第34話 領地内探検
ふと思ったんだが、第三王子の領地を受け取る意味なかったよな。
だってマルシェラの引継ぎが完了したら俺は新キャラの作成をするわけだし、わざわざ発展済みの領地を貰うんじゃなくて一から開発する領地を貰った方が新キャラで領地経営する際に経験が詰めて良かったのでは?
「しまった、イベントバトルに巻き込まれた所為で断り損ねたのじゃ」
くぅ、仕方がない。こうなったら予算のあるうちに好き勝手して情報を集めてやる!
どうせ捨てるデータなら金を使いまくって実験だ!
「となると開発じゃな。カグランタ王子の領地は軍備に比べると開発率が低い。重税で潤っていたくせに開発を疎かにしたら結局税収は頭打ちだろうに」
と言う訳で領地開発に予算を割り振る。
「領地開発をするなら護衛も必要だット。開拓村が完成するまで常時防衛力が裂かれることになるット」
なるほど、この世界には魔物が居るもんな。そりゃ護衛も必要か。
「騎士団から必要な人員の半分を、のこり半分は冒険者に依頼を出して雇うのじゃ」
「拘束期間が長くなるから冒険者は嫌がると思うット」
あー長期イベント扱いになるのか。そうなると報酬が高くても他の冒険が出来なくて参加者が来ないかもだなぁ。
「そうじゃ! 開拓依頼を全うした冒険者には開拓した村の家を一軒と畑を相場の半額で与えるのじゃ!」
ガメッツが領都の不動産を買い占めていたし、田舎でスローライフをしたいプレイヤーが来てくれるかもしれない。
リアルだと田舎暮らしは虫とか利便性とか人間関係とかで相当キツイときくけど、ゲーム内ならその辺りはあまり心配いらないだろう。
「それに全てのプレイヤーがバトルや冒険を求める訳ではないからのう。そうじゃ、常に村の護衛に二人ずつ待機していれば残りのパーティメンバーは別の依頼を受けても良い事にするか。パーティを組んでおるプレイヤーも全員がスローライフをしたいわけではないじゃろうからなが」
半額なのはタダにするとこれ幸いとガメッツのような連中がくる可能性があったからだ。
あと家を作るのはNPCの大工なので彼等の報酬として必要だろう。
と言う訳で冒険者に開拓依頼を出してみたら、びっくりするくらい応募があった。
「さすがに多すぎじゃ! 開拓を複数同時に進めても多すぎる! 抽選で数を絞るのじゃ!!」
迂闊だった。まさかこんなに大量に参加者がくるなんて。
あとで血の涙を流すガメッツから聞いたのだが、毎日メンバー二人が拘束されていたとしても半額で家と畑が手に入るのは破格の条件だと涙ながらに説明された。
「土地代、建築費、材料費、そして居住許可と安い土地でも結構な額がかかるのです! 今回はそれを半額にして更に居住許可をタダにしたので実質半額以下なのです!!」
そっか、居住許可にも金が要るんだった。
王都の屋敷の時はギルドの皆が頑張ってくれたからどうにも実感が薄いみたいだ。
「お願いですから次からはわたくしに相談してください! 絶対に損はさせませんから!!」
と涙以外からも血を吹き出しかねない勢いでお願いされてしまった。
そんなに儲けを不意にしたのが悔しかったのか……っていうかこのゲーム、あんなエフェクトあったんだな。
なおこの事件はのじゃロリ姫の不動産血涙事件と呼ばれ、依頼を受ける事が出来た十数パーティは一生分の幸運を使い切ったとまで言われることになった。
ついでに、これ以降開拓依頼を受けた際のボーナスが大幅に切り詰められることになったので、経営の仕切りを担当する事になったガメッツは血涙の守銭奴と呼ばれ蛇蝎のごとく嫌われる事になるのだった。
◆
なんてことがありつつ、俺は領地経営を家臣に任せて冒険者ギルドにやって来た。
「実験政策は結果が出るまで時間がかかるからの。その間に討伐依頼でも受けるのじゃ」
この辺りの魔物とはまだ戦ってないからどのくらいの強さか知っておきたいしな。
冒険者ギルドにやってくると、大量の冒険者達でごった返していた。
「やっと新しいエリアまで来たな! さっそく依頼を受けようぜ!」
「やっぱ討伐依頼か?」
「当然!!」
王都からやってきたらしいプレイヤー達が早速依頼ボードに向かっていく。
「さて、わらわは何を受けようかの」
今日はレフリス達が居ないから領都付近の軽い依頼を受けたいところだ。
手ごろな依頼を見つけ、受付に持っていく。すると……
「領主様!? そんな領主様にこのような危険な雑用をさせるわけにはまいりません!!」
まさかのお断りをされてしまった……マジか。
「なんという事じゃ。よもや自分の領地で依頼を受けられないとは……」
いやよく考えたら突然領主がバイトならぬ冒険者募集にやってきたら普通にビビるか。
「むぅ、仕方ない、これは変装の出番じゃな」
以前のように見習い上級騎士装備に装備変更しようとした俺だったが、ふとこれで大丈夫なのかと考える。
「ゲームを初めてそれなりに時間が経っておるし、そろそろこの装備ではキツいか? 一旦この町の店で装備の性能を確認した方が良いか」
そうと決めたら一旦見習い騎士装備に着替えて店を探すことにする。
◆
「おおー、やはり見習い上級騎士装備よりも堅いんじゃな」
第三王子の町の装備は鉱山街とくらべるとかなり売り物の性能が違う。
「これも第三王子の領地に一足飛びに都市レベルが上がった弊害かのう」
まぁ強い装備になる分には良いんだが。
「ではさっそく性能の良い装備を買い揃えるのじゃ!!」
「まいどあり!!」
が、ここで問題が発生する。
『装備のクオリティが足りません』
「しまったぁぁぁぁぁっ!!」
ぐわーっ! 久しぶりに個性デバフの高クオリティ装備以外装備不可にひっかかったーっ!!
「ついうっかり忘れていたのじゃ。うう、無駄金を使ってしまったのじゃ」
気を取り直して高クオリティ装備を探すが……
「相変わらず性能が低いっ!!」
悲しいかな、やはり店売りの装備ではクオリティと性能が一致しなかった。
「こうなったら最後の手段!!」
俺は見習い騎士装備のまま町の外に出ると、同じように外に出てきたプレイヤー達を追いかけて狩り場らしきフィールドやってくる。
そして町の衛兵達の眼が届かなくなったところでロイヤル装備に切り替える。
「依頼は後日レフリスに装備を新調してもらってから受けるとして、今回は敵の強さをチェックじゃ!!」
周囲を見回すと、そこかしこにモンスターが見える。
サバンナのような背の低い草がまばらに生い茂る土地はライオンやハイエナのようなモンスターが闊歩している。
ただそういったモンスターは群れで活動していてソロで戦うにはちょっと面倒そうだ。
「ソロのモンスターはおらんかのう」
近くにいるモンスターを探して回ると、ちょうど一体だけでいるモンスターを発見する。
「よし、アイツにするのじゃ!!」
ソロで彷徨っていたのはサイのモンスターだった。
「おおっ、近くによると結構デカいの。ボスを除けば今までで一番大きいのではないか?」
あんな大きな生き物がこの辺のフィールドモンスターなのか。
それに堅そうな皮膚をしている。生半可な攻撃じゃ通用しそうにないな。
「ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
そんな風に観察していると、向こうも俺を見つけたのか雄たけびを上げて突撃してきた。
「というか意外と早いのじゃ!」
あの頭の角に当たったら一発でどてっぱらに穴が開きそうだ。
初めて戦う敵と言う事もあって俺は余裕をもって回避する。
「まずはノックバックを喰らわせてから安全に攻撃するのじゃ! ウォーターバック!!」
が、広がる波を喰らったサイのモンスターは止まらなかった。
「なんでじゃ!?」
「ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
「うぉぉぉぉっ!!」
ギリギリで突進を回避する。
あ、危なかった。これがリアルだったらとても回避できない速さと迫力だったぞ。
「何でノックバックが効かんのじゃ!?」
「あれはランナウェイライノスだット。あのモンスターが突進中は魔法に対する強い耐性を発揮するんだット」
「無敵技ということか!?」
まさか格闘ゲームみたいな無敵時間がある攻撃をモンスターが使ってくるとは。
「じゃが突進が終わった後なら効くということじゃな!! ウォーターバック!!」
「ピキィ!?」
突進を終えて動きが遅くなったとこにノックバック魔法をかけると今度こそのけぞるランナウェイライノス。
「今じゃロイヤルスラッシュ!!」
連続で大ダメージを受け、ランナウェイライノスが倒れ……ない!?
「ロイヤルスラッシュに耐えたじゃと!?」
おいおいダメージ10倍になるスキルなんだぞ!?
「ランナウェイライノスは皮膚が鎧のように硬いット。姫様の武器は攻撃力が低くリーチの短い二刀流短剣だからダメージが通りにくいんだット! 分厚い皮の奥の肉まで届かせにくいんだット」
「装備の相性が悪いという事か!!」
まさかリーチまで影響してるとはな。
確かに刃物の攻撃って根元までブッ刺して切る訳じゃないから実際に刃が当たってる範囲は狭い訳か。
「ならばもっと接近して深く切るのじゃ!! ロイヤルピアース!!」
「ブゥゥゥゥゥゥゥッ!!」
が、それはそれとして巨体が猛烈な勢いで突進してくるのは怖いっ!!
「大きく避けては接近が間に合わんのじゃ!!」
つくづく短剣と相性が悪いなコイツ!!
ロイヤルピアースだとスキル効果で装甲を貫けるけどロイヤルスラッシュに比べてダメージが少ない。
「ならばスリープエッジ!!」
路線変更、睡眠デバフで眠らせてから倒す!!
『MISS』
『MISS』
『MISS』
『睡眠状態』
「よしっ!!」
なかなかデバフが発動しなかったが、ようやく睡眠状態に持ち込めたぜ!
「チャージアップ! ロイヤルスラッシュ!!」
「プキィッ!!」
「まだ倒せんのかっ!!」
なおも暴れるランナウェイライノスに対し、おれはスリープエッジの睡眠デバフからのバフかけロイヤルスラッシュ連打を繰り返しなんとか討伐に成功したのだった。
『勝利』
『経験値6000』
『ランナウェイライノスの角を手に入れた。ランナウェイライノスの骨を手にいれた。ランナウェイライノスの皮を手に入れた。ランナウェイライノスの魔石を手に入れた』
経験値と素材をゲットし、ようやく一息ついた俺だったが……
「なんだったんじゃコイツのHPの多さは! おかげでMPポーションを無駄に使わされたのじゃ!! どう考えても大損なのじゃ!!」
経験値は結構貰えたけど、コストを考えると銀のマールビットと戦った方が良いよなぁ。
いやあっちはあっちで必ず会えるわけじゃないけど。
「はー、これで買取価格が安かったらやってられんのじゃ」
流石に魔物一匹にこれだけ苦戦させられた以上、装備を整えずに戦闘を続けるのは自殺行為だ。
「せっかくじゃからレフリスにこの素材を渡して新しい装備を作ってもらうのじゃ!!」
◆ILL攻略チャット◆
通りすがりのケモマン「聞いたか? のじゃロリ姫の領地内を彷徨ってた野良ボスが倒されたって」
通りすがりのようSEY「ああ、のじゃロリ姫が倒したらしいぜ」
通りすがりのウロコ「マジかよ! あれ倒せるの!? 俺達ボッコボコにされたんだけど!?」
通りすがりのようSEY「あの無敵突撃がヤバイんだよな。なんかデバフ攻撃で行動を封じてから大火力で何発も殴って倒したらしいぜ」
通りすがりのケモマン「あーのじゃロリ姫バ火力だもんな……つーかあの野良ボスデバフ効くんだ。ウチのデバッファーが全然効果なくて二重の意味で死んでたぜ」
通りすがりのウロコ「デバフ耐性が高いが全く効かない訳じゃないってことか。やっぱ重要NPCは強いな。いやもしかしてのじゃロリ姫が野良ボスを倒したのは何かのイベントの演出か?」
通りすがりのようSEY「ありえるな。最近領主名義で開拓村の護衛クエストが出たし、こりゃ近いうちに領内のモンスターを討伐する大規模イベントとかがくるのもかもしれん」
通りすがりのケモマン「あー、そういやNPCが第三王子が全然モンスターを討伐してくれないから領内が荒れてるって言ってたわ。それ関係かな」
通りすがりのウロコ「おっしゃ、イベント始まる前にレベル上げと装備を整えるぜ!!」
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