第2話 のじゃロリ鮮烈デビュー
第一話冒頭に戦闘シーンを追加しました。
俺の目の前には数分前の姿とは似ても似つかないロリ美少女の姿があった。
「マジかよ」
『キャラクターメイクが終了しました。それではILLの世界をお楽しみください』
無機質なアナウンスと共に世界が闇に染まった。
◆
目が覚めると、天井が近かった。
「ここは……」
聞こえてきたのは甲高い少女の声。
凄く綺麗な声だったが、少女の声。
起き上がって周囲を見ると、すぐ傍に額から角の生えたメイドさんが居た。
「おはようございます姫様」
メイドさんは俺の事を姫と呼ぶと深々とお辞儀をしてくる。
「あ、うん」
どう反応すれば良いのか分からずに起き上がろうとすると地面がグラリと動いてバランスを崩してしまう。
「わっ!?」
だがそんな俺をメイドさんが抱き留めてくれる。
おお! 柔らかい! 何とは言わないが!
「大丈夫ですか姫様」
「あ、うん、ありがとう」
『ペナルティ:のじゃロリ言葉を使わないことでステータスがダウンします』
ピシャーンという音と共に全身にビリリと電撃が走った感覚に襲われる。
「うわーっ!? なんだ今の!?」
更に電撃の感触が走る。
ステータスにデバフ!? ステータスがどうかなったのかと思うと、目の前に半透明のステータスが表示される。
マルシエル=リム=オーヴァロド
種族:魔族
性別:女
HP:10
MP:12
筋力:2(-2)
体力:1(-1)
魔力:2(-2)
素早さ:1(-1)
器用度:1(-1)
スキル
なし
「思いっきりマイナス入ってるー!」
あと名前も女っぽく変わっとるー!
更に体に電撃が走る。
「姫様、言葉遣いが汚いット!」
その時だった。何かが上から降りてくる。
「コウモリ?」
降りてきたのは丸っこいコウモリのような生き物だった。
「ボクは姫様の教育係のバットンだット」
バットンと名乗った丸いコウモリは俺の周りをぐるりと回る。
「姫様には王族として相応しい振る舞いをしないと罰を受けるように呪いがかけられているット。これは王族なら誰しも通る道だット」
「……成程、そういう事か」
どうやらコイツの説明はゲーム上の俺のキャラの設定がそうなっているという事なんだろう。
俺がのじゃロリ言葉を使うのは王族らしい言葉遣いと言う奴で、ペナルティがしつけのための呪いって設定な訳か。
設定は分かった。分かったんだが……
「それって強制ネカマって事じゃねぇか!」
再び体をピリピリと電撃が走る。
だがそれ以上に俺の心は打ちのめされていた。
だってよ、せっかく理想的なキャラを作ったんだぜ。それが強制的にこんなチンチクリンのガキ、それも性別まで替えられたショックを分かってほしい。
「そりゃディスティニースロットのデメリットは覚悟してたけどそれにしたってさぁ……」
うう、昔から俺はそうなんだ。
はっきりと言ってしまえば俺はリアルラックが悪い。
おみくじを引けば凶か大凶ばかり。ガチャを引けば天井に行くまでSSRは出てこない。
実のところ俺が体を鍛えているのもそこに理由があったりする。
昔から不運に見舞われていた俺は、突然の不運に襲われても何とかなるようにひたすら体を鍛えてきた。たとえ車が突っ込んできても生き延びれるようにと。
「けどさ、それでも、全く出ない訳じゃないんだ! たまには来るんだよ! 年一回くらいはSSRが!」
そのSSRがキャラ性能ランク最下位の可能性が非常に高い事は見なかった事にする。
「なのにこのゲームでもそうなのかよ」
「お嬢様、いい加減にするット! あまりにも礼儀が成っていないと王妃様に報告するット!」
「っ!?」
普通に考えれば親に言いつけるぞ! だがここはゲームの世界。
もしかしたらペナルティを繰り返すことで更なる厄介なペナルティを与えられる恐れがある。
流石にそれはゴメン被りたい。
「わ、分かった……のじゃ」
俺は観念してのじゃロリ言葉を口にする。
うう、やっぱキツい。成人男性のセリフじゃないんだよ!
「それで良いット!」
お前のその語尾は礼儀的に良いのかと凄く突っ込みたかったけど、多分自分の事はスルーするんだろうな。ゲームキャラだし。
とりあえずは我慢だ。
運営にキャラクターリセットを申請するのはもう決定事項だが、リセット申請が通るまではゲームの流れや効率の良いプレイ方法を模索するべきだろう。
そして申請が通ったら改めてキャラを作り直すぞ!
「それじゃあさっそく貴族教育を受けるット!」
「姫様、お着替えを」
「あ、うん…なのじゃ」
俺の体を支えていたメイドさんに促されて移動すると、俺は自分がベッドの上に居た事に気付く。
成程だから足場が揺れたのか。
しかもベッドはお姫様が寝るような天蓋付きベッドだ。
「天井が狭く感じたのもこれが原因か……っ!」
一瞬ペナルティを警戒してしまったが、どうやらセリフの流れに不自然にならない内容ならのじゃを付けなくていいらしい。
うまく喋ればイケるか?
「お似合いですよ」
「え?」
気が付いたら俺の着替えは終わっていた。
メイドさんが差し出した大きな姿見にはキャラメイクで見た美少女が綺麗なドレス風のファンタジー服を着ていた。
「おおー」
ステータスを表示して装備蘭を見るとこの服が設定上のものではなくちゃんとした装備なのだと分かる。
ロイヤルラフドレス:王族の日常用軽ドレス。訓練着としても使える。下手な防具よりも遥かの性能が高い。物理魔法両面に高い防御力を誇り、各種デバフにも強い耐性を持つ。
唯一の欠点は使用されている生地や糸の色に王族しか使ってはならないものが使用されている為、一目で王族とバレてしまうこと。
物理防御力100
魔法防御力100
デバフ成功率を50%ダウン
「うおおめっちゃ強ぇ! ……のじゃ」
「「……」」
あっぶねー、あまりの性能の高さに思わずのじゃを付け忘れるところだった。
セーフセーフ。
だがこの装備かなり凄そうだ。
ILLの初期装備の性能はよく分からんけど、デバブ成功率を50%ダウンは絶対強いだろ!
「それでは訓練場に行くット」
バットンに先導されて城の中を進むと、兵士達が訓練するしている広場にやってきた。
「おおー!」
こりゃ凄い、兵士達が訓練してるんだけどどいつもこいつも特撮かバトル漫画みたいなエフェクトを出しながら超人バトルしとる!
「姫様、訓練ですか?」
すると近くにいた少年兵がやってくる。
「姫様の訓練を手伝ってほしいット。姫様、彼等は騎士見習いだけど油断したら駄目ット」
おお、チュートリアル戦闘って奴だな!
俺は訓練用の木剣を受け取ると剣を構える。
「それでは訓練開始だット!」
よっしゃ! 戦うぜ! と思ったんだが……
『迫ってくる剣にタイミングを合わせて剣を振ってください』
なんかミニゲームが始まった。
俺の前にはラインが表示され、それがピカピカと点滅する。
どうやら音ゲーのようにこのラインに合わせて剣を振ればいいみたいだ。
俺は騎士見習いの剣がラインに接触するタイミングに合わせて剣を振る。
「あれ?」
だが何故か体が上手く動かずミスをしてしまう。
「よく見るット!」
しかし体が思うように動かずどんどん外してしまう。
「全然駄目だット!」
『失敗!!』
『経験値:10』
ぐおーなんだこのクソゲー! めっちゃ動きがカクカクじゃねーか!
最新ゲームじゃねーのかよ!
「姫様駄目駄目だット。これじゃあ王族失格だット」
この野郎、好き勝手言いやがって!
「もう一度だ! もう一度やらせろ!」
体にペナルティの雷撃が走るのも構わず俺はリベンジを申し込む。
「仕方がないットねぇ。もう一回だけやって良いット」
「よっしゃ!」
俺は意気込んでミニゲームに挑む。
今度はこのクソなゲームの反応の悪さを計算に入れて……
「って遅-っ!」
計算に入れて操作しようとした俺だったが2回目のプレイでは更に動きが悪くなっていた。
「なんだこりゃー!」
もしかして再チャレンジは更に操作性が悪くなるのか!?
その後もプレイ中になんとかタイミングを合わせようとしたものの動きの悪さはいかんともしがたく散々な成績になってしまう。
「酷い成績だット」
『失敗』
『経験値:10』
くそー! なんか周囲の騎士達の視線が痛い気がするぜ! NPCの筈なのに!
だが経験値は手に入っている。これを繰り返せば……ってそうだ!
「経験値をつぎ込めばいいじゃないか!」
俺はすぐにステータスを表示すると、能力値に経験値をつぎ込むことにする。
筋力:2(-11)
体力:1(-10)
魔力:2(-11)
素早さ:1(-10)
器用度:1(-10)
「って、めっちゃデバフ入ってるーっ!!」
おおーい! なんじゃこりゃー!
これ、口調ペナルティのデバフって重複するのか!?
「もしかしてミニゲームの動きが悪いのは操作性がクソだからじゃなくてペナルティの所為……なのじゃ?」
バリバリバリ!
「言葉遣いが汚いット」
のじゃを付けても許されなかった。
どうやらのじゃロリ言葉にはクソとか汚い言葉もNGっぽい。
「とにかくステータスに経験値をつぎ込むのじゃ」
俺はミニゲームの性質を考えて素早さと器用度に経験値をつぎ込む。
能力値を上げると必要経験値が1追加されるみたいなので、
筋力:2(-12)
体力:1(-11)
魔力:2(-12)
素早さ:1→4(-11)
器用度:1→3(-11)
これで経験値は19消費で残り1。
でもこれマイナスかかってるけどどうなんだろう?
「バットン、もう一度じゃ!」
「しょうがないットねぇ。少しは覚えて欲しいット」
三度目の正直と俺はミニゲームを行う。
だが動きは相変わらず悪い。ステータスが全然反映されていない感じだ。
だが分かった事もある。あまりにマイナスがかかるとステータスを上げても意味がないって事だ。
だが経験値のディスティニースロットの事を考えると最低値は残っている筈。マイナスは入っていないと信じたい。
三度目の結果も酷いもんだった。
ただ何度も繰り返した事で先読みが出来た分さっきよりは成績が良くなっていた。
「さっきよりはマシだけどまだまだ全然駄目だット」
『失敗』
『経験値:10』
「もう一度チャレンジじゃ!」
「まだやるットか? まぁやる気がないよりはマシットね」
四度目のチャレンジをしていた時だった。
「おおっ!?」
突然ミニゲームの動きがよくなったのである。
「これは!?」
急に動きが変わった事でミスをしてしまったがすぐにその感覚に合わせてゆく。
「……よし!」
その結果は……
「凄く良くなったット! 貴族としてはまだまだ及第点に及ばないットけど、素晴らしい成長だット!」
「よ、かったのジャ」
あやうくよっしゃー!と叫びそうになったのを堪える。
けどようやくペナルティのデバブが解除されたようで体が一気に軽くなった。
『失敗』
『経験値:10』
「これなら次こそ行けそうなのじゃ」
俺は残った経験値をステータスにつぎ込む。
筋力:2
体力:1
魔力:2
素早さ:4→5
器用度:3→5
これで経験値は残り4か。
他のステータスを上げるのも良いけど必要になるまでは取っておこう。
それにしてもデバフが無いって良いなぁ。
「バットン、もう一度チャレンジじゃ」
「しょうがないットねぇ」
俺は五回目のミニゲームにチャレンジする。
五回目のチャレンジは明らかに違うのを感じる。
ペナルティが解除され、更にステータスを上げた事でさっきまでとは全然動きが違う。
更に誤解もプレイした事でミニゲームのコツも理解出来てきた。
「これで、クリア―じゃ!」
ステータスが足りないのかどうしても拾えない部分はあったが、俺はかなりの手ごたえを感じる。さぁどうだ!
「これは……合格だット! 凄いット姫様!」
『成功!』
『経験値50』
『不屈の闘志を習得しました』
「よっしゃー!」
遂にミニゲームクリア! しかも経験値は五倍だぜ!
更にスキルも覚えたぜ!
バリバリバリ!
「ぐわーっ!」
しまった! 興奮のあまりペナルティの事忘れてた!
「姫様お見事です!」
「諦めない心意気素晴らしかったですぞ!」
さっきまで冷たい目をしていたように見えた騎士達もミニゲームの成功を祝ってくれた。
「流石です姫様。やはり私のような見習いでは足元にも及びませんね」
「そんなことはないのじゃ!」
いや本当にね。俺の方が足元にも及ばなかったんだわ。
だがこれで経験値は55、ようやく戦闘用スキルを習得することができるぜ!
どんなスキルを覚えようかなー。
せっかくだから強いスキルを覚えたいよな! その為にももっとミニゲームをクリアして経験値を溜めるか!
ゲーム初期だからかサクサクステータスが上がるしな!
「バットン、もう一度チャレンジじゃ!」
「駄目ットン」
が、ここでノーと断られてしまった。
「根を詰めすぎだット。今日はもうやめるっト」
どうやらミニゲームには一日当たりの回数プレイ上限があるようだ。
「それでは仕方ないのじゃ」
まぁしゃーないか。あんまりミニゲームが美味しすぎるとバランス崩壊しちゃうもんな。
「結構楽しかったな」
ゲームを終了した俺は、ヘッドセットを外して窓を開けると外気を吸い込む。
「運営に申請はするとして、それまではこのキャラで情報収集としゃれこむか。不運に幸運を呼び込めってな!」
子供の頃、不運で泣いてばかりだった俺に祖父ちゃんが言ってくれた励ましの言葉を呟きながら、俺は他のプレイヤー達の攻略情報を漁るのだった。
◆ILL攻略チャット◆
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キャラクター欄
マルシエル=リム=オーヴァロド
種族:魔族
性別:女
HP:10
MP:12
筋力:2
体力:1
魔力:2
素早さ:4→5
器用度:3→5
スキル
不屈の闘志:HPが0になった際、確率でHP10%で耐える。
アイデンティティ:魔王姫
王族特権:様々な最高位の特権が行使できる。
大いなる血統:ステータスバフが得られる。
最高級教育:ロイヤルスキルを習得できる。
デメリット
女性専用アイデンティティ:キャラクターが強制的に女性になる。
個性:のじゃロリお嬢様
甘えん坊:周りの反応が甘くなる。
教育係:お付きのNPCが付いてくる。
デメリット
口調:のじゃロリ言葉を使わないと一定時間ステータスダウン、一部スキル封印。
身だしなみ:高貴な装備以外装備不能、一定のクオリティの装飾が施された装備以外装着できない。
外見指定:強制的に外見が小柄な美少女になる。
バットン
マルシエルの教育係
さまざまなアドバイスをしてくれる。
王族として相応しくなるための教育を施してくれる。
戦闘には参加しない。
※※※(好感度不足で未開放)
経験値:54
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