーと使い魔の小鳥を通して観ていたヴィロゥを証人としてヒメキは正式に俺の騎士になったのである。
「まさか騎士任命式がクラスチェンジの為の儀式だったとは!!」
そう、ヒメキがご機嫌だった真の理由は叙任式を行った事で、ヒメキがクラスチェンジした事にあった。
そのクラスとは『魔騎士』
なんでも武器や防具に魔力を流して戦う自バフをさらに強化出来る魔法騎士らしい。
「今日の戦いでは生まれ変わった私の力を姫に披露いたします!!」
「う、うむ。頼りにしておるぞ」
絶妙にフラグバリバリなセリフを言いつつ、剣を振り回すヒメキ。
そこはかとなく不安を感じるんだが、上級職に転職できたのは間違いなく良い事なのでそっとしておこう。
「おっと、早速敵さんがやって来たぜ」
モヒカンの言う通り、前方からハイエナ型のモンスターの群れがやってくる。
「アンダーハンドハイエナの群れですね」
「7体、数の上では負けておるな」
「まぁ倒せないほどじゃないだろ。新装備の実験台になってもらおうぜ」
「うむ、では行くぞ!!」
「「「おうっ!!」」」
「行くぜラディアルメーザー!!」
モヒカンが魔法を発動させると手に持った杖の先に光が宿り、右側の敵の更に外側に当たる。つまり外れた。
「は?」
「これからだぜ!!」
モヒカンが咆えると光がピカッと輝くバシュウと音を鳴らしながら左へ円弧を描いて動いた。
これロボットアニメに出てくる薙ぎ払いビーム描写だ!!
「ハッハーッ!! モンスターは消毒だぁー!!」
それもう炎じゃなくてレーザーじゃないか?
「あれもうレーザーじゃないですか?」
「ああ、炎ではなくビームだな」
「……火属性だもん」
いい歳したモヒカンがだもんとか言うなよ。
「炎かどうかは別として威力と範囲は中々のものじゃな」
現にモヒカンのレーザーを喰らったアンダーハンドハイエナ達は全身が燃え盛りながら苦しみの声を上げている……グロいな。
「あの苦しみよう、もしかして肺に焼けた空気が入り込んで中が火傷してるんじゃないかなアレ」
「いくら運営でもそこまで再現するか? いや運営なら再現するか?」
否定できなくて怖い。
「それよりもお前達も攻撃しろよ!!」
「「「あっ、ごめん」」」
いっけね、あまりの惨状につい戦うこと忘れてたわ。
「ゆくぞ! ホーンバスターッ!!」
巨大な剣を前に突き出すと俺の体が自動的に前に向かって猛スピードでかっ飛んでゆく。
「おおおおっ!? 自動なのかこのスキル!?」
「「「「ギャウゥゥゥゥン!!」」」」
猛烈な勢いの突進を喰らってボーリングのピンよろしく吹き飛ぶアンダーハンドハイエナ達。
「残りは私が! シールドラッシュ!!」
ヒメキは大きな盾を構えるとその姿勢のまま突撃してアンダーハンドハイエナ達を吹き飛ばしてゆく。
「ヒメキの盾もわらわの剣と同じ効果があるのか」
「うん、ヒメキさんの彷徨える犀大盾は無敵効果が無い代わりに防御している状態を維持したまま突撃攻撃が出来るんだよ」
へぇ、盾職としてはかなり便利なスキルだな。
そうして俺達はアンダーハンドハイエナを順調に討伐する事に成功した。
「装備と人数を揃えればそれほど恐ろしい敵ではないのじゃ」
そう考えると昨日はかなり危ない事してたんだなぁ。
あのサイ本当にキツかったもんなぁ。
その後も暫くサバンナを歩き回り俺達は目的の染料をドロップするモンスターを探す。
「あっ、水場だよ! この辺りにでるらしいよ!」
「サバンナの水場に出るモンスターか。サイはもう出たからのう。他に水場に出る動物と言うと……」
「ヴゥーッ! ヴゥヴゥヴゥヴゥ」
その時だったら、水場の奥から何かが鳴き声と共に浮上してくる。
「なんじゃ!?」
「ヴゥォゥォゥォゥォゥォゥォゥ!!」
「ピンク色の……カバァ!?」
そう、水場から現れたのは巨大なピンク色のカバだったのである。
「いた! ピンクブラッドヒポポタマスだよ!!」
「ピンク!? ブラッド!? 本当にアレが目的のモンスターなのか!?」
「うん! かなり強いから気を付けてね!!」
強いのアレ!?
「ヴゥォゥォゥォゥォゥォゥォゥ!!」
巨大なピンクのカバは大きな口を開けながら雄たけびを上げると、まるで船のように水を切り飛ばしながら突進してきた。
うぉぉーっ!! 問答無用かよ!!
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