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純粋に空想世界を楽しみたい!  作者: 倉科ユウ
6/9

みかんとりんごとBL本と

 美咲の空想によって作られたこのリアル人生ゲームの世界。


 高校生の夏休みがテーマのこの人生ゲームで一ターン目、俺は少ないながらもお金を手に入れ、そこそこ順調な出だしを切ってスタートした。


 美咲の作った世界ということもあり、どうせバカなもんだと思い込んでいたせいもあってかその一ターン目の拍子抜けするほどの普通さに少し驚きつつ、出会って間もないくせに美咲のことを馬鹿にしすぎていたなと少し反省していた。だが、


 まともだったのはその一ターンだけだった。


 二ターン目にして突如現れたお姫様にみかんを貰うという謎のイベントを経、三ターン目からこの世界は怒涛のボケをかまし始めた。




『旅行中、宿で関係者以外立ち入り禁止の部屋の鍵を手に入れた! 二百万円獲得!!』


「窃盗じゃねえかよ!」


 マスが俺を窃盗罪の罪に陥れようとして来たり、


『おめでとうございます!! 一千万円札を手に入れた!!』


「いや、それ明らかに偽札!!」


 通貨偽造の罪をかぶせようともしてきた。


 また、


『あ、しくった。服のサイズ間違って買ってしまった』


「だからどうしたっっ!!」


 ついにはお金もなにも関係ないどうでもいいことまでつぶやき始め、もはや人生ゲームと呼ぶべきかどうか分からなくなってきさえもした。



 その後も俺はマスが繰り出すボケに振り回されながらもなんとか現在七十二マス目まで来た。


 前を見るとあと六マスくらい先にはゴールが見える。


 現在俺の所持金は二百九十万だ。たまたま運が悪いだけなのか、そもそもお金を手に入れることのできるマスが少ないのかどうかはわからないが、ほとんどボケたマスにしか止まらなかったのだ。

 

 ちなみに俺は他の奴らが今どうなっているのかほとんどわからない。

 

 ただ明確にわかることは俺が一番先頭にいるということだ。

 

 一ターン目先頭だった白奈はあれからも高い数を出し続けてずっと先頭を言っていたのだが、四十マス目あたりで『念願の週休七日生活だ!』というマスに止まって七回休みになってしまっていた。


 それでも俺が白奈を抜かすとき、あと三回休みというところだったのですぐ後ろにいるのだろう。


 なるみは二ターン目に



「我こそは時空を操りし者なり! テレポーションッッ!!」



 とか言って、一ターン目で手に入れたテレポートのカードを使いどこかへ旅立っていったっきり姿を見てない。


 美咲はというと二ターン目から一にこよなく愛され続けていた。


「なんで一しか出ないのよー!!」


 と喚く声が三ターンほど前に遠くから聞こえたのできっとまだ最初の方にいることだろう。


 柚葉は……ん? ほんとにどこら辺にいるのだろう。


 確か七ターン目くらいまではほぼ同じくらいのところにいたんだが、八ターン目にカードマスに止まってから妙に俺との差が開いていった気がする。

 

 今までのことを思い返していると、ボワンと俺の目の前にルーレットが現れる。 


 ルーレットを回すと八で止まった。


 普通はゴール直前に決算日とか、ゴールするとルーレットを回すたびにお金をもらえるとかあるのだけれど、どうやらここではそのようなものはないらしい。


 誰が最初にゴールしても順位は関係ないようだ。


 一人ゴールに着き、暇をしていると二ターン後に白奈がゴールにやって来た。


「あ、先輩。もうゴールしてたんですね。あそこで七回休みなどに引っかからなければとっくに私がゴールしていたはずなのに………」

「まあまあ。なんか順位は関係ないみたいだからいいじゃんか」


 地味に一番の座を狙っていたらしい白奈はそう言って頬を膨らませた。


「それより他の奴らはどうなってるか知らないか?」

「いいえ。わかりません。私が七回休みの時ですら、先輩以外に私を抜かした人はいませんでしたから」


 ……どうやら、まだまだ時間がかかるようだ。


 俺と白奈は二人で雑談しながら待っていると何ターンもするうちになるみと、そして意外に早くに美咲がゴールに着いた。


 よく見るとなるみと美咲はなんだか大きな風呂敷を担いでいる。


 なるみはなんだか複雑そうな顔をして俺のそばに寄って来た。


「夕希先輩。なんだか私、お金ではなくりんごをいっぱい貰ったのですが………」


 そう言って風呂敷を開けると中には何十個ものりんごが入っていた。


「ああ…………そ、それは残念だったな」


 …………なるみが複雑そうな顔をしている理由がわかった。


「なっ! 負けたわなるみ………私はみかんよ………」


 隣で美咲が同じように風呂敷の中に納められていたたくさんのみかんを見せ、がっくりしながら言ってた。


「わ、私は勝ったのですか? よ、喜んでいいのですか?」

「いや、お前らはどっちも負けだ」


 俺は冷静にツッコミを入れる。


 と、そこへ


「夕希センパーイ! 大量です! 大量!」


 柚葉が走ってこちらへやって来た。これでようやく全員がゴールしたことになる。


「先輩! 私夢の国に来た気分でしたよ。たくさん手に入ったんで先輩にも分けてあげますね」


 そう言って背負っている風呂敷の中に手を突っ込む柚葉。


 そんなにお金が手に入ったのだろうか。まあ勝敗は特にこだわってないが、くれるというのなら貰っておこうかな。


 「はいどうぞ! 大切にしてくださいね?」



 と差し出してきたのは一冊の薄い本。BL本だ。



「バカかっ!!」


 投げ捨てた。


「ああ……! 私の宝が……!!」


 目に涙を浮かべ飛んで行ったBL本を惜しむ柚葉。


 そんな感じで一応このゲームをクリアしたのだが………


 だめだ。まともな勝負にならなかった。

 そもそもまともなゲームじゃなかったが……


 


 あと、一応今回の順位をつけてみた。



 一位 白奈(四百万円)


 二位 俺(二百九十万円)


 三位 なるみ(りんご八十七個)


 三位 美咲(みかん八十七個) 


 三位 柚葉(BL本四十一冊)




 ………………………これが人生ゲームではないことは確かになった。






 

 







 

 

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