第3話 魔王への謁見と王家の血覚醒
翌日、仕事を終えてゲームにログインした俺は昨日のミニゲームで手に入れたポイントをどう振り分けるか考えていた。
『ペナルティ:のじゃロリ言葉を使わないことでステータスがダウンします』
バリバリ!
「ぐわーっ!」
し、しまった! 個性設定ののじゃロリ縛りを忘れていた。
気を付けないと、ここが戦闘フィールドでなくて本当に良かった。
「改めて経験値をどうするか……なのじゃ」
「これだけあるし戦闘用スキルを一つと便利スキルを一つ、それに能力値に振り分けるか……のじゃ」
何せ俺のステータスはディスティニースロット失敗で最低値からスタートしている。
多分固定値で始めたプレイヤーよりも遥かに弱いだろう。
「多分ミニゲームで経験値を稼いで平均レベルまで能力値を上げてから冒険を始めるのが妥当じゃな」
「姫様」
方針を決めた事でまずはスキルを取ろうとした時、傍に控えていたNPCのメイドさんが声をかけてきた。
「魔王陛下が及びです」
「魔王……いや父上が?」
ゲームとはいえ一応は家族設定だ。のじゃロリ縛りがいつ発動するか分からない以上高貴な親子っぽい呼び方にしておいた方がいいだろう。
俺はメイドに案内されて城の中を進んでゆく。
すると道行く貴族や騎士、それにメイド達が折れを見てはお辞儀をしてくる。
うーん偉い人になった気分。いや偉い人だったわ。
そして現実ならまず見ないであろうバカデカい扉にたどり着く。
あれか、いわゆる謁見の間って奴か。
扉はゴゴゴゴと鈍い音を立てて開いてゆく。
リアルでこんな音立てて毎回開いてたら迷惑だろうなぁ。
「魔王陛下、マルシェラ姫が参りました」
「うむ、よくぞ来た」
無駄に長い謁見の間の奥にはこれまたバカデカい玉座が聳え立っており、その玉座にこれまたバカデカイ王冠を被った偉そうなおっさんが座っていた。
うん、間違いなく王様だろうね。
そして頭には王冠だけでなく角が生えている。
そういえば俺の種族って魔族だっけ。
ちなみにこのゲームILLでは各種族それぞれ相性の悪い種族が居る。
人族と魔族、妖精と獣族。鱗族はどの種族とも中立らしい。
なので相性の悪い種族同士で小競り合いが怒る事もあるのだとか。
各陣営に分かれての大規模イベント用の設定なんだろうな。
メイドに促され俺は謁見の間を進んでゆく。
「姫様、魔王陛下に跪いてご挨拶をするット」
バットンが俺の耳元で指示を出す。
どうやら親子の間でも明確な地位の差があるようだ。
「マルシェラ参りました。魔王陛下におきましてはご健勝のようで……」
「よいよい! 親子の間でそのような堅苦しい言葉遣いは不要だ! もっと近う寄れ!」
社会人スキルとマンガ知識で王様に対する挨拶をしようとした俺の言葉を魔王がカットしてくる。
どうやら意外にフランクな王様らしい。
俺は言われるままに父である魔王に近づくとその腕がぬっと伸びで俺を持ち上げ、自分の膝の上にのせる。
「うむうむ、大きくなったなマルシェラよ!」
いやアンタが大きすぎて小人になった気分なんですけど。
あとさ、はたから見ると小さな娘と父親のホッコリした光景なんだけど、その中身はマッチョな成人男性なんです。
現実を! 現実を見るな俺! これはゲーム! 運営にキャラデザのやり直しを適応して貰うまでの我慢だから!
「聞いたぞ、訓練で騎士を倒したそうではないか!」
「い、いえ。騎士ではなく見習いです……のじゃ」
「見習いも騎士よ! さすがは我が娘! お前は体の弱い子だったから心配であったが、健やかに育っておるようで何よりだ!」
え? 俺もやしっ子設定だったの? それともゲームバランス的にそうなんだろうか?
「母を亡くしたお前には寂しい思いをさせている。だが余も王として振舞わねばならんのだ」
どうやら俺の母親は死んでいる設定らしい。多分ゲーム的に要らない部分なんだろうな。主に容量の問題で。
「いえ、わらわには陛下がおりますから、寂しくありませぬ」
とりあえず父親に媚びておこう。王様だし。
「おお! いじらしい事をいってくれる! だがマルシェラよ、公の場でないなら王ではなく父と呼ぶがよい」
そう言って魔王はそっと俺を抱き寄せると、懐に何かを押し付けてきた。
(お目付け役達には内緒であるぞ)
『おこずかい100000モールを貰った』
まさかのお小遣い(笑)、この魔王親バカすぎる。
(お父様ありがとうございます)
(うむ)
ところで謁見の間でどうどうとこっそりお小遣いなんて与えて周りの家臣達にバレないんだろうか?
「「「「……」」」」
全員思いっきり目を逸らしていた。ですよねー。
何ならバットンも呆れた目で俺達を見ている。
「うむ、それでは教育係の言う事を聞き良く学ぶのだぞ!」
「はいなのじゃ!」
そんな訳でお小遣いを貰うと魔王との会話は終わり俺達は謁見の間を追い出されたのだった。
「魔王陛下はとてもお忙しい方だット。本来なら姫様は年に一度会えれば良い方だット。きっと姫様の頑張りを褒めてあげたくて時間を捻出してくださったんだット」
魔王、思った以上に親バカっぽい。
『大いなる血統が解放されました。:全ステータスが10%上昇』
「おおっ!?」
突然のアナウンスに俺はステータスを開いて確認する。
―――――――――――――――――――――――――
HP:10『11』
MP:12『13』
筋力:2『2』
体力:1『1』
魔力:2『2』
素早さ:5『5』
器用度:5『5』
―――――――――――――――――――――――――
「HPとMPが上がってるのじゃ!」
ただ能力値は上がってないみたいだ。
しかし横に数値欄が増えているって事は何らかの条件でこの数字が上がるんだろうな。
「10%という事は端数は切り捨てなのかのう。そう考えると役に立たんように見えるが、それはまだステータスが低いからじゃろうな。強化して能力値が二桁三桁になってきたら一気に化けるのじゃ」
となるとステータスアップを優先して通常攻撃を強化するのも面白いな。
レベルを上げて物理で殴るって奴だ!
「あら、随分と騒がしいと思ったら」
ステータス上昇に興奮していた俺だったが、そこに誰かが声をかけてきた。
「まぁ、何故あなたのような者がここにいるのかしら」
現れたのは二人の男女。
いかにも王妃様然とした妙齢のかなりキツそうな美女と、その美女によく似た美青年の二人組だ。
多分親子かな?
そして二人はそろって俺に冷酷な眼差しを向けてくる。
「第一王妃のローゼリア様と第一王子のアムドラ様だット」
あれ? でも俺の母親は死んでる筈じゃ……ああ、腹違いの兄妹って奴か。
「バットン、この場合なんと呼べば良いのじゃ?」
「ローゼリア義母様とアムドラお兄様でよいのだけどット……」
「おはようございますローゼリア義母様、アムドラお兄様」
俺は漫画でよくあるお嬢さまがスカートを広げるアレをやりながら二人に挨拶をするが、その反応は芳しいものじゃなかった。
「まぁ、なんて無様な挨拶かしら。くらいが低いと礼節も見れたものではないわね」
「母上、このような者に関わる必要はありません、貴様も二度と私達の名を気安く呼ぶな」
そう言って二人は足早にこの場を去っていった。
「ええと、もしかしてわらわ嫌われておるのじゃ?」
「姫様は王族の中では一番位が低いット。それに第一王妃様とは血の繋がりもないから見下されているのだット」
ふむふむ、王位継承権争いの敵だから慣れ合う気もないし、そもそも敵として見るレベルですらないみたいな感じか?
「まぁゲームじゃからな。1プレイヤーが王位継承権争いに深く関わっては別のゲームになってしまうか」
将来的にはレベルが上がって色んなイベントを攻略する事で王位継承権争いに食い込んだりするイベントがあるかもしれないけどな。
大抵この手のゲームはギルドとかの大規模チームを組むことで領主になって領地運営要素が入ったり、ギルドホームなんかの拠点が与えられるもんだ。
「そう考えるとわらわの立場的にレアな拠点を手に入れる事が出来る可能性が高いのう」
王族の地位がただのフレーバーテキストじゃないなら、王位は無理でも高位の貴族として領地を貰える可能性が高い。
「あ、いや今のキャラはあくまでキャラメイクし直すまでの情報収集なのじゃ。本命でのプレイでは期待できんのじゃ」
うむむ、そう考えると残念な気もしてきた。
さっき貰ったお小遣い100000モールもパーになっちまう。
「それなら100000モールをパーッと使うのもありかもしれんの」
ゲーム開始初期の所持金は大事だ。しかしこの金額は明らかに他のプレイヤーに比べて高そうだし、今のうちに高い装備の使い心地を試すチャンスだ。
数値は良くても実際の使い心地が悪い装備ってあるもんな。
あとお金をたくさん使う事で何かイベントが発生する可能性もある。
「よし、町に出て買い物じゃ! っと、その前に経験値を使って強化じゃ。町の中で何かイベントに遭遇する可能性もあるからの」
俺はステータス画面を開いてスキル欄を見る。能力値はステータスバフが期待できるから便利なスキルを見繕っておこう。
スキルはゲームをする上でいろんな判定に影響を与えたり戦いを有利にしてくれる。
中にはスキルが無いとそもそもチャレンジできないものだってある。
「スキルとは鍛練を積んだ経験が形になったものだット。戦闘スキルなら剣の型を繰り返し覚えた経験、料理スキルなら包丁の使い方やレシピの材料や分量の知識といった具合にだット」
なるほど、ILLじゃスキルは突然ポンと覚えるものじゃなく、繰り返し練習した鍛練の結果っていう設定な訳だな。
「やはり戦闘スキルじゃのう。攻撃か防御かそれとも回避か。他にも移動に便利なダッシュ系スキルにお約束の採取系スキルもあるのう。どれにするか迷うのう」
「姫様は王族だからロイヤルスキルを習得できるット」
『ロイヤルスキルが解放されました』
「おおっ!? なんじゃこれは!」
―――――――――――――――――――――――――
ロイヤルスラッシュ
攻撃スキル:消費MP100
ダメージが1000%増加
―――――――――――――――――――――――――
って事は10倍ダメージ!? ぶっ壊れじゃん!
「必要経験値は!? 300!? いま54だからあと246!」
246なら訓練場のミニゲームを5回やればすぐだ!
「町に行く前に訓練場で訓練なのじゃ!」
俺は急いで訓練場にやってくると見覚えのある騎士見習いに訓練を申し込む。
「いくのじゃ!」
「今日は手加減いたしませんよ姫様!」
騎士見習いが剣を振り下ろしてくる。
「って、アレ!?」
するとおかしなことに昨日は表示されていたラインが見えなくなっていた。
「うわっ!?」
俺は慌てて騎士見習いの攻撃を回避する。
「姫様も昨日の訓練で慣れてきたから騎士見習いも本気になったんだット」
本気になった!? もしかしてやる度に難しくなるのか?
いやもしかして昨日はチュートリアルだったからか?
「ともあれ、それならそれでやるだけなのじゃ!」
今はデバフも入ってないし、動きに影響はない。昨日やった内容から目印が無くなっただけって事だ!
「はぁ!」
俺は騎士見習いの攻撃を回避して反撃する。
っていうかこれ普通に戦闘だよな?
敵の攻撃を避けて反撃してる訳だし。まぁ負けても死なないしデスペナルティもないからミニゲームって扱いなのか。
「はぁ!」
何発か良い攻撃を貰ってしまったが、何とかクリアすると最後の攻撃で騎士見習いが吹っ飛ぶ。
「ギリギリだったけど勝ちは勝ちだット!」
『勝利』
『経験値50』
ともあれ経験値をゲットだぜ!
その後も俺はミニゲームをクリアして経験値をゲットしてゆく。
「根を詰めすぎだット。今日はもう休むット」
そしてバットンが今日の分のミニゲームは終了と宣言してくる。
「これで経験値が溜まったのじゃ。それではロイヤルスラッシュを習得するのじゃ!」
『ロイヤルスラッシュを習得しました』
よっしゃこれで戦闘がめっちゃ有利になる!
ステータスが低いからそこまで威力は上がらないだろうけどこれもステータスアップ同様後々効果を発揮してくるぜ!
「さっそく試し打ちをどこかでってMPが足りねー!」
『ペナルティ:のじゃロリ言葉を使わないことでステータスがダウンします』
バリバリ!
「ぐわーっ!」
し、しまった。口調の事忘れてた。
そしてMPの事もうっかりしてた。
消費MP100で全然足りないじゃん!
「くっ、次はMPを上げないとなのじゃ……」
まだまだ先は長いか。だが待っていろよ。すぐに攻撃力10倍アタックで大暴れしてやるからな!
―――――――――――――――――――――――――
キャラクター欄
マルシエル=リム=オーヴァロド
種族:魔族
性別:女
HP:10『11』
MP:12『13』
筋力:2『2』
体力:1『1』
魔力:2『2』
素早さ:5『5』
器用度:5『5』
スキル
不屈の闘志:HPが0になった際、確率でHP10%で耐える。
ロイヤルスラッシュ:攻撃スキル:消費MP100:ダメージが1000%増加
アイデンティティ:魔王姫
王族特権:様々な最高位の特権が行使できる。
大いなる血統:全ステータスが10%増加
最高級教育:ロイヤルスキルを習得できる。
デメリット
女性専用アイデンティティ:キャラクターが強制的に女性になる。
個性:のじゃロリお嬢様
甘えん坊:周りの反応が甘くなる。
教育係:お付きのNPCが付いてくる。
デメリット
口調:のじゃロリ言葉を使わないと一定時間ステータスダウン、一部スキル封印。
身だしなみ:高貴な装備以外装備不能、一定のクオリティの装飾が施された装備以外装着できない。
外見指定:強制的に外見が小柄な美少女になる。
バットン
マルシエルの教育係
さまざまなアドバイスをしてくれる。
王族として相応しくなるための教育を施してくれる。
戦闘には参加しない。
※※※(好感度不足で未開放)
経験値:4
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