第31話 決闘、第三王子!!
「それでは王前決闘開始!!」
ヴィロゥの宣言と共に第三王子カグランタとの戦いが始まった。
「数で押すぞ! 全員出し惜しみ無しだ!」
「承知した! 私が引きつける! ガードタウント!!」
ヒメキが発動させたスキルは通常の挑発効果に加え防御力アップ効果を持つスキルだ。
「正規の騎士でもない騎士もどきが!!」
さっそくカグランタ王子が引きつけられてヒメキに攻撃を行う。
「ぬぅっ! 騎士とは役職ではない! 心の在り方だ!」
何か良い感じのセリフを言ってるがそっかー、正式に騎士に任命しないと騎士扱いされないんだな。
なんか騎士任命手順とかあるってことか。
後でヴィロゥに教えてもらおう。
「ヒメキよ! この戦いに勝った暁には正式にわらわの騎士に任命しようぞ!」
「ありがたき幸せ!」
「いいぞ! メーザーフレイム!!」
「ぐぉぉっ!!」
カグランタ王子がヒメキに意識を取られている隙にモヒカンが最大火力を叩き込む。
「平民ごときが!!」
ダメージが大きかったのか、カグランタ王子のヘイトがモヒカンに移りターゲットが替わる。
「うおおーっ! ソードバーン!!」
ドゴンという派手な音と共にカグランタ王子の体が揺れ、モヒカンへの攻撃がズレる。
「助かったぜパンケーキ!」
モヒカンを救ったのはパンケーキングの攻撃だった。
「後衛はもっと下がって!」
「おう!」
「はい!」
試合開始の合図の時に全員が固まっていたのが失敗だったな。
ちゃんとフォーメーションをとってから開始して貰えば良かった。
改めて俺達は前後に分かれてフォーメーションを取り直す。
「マルスくんちゃん、バフ行くよ ミストガード!!」
レフリスが懐から取り出した霧吹きのようなアイテムを俺達に吹きかけると俺達の防御力が上昇する。
「面白いアイテムじゃのう」
「範囲バフだけど乱戦で使うと敵にもバフがかかっちゃうから気を付けて! あと連続して複数のミストを使うと薬効が混ざって逆効果になるから沢山使えないの!」
敵にも効果があったり薬効が混ざったりと、相変わらず変なところでリアルなゲームだ。
でもそのくらい不便にすることで誰でも使えるアイテムと個人専用の魔法との差別化を図っているのかな?
「ゆくぞ兄上! ロイヤルスラッシュ!!」
「っ! 甘いわ! ロイヤルブレイク!!」
俺がロイヤルスラッシュを叩きつけた瞬間相手もロイヤルスキルでカウンターをしてくる。
「ぐあっ!?」
回避しきれず右腕に喰らった途端、俺の腕が痺れて金の兎短剣を落としてしまう。
「これは!?」
「ふはははっ! 腕が痺れて使い物にならないだろう!」
駄目だ、痺れの所為で落した武器を持てない!
「部位ロックか! 回復するまで当たった箇所が使えなくなるスキルだ! 絶対当たるな!!」
「マルスくんちゃん下がって! 回復するから!」
「回復!?」
レフリスに呼ばれて下がろうとするとカグランタ王子が逃してなるかと追撃してくる。
「タウント!」
「メーザーフレイム!」
「ソードバーン!」
が、それを仲間達の攻撃が阻止する。
「ロックキュアだよ!!」
レフリスが腕に薬を振りかけると、腕の痺れが回復する。
「助かったのじゃ、こんなものも作っていたのじゃな」
「スキルの習得条件を解放するために色々作ってたから。でもロック攻撃をする敵を周回する予定は無かったからあんまり数が無いんだ。なるべく当たらないように気を付けてね」
「承知した!」
数に限りがあるがロック対策があるのはありがたい。
俺は金の兎短剣を拐取すると、カグランタ王子の背後に回ってバックアタックを敢行する。
「スリープエッジ!!」
「ぐぉっ!」
背後からの不意打ち、双短剣の二回攻撃で睡眠デバフが発動する。
「よし、今じゃ!!」
「甘いわっ!!」
が、デバフが発動した筈のカグランタ王子の体が輝き、振り向きざまに反撃してくる。
「なんでじゃ!?」
「俺のリカバリボディにそんな小細工は通用せん!」
デバフ対策の回復スキルか!! そんなものまであるのか!
「地味に面倒くさい奴じゃな!」
「兄に対してその言い草は何だ!」
「妹を謀殺しようとした奴に言われとうないわ! ウォーターバック!!」
ダメージよりもノックバック効果を目的に範囲魔法を叩き込む。
「ぐぉっ! 小癪な!」
「アタックミスト!」
「メーザーフレイム!!」
「ソードバーン!」
「はぁっ!!」
レフリスから攻撃力デバフを受けつつノックバックで動けないカグランタ王子に集中攻撃を叩き込む。
「ええい羽虫共がうっとおしい!」
「兄上は人望がないの間違いではないかのう?」
「ほざけ! この程度で調子に乗った事を後悔させてやる! 貴血解放ブラッドフォース!!」
その時だった、突然カグランタ王子の全身が真っ赤な黄色いオーラに包まれる。
そして彼の体の表面が変化し、まるで鎧のような皮膚が形成されてゆく。
「これは!?」
「これこそはブラッドフォース! 魔王核による力の覚醒の第二段階を迎えた者のみが扱える力だ!」
「ブラッドフォース!? 第二段階!?」
貴血の覚醒はただのクラスチェンジじゃないって事なのか!
「この姿になったからには貴様に勝ち目はないぞ!」
「ボスの第二段階って事か!」
モヒカンが軽口を叩くが、口調は警戒の色をにじませている。
「ダブルロイヤルクラッシュ!!」
「なっ!?」
「はっ?」
カグランタ王子の体がブレたと思った直後、バァバァンという重なった音と共にヒメキの盾とパンケーキングの剣が吹き飛ぶ。
「ロック攻撃!? しかも二人同時に!?」
「これこそブラッドフォース時にのみ使えるようになる奥義よ!」
おいおい、ロック攻撃を同時発動とか勘弁してくれよ!
不幸中の幸いだったのは二回攻撃であって範囲攻撃じゃなかった事か。
「次は貴様だマルシェラ! ダブル「メーザーフレイム!!」」
再びカグランタ王子がロック攻撃を放とうとするが、モヒカンの魔法がそれを妨害する。
「はっ! 悠長に自慢なんてしてるから痛い目を見るんだぜ!」
「……痛い目? 一体どんな目を見せたんだ?」
が、カグランタ王子には一切のダメージが感じられない。
「なんだと!?」
「言っただろう、この姿になったからには貴様に勝ち目はないと! 我が魔王核アイアンガーダーの力を目覚めさせたことで、俺の防御力は通常の10倍以上にまで跳ね上がっているのだ!」
「10倍以上!?」
それちょっとインフレし過ぎじゃないですかねーっ!
「もはや生半可な攻撃では俺の体を貫けぬぞ!!」
「なら10倍ダメージならどうじゃ! ロイヤルスラッシュ!!」
が、キィンという音が鳴るばかりでロイヤルスラッシュでもダメージが通らない。
「流石に卑怯過ぎなのじゃーっ!!」
「卑怯なのではない! 強大にして強固なのだ!! ダブルロイヤルクラッシュ!!」
「しまった!!」
あまりの固さに気を取られた隙を突かれ、両手の武器を叩き落されてしまう。
「くぅっ!! ウォーターバック!!」
手が使えないなら魔法を使うしかない!。
「その程度の魔法時間稼ぎにしかならんぞ!」
「時間稼ぎで十分なんだよ! ペネトレートダッシュ!!」
そこにロック状態から回復したパンケーキングがスキルで突貫する。
「だから無駄とぐわぁっ!!」
第二形態になったカグランタ王子がここで初めて苦痛の声を上げる。
「やっぱりだ! こんだけ硬いなら貫通スキルなら通じると思ったぜ!」
成程、防御理を無視する貫通スキルを使う手があったか。
俺はすぐさまステータスを開くと貫通スキルを習得する。
ピアースインパルスLv10:攻撃スキル:消費魔力20:攻撃力は低いが敵の防御力を無視した攻撃が出来る。
『ハイドロピアースの習得条件を満たしました』
ハイドロピアース:攻撃スキル:消費魔力40:水圧の力で圧倒的な貫通力を持った一撃を放つ魔法剣。
おお! 新スキルも生えた!
俺はハイドロピアースも10Lvで習得しレフリスにロック状態を回復して貰い次第落とした双短剣を回収する。
「こっちも貫通魔法を習得したぜ!」
「私もだ!」
全員が貫通系スキルを習得してカグランタ王子を囲む。
「一斉攻撃じゃ! チャージアップ! ハイドロピアース!!」
チャージアップで武器の攻撃力を上げてからの貫通攻撃。これが今出せる最大威力だ!
「ニードルエッジ!」
「マジックブースト! ブルーフレイム!」
「チャージアップ! ペネトレートダッシュ!!」
全員が最大火力を出してカグランタ王子に攻撃を叩き込む。
「ぐぉぉぉっ!!」
いままで一番大きくゲージが減り、カグランタ王子が悲鳴を上げる。
「ゲージの減りは決して大きいとはいえないが、全員で削り続ければいけるぞ!」
「小賢しいと言っている!! オーバーリジェネ!!」
カグランタ王子がスキルを発動するとその体がキラキラと輝きだしHPゲージが回復してゆく。
「回復スキル!?」
こいつそんなもんまで持ってたのか!?
「手を休めるな!」
俺達は回復したカグランタ王子に再び最大火力で貫通攻撃を仕掛ける。だがゲージの回復と拮抗してゲージを削れない。
「持続回復スキルか!」
硬くて回復までするとかクソボス過ぎるだろ!
「なんだこのクソボスは! ゲームバランス考えろっての!!」
だが泣き言も言っていられない。コイツは時間をかければかける程不利になる相手だ。
「ええい! チクチクとうっとおしい!」
「下がれ!!」
ヒメキの叫びに反射的に下がるとカグランタ王子がダブルロイヤルクラッシュを放ってくる。
「あっぶねーっ」
「リジェネが切れるまで攻撃を続けろ! スキルの効果も無限じゃない!」
モヒカンの指示に従い俺達は最大火力を叩き込み続ける。
するとリジェネが切れゲージが減り始める。
「させん! オーバーリジェネ!!」
そして回復が再開してはゲージの回復を妨害し、リジェネが切れたらまたゲージを減らす地味な戦いを繰り返す。
「確実に当てていけ! ゲージは減ってる!!」
よし、ロック攻撃を回避しながら行けばいずれは倒せる……と思っていました。
「いかん、MPが足りん」
チャージアップは単発バフな為一回攻撃するごとにかけ直さないといけない事から俺のMPがガンガン削れていく。
おかげでMPポーションも飲みまくる羽目になってこのゲームに胃袋ゲージがあったら今頃お腹がタプタプになって飲めなくなっていることだろう。
既に淑女のリボンを装備しているのでMP上限アップも期待できない。
「やべぇぞ、こっちもMPが切れてきやがった」
俺だけじゃなくモヒカン達もMPが尽きてくる。
「こうなったら焼け石に水じゃが……『歌姫の加護』!」
俺は後方に下がると歌姫の加護で皆のMP回復に努める。
回復量は微々たるものだがやらないよりはマシだろう。
「助かるぜお嬢!」
「だが姫のダメージが無くなるとダメージを維持するので限界だぞ!」
「いえ、姫様のスキルバフで火力は上がってます! ただMPヤバいんで連発できません!」
さらに言うとこのスキルだと俺のMPが回復しないのも問題だ。
「ロックデバフを解除するポーションももうないよ!」
レフリスのアイテムも底を突き始め、完全にジリ貧になってきた。
「うっとおしい歌だ! グランドウェイブ!!」
ドン、と地面が揺れるとカグランタ王子を中心に床が波紋の様に波を打つ。
「うわわっ! しまった!」
慌ててジャンプして回避したせいで歌が途切れてスキルが解除されてしまった。
やばい、スキルのクールタイムが発生する!
「ならクールタイムが開けるまで貫通スキルでダメージを与えるのじゃ!!」
が、そんな状況でカグランタ王子が取りだしたアイテムを見て俺達は愕然となる。
「ポーション!?」
「ただのポーションではない。HPとMPを同時に回復するグレートポーションだ!」
「上級ポーション!? ズルい!!」
カグランタ王子がポーションを飲むとHPゲージが一気に回復する。
「NPCが消耗品使うとかありかよ!!」
全くだよチクショー!
折角時間をかけて削って来たゲージが一気に満タンまで戻り、俺達は愕然とする。
今からまたゲージを削るなんて無理だ。MPがもたない。
「はははははっ! 抵抗する気も失せたか? 今なら土下座して降伏すれば許してやるぞ」
形勢が圧倒的になった事でカグランタ王子が余裕の降伏勧告をしてくる。
「最も、俺に楯突いたのだ。王位継承権の放棄と全財産の譲渡。それにお前の家臣を寄こして貰おうか」
はぁ!? 何言ってんだコイツ!
「不服そうだな。だがそれでも死ぬよりはマシだろう?」
「死ぬよりは、じゃと?」
「そうだ、誰だって死んだらおしまいだからな」
死んだらおしまいか。確かにお前の言う通りだよ。けどな……
こちとらプレイヤーなんだ! 死に戻りをビビッてゲームが出来るかってんだ!!
「お主に降伏するつもりも家臣を売り渡す気も無い!!」
勝ちの芽が失せたとしても、このまま犬死になんて出来るかよ!
お前の弱点を一つでもいいから引き出してやる!!
俺は残ったMPを使って貫通攻撃を叩き込む。
「オーバーリジェネ!!」
が、無情にもカグランタ王子のHPゲージは回復してゆく。
『貫通スキルの使用回数が100回を超えロイヤルスキル『ロイヤルピアース』の習得条件を満たしました』
「なん……じゃと?」
「ふはははっ、万策尽きて諦めたか?」
ここで新スキルが解放された?
いやでも俺100回も使ってないぞ? どういうことだ? バグか?
「いやもしかして」
「やれやれ、まだ現実が認められないのか?」
俺は両手に持った双短剣を見つめる。
「2回攻撃がスキルの解放条件を短縮してくれたのか?」
一撃の威力が減るかわりにデバフスキルの成功率がアップするだけの武器だと思っていたけど、まさかこんな育成メリットがあったのか!
「ならば取得するしかあるまい!」
俺はロイヤルピアースを習得してスキルを発動……出来なかった。
「いかん、MPが足りん!」
さっきの攻撃で全部使い切っちまった! MP回復ポーションももう無い!!
「これ、使って」
そこに差し出される小瓶。
「レフリス!」
「何かするんだよね! ならこれを使って! 最後の1個!!」
「感謝するのじゃ!」
MPポーションを飲んでMPゲージが回復する。
「喰らうのじゃカグランタ王子! ロイヤルピアース!!」
金と銀の双短剣が緑に輝き、カグランタ王子の体を貫く!
「まだ無駄な真似をうぐぉぉぉっ!?」
バシュンッ! という勢いのある音と共にカグランタ王子の体を緑の光が貫く。
そしてゲージがこれまで以上に大きく減る。
「いける! オーバーチャージ! ロイヤルピアース!!」
武器強化を施して再度叩き込むと、先ほど以上にゲージが減る。
「がっ!? なっ!? 調子に乗るな!! ダブルロイヤルクラッシュ!!」
「させん!」
「同じく!!」
カグランタ王子のロック攻撃をヒメキとパンケーキングが壁になって防ぐ。
「ぐぅっ! 姫、私のMPポーションです!」
「俺のも!」
二人が俺になけなしのMPポーションを投げて渡す。
「すまん! オーバーチャージ! ロイヤルピアース!!」
「がぁぁぁぁぁぁ!!」
再度スキルを叩き込みカグランタ王子が悲鳴を上げる。ゲージは比較にならない程削れリジェネの回復も追いつていない。
「お、おのれ! 許さんぞっ!!」
カグランタ王子が俺目掛けて突撃してくるが、それをヒメキとパンケーキングが体当たりで阻止する。
「挑発スキルをするMPも残っていないが!」
「巨大ボスじゃないなら俺達が壁になるぜ!」
「「今だ!!」」
「任せるのじゃ!!」
MPポーションを飲み干し、4発目のロイヤルピアースを叩き込んだ時、カグランタ王子の体に変化が起きる。
「まさか第三形態!?」
パンケーキングが絶望の声を上げるが、寧ろその不安とは逆の結果となる。
「あ、あぁぁぁぁ、力が……」
「カグランタ王子が、元に戻った!?」
カグランタ王子の体を守っていた魔物の外殻が消滅し、寧ろ戦う前より弱々しい姿へと変貌する。
「どうなっておるのじゃ!?」
「考えるのは後だ! 今がチャンスだぜ! メーザーフレイム!!」
「ぐわぁぁぁぁぁっ!!」
モヒカンの放った魔法がカグランタ王子の体を炎で包み込む。
「通常魔法が効いた!? そうか鎧が消えたから!!」
つまり貫通スキルを使わなくてもよくなったって事か!!
「ならば! これで止めじゃロイヤルスラーーーッシュッ!!」
止めの一撃を受け、カグランタ王子の体が吹き飛ぶ。
「がっ!!」
そして謁見の間の壁にめり込むと、白目をむいて意識を失ったのだった。
「勝者、マルシェラ姫!!」
『勝利』
『経験値10000』
ヴィロゥの勝利宣言と共に、漸く第三王子カグランタとの戦いは終結したのだった。




