第32話 王位継承権、第三位
「勝者マルシェラ姫!!」
突然始まった第三王子カグランタとの決闘だったが、最後の最後に習得したロイヤルスキルのお陰でなんとか勝利する事が出来た。
「見事であるマルシェラよ!」
壇上の玉座から魔王が俺を褒め讃えると、壁際に退避していた貴族達から喝采が上がる。
「流石はマルシェラ姫!」
「お見事!」
「まさか貴血の目覚めで劣っているにも関わらず勝利するとは、まさに大番狂わせだ!」
「いや、マルシェラ姫は助太刀を許可されていた。その事を考えると有利だったのはマルシェラ姫の方だろう」
「それはどうかな。確かに助太刀は許可されていたが終始押されていたのはマルシェラ姫の方だ」
「その通り、それにマルシェラ姫以外は誰一人力を覚醒させていないのだぞ。道具に頼りこそしたがあれも普通に手に入る様な品ばかりだ。寧ろ第二段階の貴血に覚醒してなおポーションに頼ったカグランタ王子の方こそ不甲斐ないというべきだろうな」
「ぐぐぐ……」
どうやら口論で負けているのはカグランタ王子派閥の貴族らしい。
「はいはい、そこまで。陛下のお言葉を賜るよ。カグランタ王子も起きた起きた!」
「ガハッ! ゲホッゲホッ」
ヴィロゥが背中をドンと押すとカグランタ王子が目を覚ます。
「おお、生きていたのじゃ!?」
「陛下の御前を敗者の命で汚す訳にはいかないからね」
血は流れてるんだけどなぁ。
「これより王前決闘の沙汰を降す。カグランタの王位継承権第三位を没収し、勝者であるマルシェラに王位継承権を授ける」
「そんな!!」
「ええ!? そういうシステムじゃったのか!?」
「魔族の王継承権は人族と違って力で手に入れるものだからね。上位の権利持ちと決闘をして勝てばより上位の王位継承権が手に入る。そして魔王陛下が退位を宣言した時に継承権第一位を持つものが次の魔王という訳さ」
なんという脳筋システム。
「それでいいのか魔族は」
「そうはいっても獣族や鱗族もそうだよ。弱い王じゃ敵が攻めて来た時に勝てないからね」
まぁ戦乱の世ならそうだけどさ。
それはそれとして戦いでしか力を発揮できない王は怖いなぁ。
「それが嫌なら、君が王になって平和な国を作れば良いのさ」
「それは……」
別に王になる気は無いんだが。
「人の上に立つ覚悟が無い者が王への道に文句を言っても無責任なだけだ。特に君は王への道が開かれているんだからね。理想があるなら他人任せにしちゃ駄目だよ」
なんか説教されてしまった。
王族としてしっかりしろって事かぁ。
「そうそう、気をつけてね。上を目指して決闘できるって事は君の下が挑んでくるって事だから」
「聞いてないんじゃけど!?」
ってよく考えればそりゃそうだよね!
「勝てばいいのさ。決闘に負けると暫くの間同じ相手に挑めなくなるから、平穏を維持したいなら君自身が強くなることだ」
結局力が大事なのか。まぁバトルするゲームだし仕方ないと言えば仕方ない。
「もうよいかヴィロゥよ?」
「おっとこれは失礼しました魔王陛下。マルシェラ姫に必要な事は伝えました故、続きをどうぞ」
「うむ」
この魔王わざわざ待っててくれたのか。以外に律儀だなぁ。
「さて、マルシェラには調印式を無事に終え調印書を持ち帰ったら褒美をやると言ったな?」
「はい。使節団の代表、調印書を」
「はっ」
後ろの控えていた使節団の代表が書簡をもって前に出ると、玉座の傍に控えていた文官が受け取って魔王の下へと運んで行く。
「……うむ、無事受け取った。それでは反対派の妨害をくぐり抜け無事国交を禍福させたマルシェラに褒美を授ける」
魔王の厳かな声に謁見の間が静まり返る。
「マルシェラには第三王子カグランタの領地を授ける」
「「「「ええっ!?」」」」
これには俺だけでなくこの場にいた貴族達、そして当のカグランタ王子までもがどよめきを上げた。
「父上、幾ら決闘に負けたとはいえ、それはあんまりです!」
「馬鹿者っっっっっ!!」
魔王の一喝で謁見の間の空気が振動し、その場にいた全員が金縛りにあったかのように動けなくなる。
こ、これも魔王の力なのか!?
「決闘は関係ない! お前は我等魔族が外界に出る機会を奪おうとしたのだ! それによってどれだけ他種族に後れを取るかを考えもせずに! 目先の利益に目が眩んだ報いだと思え! 粛清されないだけ慈悲と思うが良い!!」
確かに、魔王の意向を無視して自分の野望を優先したんだ。国家反逆罪に問われても文句は言えないよな。
「それに陰謀を企んでおきながらこうもあっさりとバレ、あまつさえ決闘に負けるとは何事か! 陰謀を企むのなら成功させんか!!」
「そういう問題!?」
「そもそも、国交が開かれたら戦えなくなるという考えが浅はか過ぎる! 戦いなど国交が回復してからでも行える!!」
それはあかんだろーーーーーっ!!
「はっ!? 確かに!!」
確かにじゃねぇ!! 駄目だこの王族……
「故に罰としてカグランタの領地は没収しマルシェラに与えるものとする。本来はもっと別の領地を授けるつもりだったが、大きくなる分には問題あるまい」
いや、敵対派閥の領地とか怖いんですけど。
うーん、これもしかして決闘に負けたら本来のイベント報酬の領地が貰えて、犯人を暴いてバトルに勝ったら良い領地が貰えるっていうボーナスバトルだったのか!?
「そして第三王子の母方のニカグラン伯爵家は同様の理由で国家反逆罪が適用される。だが国交回復が成った祝いの日に影を落とす事は好ましくない。故に恩赦を与えるものとする。ニカグラン伯爵家は爵位を子爵に落とし現当主一族を幽閉。分家を当主とする事。新たな当主は一族で話し合って決めるが良い。だがカグランタおよび現当主の意向を受け継いだと判断した場合は一族郎党全ての貴族位を剥奪して平民とする。また10代にわたって王家と接触する事を禁じる!」
どよめきが二分される。
厳しいという意見と甘いという意見だ。
「派閥貴族はマルシェラに忠義を捧げるは爵位を維持する。ただしその場合はニカグラン子爵家同様現当主一族の追放、分家からの当主選別を義務とする。他の王位継承権派閥に移動する場合は同様の措置を取りかつ爵位を下げるものとする! よく考えて決めるが良い! 以上である!」
『カグランタ王子の領地を授かりました』
『カグランタ王子の派閥貴族7家が支配下に入りました』
『10000000モールのお小遣いをもらいました』
『経験値5000』
おおー、領地が……っていっせんまん!?
なんかすんごい金額が入ったんですけど!?
思わず魔王を見るとパチンとウインクを寄こしてくる。
こ、この魔王親バカ過ぎない!?
「おめでとうマルシェラ姫。そうそう、お小遣いはありがたく貰っておくと言い。領地開発はお金がかかるからね」
とヴィロゥが俺の耳元でこっそり囁く。
成程、領地開発の初期資金って訳か。ビックリした。
式典が終わると、カグランタ王子、そして彼に似た老人が騎士に連行されてゆく。
もしかしてアレがニカグラン伯爵か?
と、そこでカグランタ王子と視線が合った事で彼がこちらを睨んでくる。
「美味くやったものだなマルシェラ。だがお前の幸運もここまでだ!」
「カグランタ王子、私語は慎んで頂きたい」
騎士に注意されるも怒りに濁った眼のカグランタは言葉を止めない。
「お前はもう貴血に目覚める事は出来ない! ドラゴンの魔王核を選んだお前にはなっ!!」
「ドラゴンの? それはどういう意味じゃ?」
「ははっ! 自分で調べるがいい! そして知って絶望するがいいさ!」
カグランタ王子はそれ以上答える事は無く、そのまま騎士に連行されていった。
ドラゴンの魔王核がこれ以上貴血に目覚める事はできない? そりゃどういうことだ?
俺はヴィロゥに理由を聞こうとするも、彼女はあからさまに顔を背けてフッと姿を消してしまった。
「答える気はないという事か。バットンは何か知っておるか?」
「僕にもよくわからないット」
バットンも知らないって事は何かしらの専門知識に関わる事か。調べておかなく必要がありそうだな。
「知識と言えば確か図書室があった筈。後で調べに行くのじゃ」
こうして、色々なトラブルがあったものの、俺達は国交回復イベントを成功させたのだった。
◆
「さて、領地を貰ったのは良いが、この屋敷はどうしようかのう?」
折角建てたのにもう引き払うのももったいないよなぁ。
「別にこのままでいいんじゃないの? マルスくんちゃん王国王都支部って感じで」
「その名前だと独立国家みたいでいやなんじゃが」
「俺もそれでいいと思うぜ。王都でイベントを進行中のギルドメンバーもいるだろうし、新しい領地次第じゃここを本拠地にする連中もいると思うぜ」
成程、確かに新しい領地がどんな場所か分からないもんな。
「それに領地を持つ貴族は王都で行われる式典などに参加する為に屋敷をもっているものです。この屋敷も王都出張用の別荘と考えればよいでしょう」
「ほう、わらわは王都から碌に出たことが無かったから知らなんだがそうなんじゃな」
ヒメキは貴族の知識が豊富なんだな。やっぱりくっ、されるためにそういう知識本を読み漁っているんだろうか?
「では自室だけ鍵をかけてあとはギルドメンバーの為に解放しておくとするか」
が、この選択が後の呼び声の彫像観光地化事件に繋がるとは、この時の俺はまだ気づいてないのだった……
使ってない時は閉鎖すりゃよかった……
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