表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
純粋に空想世界を楽しみたい!  作者: 倉科ユウ
5/9

リアル人生ゲーム~高校生の夏休み~

「わ~すごい絶景ですね」

「これは見事です」

「綺麗……」


 俺に続いて美咲の作った空想世界に次々とやって来た他のみんなは、目の前に広がる色とりどりの広大な花畑を見て口々に感想をこぼしていた。


「で、ここはなんなんだ?」


 花畑はきれいだがそれに見とれてばかりいても仕方がない。

 俺は美咲にこの世界について尋ねる。


「フフフ………あれを見なさい!」


 そう言って美咲は俺たちの後ろを指さした。


「あれは……………!」


 先ほどあたり一面花畑といったがそれは俺たちがこの世界にやってきてすぐの目の前だけの話で、実際は本当の意味で一面ではなかった。


 なぜ今まで気づかなかったのだろう。俺たちの背後には街が広がっていた。

 大きなビルに住宅街、商店街に田畑まで。

 そしてこの花畑から道が―――――いや、マスが続いていた。


「なるほど! 人生ゲームですね!」


 この光景を見た柚葉はこの世界の趣旨を理解したようだ。


「そう! 私の考えたこの世界はリアル人生ゲームの世界よ! この街の中をルーレットを回して出た目の数だけ進んでいくの。ちゃんとマスにはイベントがあるし、お金も回るわ」


 リアル人生ゲームか。確かにファンタジアを利用しないとなかなか現実世界ではできない遊びだな。


 はじめは美咲の作る世界と聞いて不安で仕方なかったが………なんだ、楽しそうじゃないか。


「あ、あの………。私人生ゲームをやったことないんですが、ルールを教えてもらってもいいですか?」

 白奈が片手をあげてそう聞いてきた。


「人生ゲームとは進め方はすごろくと同じです。毎ターン各プレイヤーが順番に、さいころの代わりにルーレットを回して出た目の数だけ進むんです。すごろくと違う点は、マスに書かれたイベントによってお金が獲得したり失ったりする点です。そして勝利条件は最初にゴールすることではなく最終的にほかのプレイヤーよりお金をより多く持っていることです。他の人よりも多くのお金を手に入れるためにはカードなどのアイテムを有効利用していく必要があります。」


 そんな白奈になるみはざっとルールを説明する。

 その説明で理解できるのか心配になったが、


「なるほど。運と戦略がカギとなるゲームなんですね」


 どうやら白奈はその説明で理解できたようである。


「この世界は高校生の夏休みっていう設定で私たちは高校生という立場とその夏休みという短い期間の中でどれだけお金を稼ぐことができるか競うの。」


 そして美咲は俺たちにこのゲームの趣旨を説明した。


 人生ゲームと称するわりに規模が小さいなと感じながらも遊ぶ分には十分に楽しめるだろう。

 ちなみに最初の所持金はそういう設定というのもあってか一万円ということらしい。


「それじゃあまずは順番を決めましょう!」


 美咲がそう言うと同時にボワンと何もないところから目の前に一から十の数字が書かれた大きなルーレットが飛び出してきた。

 俺たちは順番にそのルーレットを回した結果、俺、白奈、美咲、なるみ、柚葉の順でゲームを進めることに決まった。

 

「まずは俺からか……」

 俺は目の前に現れたルーレットを回すと針は四と書かれた位置で止まった。


 この人生ゲームではマス間の移動はすべて徒歩移動というルールなので俺は四マス先に向かって歩き始める。


 四マス目まで来ると地面が光りはじめ文字が浮かび上がってきた。

 なるほど。止まってみるまでそのマスにどんなイベントが書かれているのかわからない仕様になっているらしい。


「なになに………日給のいいバイトを見つけた。四万円獲得……か。出だしは順調だな」


 文字と一緒に出てきた一万円札四枚を財布の中に納めながらひとまず俺は満足する。


 次は白奈の番か。


 まだこの距離からだと全然見えるスタート位置を振り返ってみるとちょうど白奈はルーレットを回し終えたようだった。


 白奈はどんどん俺のいる位置まで歩いて来たと思ったら、


「お先に失礼します」


 と、俺を通り越して六マス先で足を止めた。


 どうやら最初から十を出したようだ。


 しかし柚葉が止まったマスでも俺と同じように床が光ったあと、白奈は少し落ち込んでいるようだった。

 どうやら六マス先はあまりいいマスではないらしい。


「さあ! 次は私の番ね! 見てなさい、すごいマスに止まって見せるんだから!」


 意気揚々とした美咲の声がここまで届く。


 まあこういうやつに限って、



「なんでよ! 私わざと車を壊したわけじゃないのにー!」



 こうなる。


 俺の二つ前のマスに止まった美咲はそこで車を壊して十万円の借金を背負っていた。


 高校生の身分だと稼げるお金に対してこういう風に借金は多くなることがあるので注意しなくちゃならないな………


 美咲の番が終わると次はなるみがルーレットを回し、美咲と俺を抜かして六マス目に止まった。


 同じくマスが光った後、


「おお! こ、これはッ!」


 と、なるみはとてもうれしそうな声を上げる。


 なにが起こったんだろう? すごい大金を手に入れたのか?


「どうしたんだー?」


 俺は気になり、二マス先のなるみに聞いてみた。二マスならまだ全然声が届く。


「くふふふ………先輩、ついに私は瞬間移動の能力を手に入れたみたいです……」


 そう言いながら、手を目の前にかざし振り返ってくるなるみ。その手の指に一枚のカードを挟んでいる。

 なるほど。アイテムか……よくわからないが、あれはある特定の場所にテレポートできる類のものっぽいな。


「はぁ……美咲先輩とおんなじマスですか………さっきの叫びを聞く限りロクなマスじゃなさそうですね………」

 

 カードについて考えていると、いつの間にか柚葉がスタートしていた。


 残念なことに出た目は二――――美咲と同じマスに止まったようだ。


だが、



「ってあれ? 美咲先輩のとはなんだか違うイベントみたいですね。えーっと、なになに...おばあちゃん家の押入れの奥から見つけた古い切手を売ったら五百万円って五百万?! 美咲先輩見てください。すごいですよって、わわ、ちょ、ちょっとやめてください! そんなに揺らさないでください!!」



「わあああああ! なんで私とおんなじマスに止まったのに柚葉は金持ちになって私は借金背負わされるのよお!」


 美咲が柚葉の肩を掴んでぶんぶんと揺さぶりながら喚ている。


 どうやらマスに書かれるイベントは毎ターン変化するらしい。たとえ同じマスに止まっても美咲と柚葉みたいに所持金がマイナスになったり、プラスになったりするわけか………


 このゲームについていろいろなことがわかってきた。

 一周して再び俺の前にはルーレットが現れた。


 ルーレットを回し針がさした数字を見る。

「おっ。十か」

 十マス進んだら、住宅街に出た。

 家が立ち並び、後ろを振り返ってもほかの部員たちの姿は見えない。


「さて、どんなイベントが起こるか………」


 マスが光り文字が浮かび出る。


『目の前で交通事故に遭いそうだった女性を助ける。なんとその女性は日本に旅行に来ていたある国のお姫様だった!』


 ボワンと目の前に突如、がたいのいいお供を両脇に従えた美女が現れる。


 おっ? いいぞ。これは二ターン目からして一気にお金持ちになれるんじゃないだろうか? とんだラッキーマスに止まったものだな!


「私の命を救ってくださりありがとうございます。あなたにはなんてお礼を言ったらいいものか……こんなものでは私の命の恩人に対しては少ないかもしれませんがどうぞ受け取ってください」


 お姫様はそう言って俺に手を差し出してくる。

 きっとこの手の中には億単位の大金の書かれた小切手か何かだろう。そうじゃなくともきっとお宝に違いない。


 俺はそう多大な期待をしながら頭を下げ、手を器のようにして差し伸ばしてきたお姫様の手の下で褒美をもらう準備をする。

 

 お姫様は俺の手のひらにお宝を乗せた――――――


 ぽてっ


 乗せた、のだ、が……………


 なんだろうこの感じ、丸くて、軽いながらもずっしりとした質量感。全体的にざらざらしていて思い切り握ると潰れてしまいそうな………


 どこかで触ったことのあるようなそれを、頭をあげ見てみると



「……………………………………………………」


 手の上には、それはそれは艶のあるみかんが置かれていた。


「私が日本で買った最高級のみかんです。このたびは本当にありがとうございました」

 それでは――――とお姫様は消えていった。



 俺はお姫様からもらったミみかんを強く握り―――――――――― 


「いらねえよ!!」

 

 遥か遠方に投げ捨てた。



 



 

 



 





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ