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のじゃロリ魔王姫さまはNPCじゃありません!~ネタキャラ? いえ、レアキャラです!~  作者: 十一屋 翠
第二章 のじゃロリ王国ギルド設立編

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第30話 王宮会議

「マルシェラ姫の乗った船が沈んだだと!?」


 魔王国の王宮は騒然となっていた。

 謁見の間に集められた家臣達は今しがた聞いたばかりの報告に動揺を隠せないでいる。


「これは他種族の陰謀に違いない! 調印式を終えた直後の隙を狙って我が妹を謀殺したのだ!」


 こぶしを握り締めてそう叫んだのは、魔王国第三王子のカグランタ王子だった。


「国交回復を求めるふりをして後ろから襲うような真似をするなど許しがたい! 愛する妹を殺した犯人を見つけ出し、我が種族を愚弄した報いを受けさせるべきだ!」


 カグランタ王子の宣言に対し、家臣達の反応は割れていた。


「カグランタ王子の言う通りだ! ここまで露骨な挑発をされておきながら尻尾を巻いて逃げるなどありえない!」


「待て待て、そもそも反対派の仕業とは限らん。魔物の襲撃や嵐に逢って沈んだ可能性だってあるではないか」


 前者はカグランタ王子派閥の声、後者はそれ以外の派閥の声だ。


「そうだねぇ、ちょっと気になるよね」


 そんな中、飄々とした声が口論を止める。


「ヴィロゥ殿」


「あれは静観の……」


 カツンカツンと靴の音を立てて、ヴィロゥがカグランタ王子の前に立つ。


「そもそも、なぜカグランタ王子はマルシェラ姫の船が沈んだ事を知っているんだい? 姫が死んだ証拠は?」


 それは当然の疑問だ。大海原のど真ん中で船が沈んだのなら、助けを求める事など出来る訳がないのだから。


「これだ」


 その問いに対しカグランタ王子が懐から小さな瓶を取りだす。


「これは珍しい。『想いの送り先』じゃないか。手紙を目的地に送る為の古いアイテムだね」


「海を漂うこの小瓶を近隣の貴族が発見してな。内容が内容なだけに私に届けられたのだ」


「なぁ、思いの送り先って何だ?」


「古いマジックアイテムだ。送りたい相手を思い浮かべながら流すと、水を漂って相手の下に向かう効果がある。ただし移動は遅いし嵐に巻き込まれたら抗う事も出来ん。さらに瓶が割れたらそれで終わりだし途中で誰かに中身を空けられる可能性も高い。無人島にでも流れ着いた船乗りが一か八か助けを求めるかロマンチストが思いを運にかけて流すくらいしか使い道のない品だよ」


 二人のやり取りを見ていた貴族達がマジックアイテムについてコソコソと話し合う。


「ほうほう、成る程ね。魔法通信という遥かに優秀な通信手段があるにも関わらず、こんな運任せの骨董品を頼ったのかい。そこの彼が言う通り随分とロマンチストな者が投げ込んだものだ」


「手紙の内容を見るかぎり魔法通信を使うような余裕も無かったのだろう。だから緊急時の時の為に船に設置されていた骨董品に頼らざるを得なかったのだろうな」


 それを言ったら緊急時に手紙を書くような暇もないと思うのだが、それについてはヴィロゥもカグランタ王子も言及しなかった。


「この手紙には我が妹が賊に襲われ命を奪われたと書いてある。そして船も破壊され自分達は助からないだろうとも書かれていた。そんな状況でこの手紙を書いた者の心情はいかほどのものであっただろうか」


 カグランタ王子が瓶から取り出した手紙には赤い血の跡がこびり付いており、それを書いた人物は既にこの世にいないだろうことを継げている。


「窮地に置いて本国の我等に情報を残した忠義に報いるためにも。我等を後ろから切りつけるような真似をした卑怯者と戦うべきだ! そうは思ないか諸君!」


 聞く者の感情に訴えようと、カグランタ王子は犯人を倒す事が敵を討つことになると叫ぶ。

 彼の演説によって謁見の間の意見は拮抗からわずかに報復に傾きつつあった。


「陛下! 陛下のご意見を伺いたい!」


 その状況をみて僅かに口角を上げたカグランタ王子は魔王に意見を求める。


「ふむ、そうであるな……」


 意見を求められた魔王は鷹揚にうなずくとちらりと後ろを見る。


「これは本人に聞くのが一番であろうな」


「は? 本人?」


「おまえの意見を聞こうかマルシェラ」


 魔王の声を受け、俺は玉座の背後から姿を見せる。


「なっ!? マルシェラ!?」


「マルシェラ姫! 生きておられたのか!!」


 俺が現れたことで謁見の間が騒然となる。

 呼び声の彫像で間一髪助かった俺だったが、このまま生存を報告しても犯人は見つけられないと思い、レフリスに頼んでヴィロゥにつなぎを取ってもらったのだ。

 ほら、レフリスにはこの前王宮で使われているメイド服をあげたから、あれで城に潜入して貰ったのである。


 で、レフリスの魔通輪を通して連絡を取り、犯人を暴く為の準備をしていたのだ。

 ヴィロゥは俺が死んだことを開戦の理由にするだろうから、魔王に俺の生存と共に事情を説明し、誰が声を上げるのかを待ち受ける事となった。

 その際に呼び声の彫像のお陰で助かった話をしたら魔王がめっちゃドヤ顔で「役に立ったであろう!!」とはしゃいでいたのは別の話だ。


「マルシェラ……」


 魔王が座る玉座のそばから降りてくるとカグランタ王子がなんとも味わい深い顔で俺を見つめてくる。

 信じられないような憎らしいような、それでいて感情を隠さないといけないと平静を保とうとしている表情だ。


 で、俺の死亡を高らかに叫んだのは、第三王子カグランタだった訳だ。


「カグランタ兄上にお聞きしたい。その手紙にはわらわが殺されたと書いてあったそうですが、一体誰がそんな事を書いたのでしょうな」


「おそらく……乱戦の中お前が攻撃されたところを見て殺されたと勘違いしたのであろう」


「おや、それはおかしいですな。わらわは騎士達に守られていて、賊は一人たりともわらわには近づけなんだ。そんな勘違いをする場面すらなかったのじゃ。不思議じゃのう」


 実際にはガンガン前に出ていたけれど、どうせ暗殺者側の証人はいないのだからこの辺りは言った者勝ちという事で。


「それは……分からん。何か不幸な行き違いがあったのであろう」


 まぁそう言い逃れするしかないよな。下手に屁理屈をこねればなんで見て来たようなことが言えるんだってなる訳だし。

 寧ろ陰謀を企てた側である以上、下手な事を言えば首謀者しか知らないような情報を漏らしてしまいかねない。


「わらわを襲った賊ですが、船で襲って来たのではなく、積み荷に隠された転移の鏡を使用して暗殺者を送ってきました」


「転移の鏡だと!?」


「あんなものを暗殺の為に用意したのか!」


 転移の鏡とは船倉で暗殺者がわんさかポップしてきたあの鏡だ。

 ヴィロゥに襲撃された時の事を説明した際、あの鏡が転移の鏡という転移装置だろうと教えてくれた。

 ただこのアイテム、かなり便利な反面かなり高価でかつ壊れやすいという問題もある品だった。


「転移の鏡を用意できる以上、黒幕は高位の貴族だろうね。ただの金持ちでは駄目だ。マルシェラ姫も体験した通り、下手したら内側に敵兵が無限に湧く軍事物資にもなる品だ。信用のある貴族でなければ入手は不可能だよ」


 との事だった。

 そうした理由から犯人はある程度絞られた訳だ。


「襲撃者ですが、顔こそ隠しておりましたがその姿は獣族でも妖精でも鱗族でもなかったのじゃ。しいて言えば人族かもしれぬが、人族は今回の会議で色々とやらかした故、他の理由もあって襲うにはタイミングが悪すぎるのじゃ」


 寧ろもう一つの理由の方が人族が無実の証明になるんだけどな。

 何せ調印式のコンサートが終わった後、ガメッツが勝手に開いた出張店舗でコンサート記念グッズ買いあさってたからなぁ。


 となると犯人は魔族だが、先ほどから報復を主張しているのは第三王子派閥のみ。

 他の王子派閥は反対を、中立派閥は沈黙を貫いている。


「兄である私が犯人だというのか!?」


 そこまで言ってないのにそれは自白してるようなもんなんだよ。


「さて、それは分かりませぬ。ですがわらわが生きていたのじゃ、報復の必要はありますまい? 何しろ犯人が誰か分からぬのですからな」


「お、お前だけではない! 護衛騎士や施設団の者達にも被害が出ている! これは我が種族への宣戦布告に他ならない!」


 うん、そう言ってくると思った。


「彼等なら生きておりますぞ」


「なに?」


 合図をすると謁見の間に人が入ってくる。


「お前達は……」


入って来たのは騎士と文官、それに船乗りと最後にレフリス達プレイヤーだった。


「調印式に向かった者達じゃ。全員生きておるぞ」


「おっしゃる通り。マルシェラ姫の機転で助かりました」


「あの状況で生きて帰れるとは思いませんでしたよ」


「姫様はマジで海の女神だぜ! あ、いや……です!」


「「「「マルシェラ姫ばんざーいっ!!」」」」


 最後の連中だけノリが違うのよ。


「馬鹿な、どうやって助かったのだ!?」


 呼び声の彫像の事を知らないのか、カグランタ王子が信じられないと声を震わせる。

 あの時、割とすぐに呼び声の彫像で帰還する事を思いついた俺だったが、それだと助かるのはプレイヤーだけで護衛騎士と使節団のメンバー、それに船員達が助けられない事に気付き使用を迷った。


 刻々と船の崩壊が迫る中、他に何か方法が無いかと意見を出し合い、それでも意見が見つからずやむなく呼び声の彫像でプレイヤーだけを助ける意見を出した時、ヒメキが声を上げた。


「それです! 彼等を我々のパーティに登録すればよいのです!」


「はっ!? 騎士達をパーティに!? それでなんとかなるのか?」


「成る程お嬢自身がNPCだからな。同じNPCをパーティに入れても大丈夫って事か」


 モヒカンが納得の声を上げるが俺自身はプレイヤーなのでその理屈は通じない可能性がある。

 正直これで駄目だったら俺がプレイヤーとバレてしまうかもしれない……が、


「どうせだめかもしれんのなら試してみるか……!」


 とういう事で一か八か試してみたらうまくいったのだった。


「アイデアを出してくれたヒメキには後で褒美をやらんとな」


「ありがたき幸せ!」


「という訳です兄上。これで報復の必要もないでしょう? 証拠がない以上犯人捜しは困難。であれば国交回復の成功に余計な波風を立てる必要もありますまい」


「だ、だが我が種族に悪意を持つものが居るのは事実。なんとしてでも犯人を捜さねば……」


 やれやれ、まだいうか。犯人を捜そうにも唯一証拠になりそうな転移の鏡はもうぶっ壊れて海の底に沈んじまったしどうしようもないだろ……


「あのー。ちょっといいですか?」


 そんな時だった。護衛騎士達と一緒にやってきたプレイヤーの一人が手を上げる。

 はて、何か見覚えのあるような……?


「む? なんじゃ?」


「船倉で戦ってた時にこんなもの拾ったんですけど、何か証拠になりませんかね?」


 そう言って大きな破片のような物を取りだすプレイヤー。


「何じゃそれは?」


「敵が出てきた鏡の破片です」


 鏡? ……あっそうか、あの時転移の鏡を割ったプレイヤーか!

 船が爆破された際、鏡を割った事を皆に責められてたから記憶に残ってたんだな。


「おやそれは、ちょっと失礼」


 それに興味を持ったヴィロゥがプレイヤーから破片をひったくると、興味深そうに観察を始める。


「ほうほう、よくこんなものに目を付けたねぇ」


「あ、いや、いかにも手がかりっぽい絵が描いてあったんで何かの役に立つかなって」


 手がかりっぽい絵? 一体何が書かれてたんだ?


「お手柄だよ。これは王家の紋章だ」


「「「「王家の紋章!?」」」」


 まさかの超絶証拠じゃねーか!


「転移の鏡は貴重な品だからね。納品の際には持ち主の紋章が刻む義務があるんだ。でないと容易く悪意を持った用途に使われてしまうからね。制作、および譲渡の際は見える場所だけでなく目立たない所にもこっそり刻んでおくものなのさ」


 へー、って事は俺の呼び声の彫像にも紋章が刻まれているってことなのか。

 後で調べて見よっと。


「この紋章はカグランタ王子の母君の家のものだね」


「っ!?」


 自分の母親の家の紋章だと指摘され、あからさまに動揺するカグランタ王子。


「お、お爺様の家が反乱に加わる筈がない! 盗まれたものに決まっている」


「ははは、仮にも軍需物資になりえる品だよ。盗まれたのならすぐに届け出が出されるさ。長旅をする船に積まれていたのなら十分に盗難された事を申告する時間はあっただろうしね」


 つまりその届け出が無い以上、カグランタ王子の母親の実家が関わっているのは確実って事か。


「となると困ったねぇ。仮にも王子の後ろ盾の代表が種族全体の利益を妨害したとあれば、その王子の王位継承の芽は経たれてしまうだろう」


「ぐ、うう……わ、罠だ! 俺を陥れようとする罠に決まっている!!」


 この期に及んでシラを切るカグランタ王子。

 だがこの状況じゃどうあっても責任をとるしかないだろう。


「だろうね、認められないだろうね。なら戦うしかあるまい!」


 がそこでヴィロゥがカグランタ王子を庇うようなことを言い出す。

 っていうか戦う?


「魔族たる者、己の身の潔白は戦いを以って証明するしかない。それが限りなく黒に近い潔白であったとしても力を示せば白に裏返る! 幸いここには魔王陛下もいらっしゃる! 王前決闘といこうじゃないか! カグランタ王子、マルシェラ姫!」


「決闘!?」


 待って待って、全然準備とかしてきてないから!!


「よかろう、決闘を許可する」


 はぁーーーーっ!! 何言っちゃってんのこの魔王! ライヴ感で生きてるんじゃねぇのか!?


「おおー、魔王陛下の許可も出たね! 頑張れ二人共!」


 魔王の許可が出ると周囲にいた家臣達が一斉に壁際に下がり、その場には俺とカグランタ王子、そしてヴィロゥだけが残る。


「ヴィロゥ、こんなことになるとはわらわ聞いてないんじゃけど!?」


「ほら、私はどこか一勢力に加担する気はないからね。ちゃんと双方平等にあるべきかなって」


 余計な気を回すなぁぁぁぁぁぁっ!!


「それを言ったらわらわ後ろ盾無しで頑張っておるんじゃけど!?」


「ああそうだねぇ。たしかに貴血の解放段階も違うしハンデは必要かな?」


「魔王陛下、マルシェラ姫にはハンデとして家臣の助太刀を許可してもいいんじゃないかな?」


「……よかろう。四人までの参加を許す」


 やった! パーティメンバー参加きた! って四人?

 レフリスとモヒカンとヒメキとあと一人は?


「君、マルシェラ姫の為に頑張ってくれるかい?」


「あ、はい、頑張ります!」


 とヴィロゥに選ばれたのは証拠の破片を持ってきたプレイヤーだった。

 イベントに貢献したか一番近くにいたから参加メンバーに選ばれた感じかな?


「お主、名は?」


「あ、えっと俺はパンケーキングです!」


 ネタネームかー。


「パンケーキングか。良い名じゃ、よろしく頼むぞ」


 とりあえずNPCっぽい対応してからレフリス達を呼ぶ。


「一緒に戦ってほしいのじゃ」


「え!? 私生産職だけど良いの!?」


「そもそもレフリスが姫のイベントを進めているのだから当然の権利だろう」


「まぁいつもの面子って訳だ。よろしく頼むぜパンケーキ」


「あ、はい! よろしくお願いしますモヒさん!」


 おや? もしかしてこの二人知り合いか?


「さぁ双方とも準備は良いかい? 装備を忘れてないかい?」


 こういうところ聞いてくるあたりゲームっぽいなぁ。


「問題ない」


「こちらも問題ないのじゃ」


今回は最初からロイヤル装備で防御力全開だ。

 パンケーキングの実力が分からないから連携には気を付けないとな。


「お嬢、パンケーキのフォローは俺に任せろ。お嬢はヒメキと連携。レフリスは後ろから援護を頼む」


「分かったのじゃ」


「任せろ、姫は私がお守りする」


「大丈夫、何かあっても良いようにちゃんとアイテムは補充して来たよ!」


「よーし、それじゃあ、王前決闘開始だ!」


 こうして、第三王子カグランタとの決闘が始まったのだった。

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