第17話 暗殺者襲来
それは回復の為に宿屋に入った時に起きた。
ガタガタッ!
ベッドに入ろうとしたその時、突然窓から黒い人影が入って来たのである。
「なんじゃ!?」
「気を付けるット! 暗殺者だット!」
暗殺者!? 王位継承権云々のアレか!
「遂に来たのか!」
言葉もなく襲ってくる敵に対し、すぐさま金銀兎の双短剣を抜いて応戦する。
「「……!!」」
二人組の暗殺者が左右から同時に襲い掛かってくる。
「くっ!!」
危なかった。両手に武器を持っていたからなんとか受け流せた。
けど狭い部屋の中で挟まれるのはキツい!
「なら、各個撃破だ!」
俺は右側の暗殺者に狙いを絞り攻撃を叩き込む。
だが敵は防御に専念してこちらの攻撃をさばき切る。
「後ろだット!」
「うぉぉっ!」
バットンの警告にギリギリ背後からの攻撃を回避する。
「くっ、守りを固められると背後からの攻撃に無防備になるのじゃ」
全体攻撃をするか? いやこのゲームの変なリアリティを考えると部屋が滅茶苦茶になって弁償、最悪出入り禁止になる可能性もある。
「ならこれで!『スリープエッジ』!」
『ガード』
『20』
『ミス』
『ガード』
『20』
『睡眠状態』
「よし!」
デバフが聞いて突然倒れる暗殺者。
「っ!?」
突然仲間が倒れた事で戸惑う暗殺者。
「これで一対一なのじゃ! という事でお前にも『スリープエッジ』じゃ!」
攻撃を繰り返し、暗殺者を睡眠状態にすると、そのままクリティカルで止めを刺す。
「よし、もう一体も止めを刺すのじゃ」
こうして初めての暗殺者の襲撃を撃退した俺だったが、その後も襲撃は続いた。
「むう、日中でも襲ってくるのか!」
街中を歩いていて、ちょっと裏路地に入った瞬間に襲われた。
他にも夕方で薄暗い時や、フィールドで経験値稼ぎをしている時にも襲ってくる始末。
「どんどん襲撃のペースが早くなっておるのう」
不幸中の幸いなのは誰かと一緒に居る時は襲ってこない事か。
流石に敵も王位継承権を持った人間が襲われている事が表沙汰になると不味いのだろう。
◆
「それは大変だったねぇ」
ここ一週間の間に起きた襲撃の話をすると、レフリスが人事のように慰めてくる。
実際人ごとだけどな。いやNPCごとか。
「うむ、大変なのじゃ。という訳でレフリス、今日から一緒に寝てくれんか?」
「うん、いいよー……ってええ!?」
「「「「ええっ!?」」」」
何故かレフリスだけでなく周囲のプレイヤー達も一斉に立ち上がって驚く。
お前等また聞き耳スキルを使って盗み聞きしてたな。
「ななな何で!?」
「言ったじゃろ、人といるときは襲われんと。なら寝る時も誰かが一緒におれば襲われる可能性は低いとみた」
「そそそそうなんだ。で、でも私で良いの?」
「他に頼めそうな相手がおらんのじゃ。一度モヒカンに頼んでみたんじゃが『勘弁してくれ。俺を犯罪者にするつもりか』と断られてしまったんじゃよ」
「それは……そうだね」
「ギリ無罪」
「まぁ無罪」
「添い寝を求められた事がギルティ」
「「「「それはそう」」」」
流石にそれは酷くない?
正直女性プレイヤーであろうレフリスに頼むのは申し訳ないのだが、このゲームはセクシー要素を可能な限り削っているらしいので悪い事は出来ない仕様になっている。
だからシステムから警告メッセージなりが表示されなければ大丈夫なはずだ。
「そ、そういう事ならいいよ」
「助かるのじゃ」
ちなみにレフリスに断られた時の候補としてヒメキとガメッツが居たが、、ヒメキはなんというか暗殺者に襲われた時に名前由来のネタを披露する遊びをしそうな気がしたのでやめた。
ガメッツはガメッツで俺のアバターが寝ている間にスクショを取りまくって、知らないうちにグッズ化しそうだったのでこっちも論外。
「ではさっそく今夜から頼むぞ!」
「は、はい! よろしくお願いします!」
よろしくお願いするのはこっちなんだけどな。
◆
「うむ、やはり襲われずに済んだのじゃ!」
「よ、よかったね」
ゲーム内ではあるが清々しい朝を迎える俺に対し、レフリスはモジモジしている。
「ふへへ、至近距離で添い寝。まつ毛とか凄く長くて超可愛かった」
「おーい、何をブツブツ言っておるんじゃ? 冒険者ギルドに依頼を受けに行くぞー」
「あ、うん!」
が、宿を出た途端俺の両腕がガシリと掴まれる。
まさか暗殺者!? こんなタイミングで襲撃パターンが変わったのか!?
「冒険者ギルドに行く前に」
「歌とダンスの練習をしましょうか」
……暗殺者よりも怖い相手でした
「あー、コンサートあるんだったね。頑張ってねー」
「この襲撃者からも助けてはくれんのか!?」
「ごめんねー。私もマルスくんちゃんが踊ってるところ見たいから! あっ、ステージ衣装は任せて! さいっこうの衣装を用意しておくからね!」
「レフリス、お前もかっっっ!」
こうして俺は地獄のアイドルレッスンに連れていかれたのだった。
◆
「うう、どんどん無駄に歌とダンスが上手くなってゆくのじゃ」
中身はマッチョなオッサンなのに、可愛いポーズと声音でキュルルンしながら歌わないといけない俺の気持ちを100文字以内で説明せよ。
「などと馬鹿な事はさておき、討伐依頼でも受けてストレス解消するのじゃ」
ガタガタッ!!
そしてこんな時に限って襲ってくる暗殺者達。
「寧ろお主等がストレス解消の為に襲われろなのじゃーっ! ロイヤルスラーッシュ!!」
もう暗殺者のパターンには慣れたもの、こいつらは攻撃すると必ず片方が防御専念になるのでそれ以上のパワーで粉砕して戦うのが一番効率が良いという結論になった。
「ただ面倒くさいわりに経験値はショボイんじゃよなぁ」
ささっと暗殺者を倒して冒険者ギルドにやってくるとガメッツがニッコニコの笑顔で手を振ってくる。
凄く無視したいが下手に無視するとコンサートの演出を勝手に増やしたりするからなアイツ。
「なんの用じゃ」
「つれないですなぁ姫様」
「誰のせいだと思っとるんじゃ」
「まぁそう言わずに。今日はいいニュースを持ってきましたので」
あんまり期待できないが一応は聞くことにする。
「おめでとうございます! 建築資金が集まりました!」
「なんじゃと!? もう集まったのか!?」
おいおい、まだ一週間くらいしか経ってないぞ!? それなのにもう500万モール集まったのか!?
「ええ! やはりチケット制にして正解でしたな! 特にグッズ付きチケットは飛ぶように売れましたよ!」
「グッズ!? わらわそんな販売方法聞いとらんのじゃが!?」
「おでかけマルスくんちゃんぬいぐるみ付きチケットは大盛況でしたよ!」
「おでかけマルスくんちゃん!?」
「いつでも冒険のお供にキーホルダー付きの姫様の人形です」
そんな推しグッズみたいに!?
「更にチケットを入手できなかった客、遠方のエリアに居てどうしても見に来れない客の為に魔法通信社を買収してライブ配信チケットを販売したのが大きかったですよ」
「なんじゃライブ配信ってーーーっ!?」
「姫様の事をSNS、いや旅人の噂で聞いた人族や獣族といった他種族エリアにいる冒険者達からも見たいという要望が多くてですな。ですがまだ他の種族の暮らす大陸へのルートは解放されていません。なら配信してしまえばいいだろうと各種族代表の商人達と協議して決定したのです」
「全部初耳なんじゃけどーーーっ!?」
勝手に俺をネタにした謎の組合が出来てるんだがーっ!?
「その分魔法通信社にはかなりマージンを支払う事になりましたが、それだけの出費をした甲斐がありました! 配信チケットとグッズ売り上げでウッハウハですよ!」
「人を食い物にするなーっ!」
「まぁまぁ、そう言わずに。勿論主役である姫様にも分け前は出しますのです。こんなものでどうですかな?」
「お主、金で人が何でも言う事を聞くと……ひゃっ!?」
そこに記載されていた数字はゼロが6つ。
「くっくっくっ、王位継承権争いとなれば予算は多い程良いでしょう? 勿論この金額は屋敷の建築費用を抜いた額です。正直我々も驚いていますよ。いくらゲームの中とはいえ、これだけの額が動くなんてねぇ」
ニチャァと金に濁った眼で恍惚の表情を浮かべるガメッツ。
目も当てられないほどに汚いおっさんの恍惚顔を見せられ、あまりの額に揺らいだ心が冷静さを取り戻す。
人間あんな顔をするようになったらおしまいだな。
「ところで魔法通信社というのはなんじゃ?」
聞く感じ新聞社かテレビ局みたいな感じだが。
「ああ魔法通信社というのはマジックアイテムを使った遠距離との通信手段を取り扱う会社ですよ。金は余分にかかりますが映像も送れます。これを利用して今回のライブを企画したわけです」
「ほほう、そんな会社があったのか」
「今はまだ配信機材が見つからなくて運営の提供するNPCの会社に頼るしかないが、いずれ必ず配信用の携帯マジックアイテムが実装される筈。その時こそこのライブのノウハウを活かして俺の商店が業界を牛耳ってやるぜ!」
わー、すごーい。欲望が垂れ流し過ぎてロールプレイなのか本音なのか全くわからん。
「あー、まぁ好きにするがよいわ。屋敷さえちゃんと作ってくれるならの」
これ以上関わると色々良くない気がしたのでガメッツがトリップしている隙にそっとその場を離れる事にする。
しかし配信ねぇ。まぁリアルの配信者もゲーム配信とかするし、ILLでもリアルの利益を考慮して本当に配信可能になるのかもな。
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