第九十四話 レオネルとルカの、奇妙な夜番
ルカの交渉は、想定外の展開になった。
「俺はもうお前たちと組まない。だが、今夜一晩だけ待ってくれ。明日の朝、首領と直接話をする機会をくれ」
それだけ言って、構成員たちを引かせた。返事は夜の十時頃に来た。「明朝、許可する」。
私たちは廃都市の端の建物に落ち着いた。当直を二人ずつで回すことにした。最初の番は、レオネルとルカだった。
この旅の中で最も対極にいた二人だ。正義と切断。騎士道と虚無。でも今、二人はここにいる。
他の全員が横になった。疲れていたが、なかなか眠れなかった。
眠れないままでいると、ウルが毛布を持って私の横に来た。
「眠れない?」
「うん」
「じゃあ、ここにいる」
ウルが私の横に腰を下ろして、毛布を私の肩にかけた。それだけで、部屋が少し温かくなった気がした。
夜中の三時頃、外から二人の声が聞こえた。ルカとレオネルだ。壁が薄くて届いてきた。
嫌いだったこと。でも今は違うこと。傷ついた者同士だということ。正論より正直な方が人に届くこと。ルカが「あいつ、色んな人間を変えてるな」と笑ったこと。
(そうかな、と思った。変えているのではなく、みんな自分で変わっている。私はただ、そこにいるだけだ)
ウルが、いつの間にか眠っていた。肩に頭を乗せて、すうすうと息をしている。重い。でも温かい。そのまま動かさずにいた。
朝、ウルが目を覚ました時、少し慌てた顔をした。
「あっ、寝てた。ごめん、重かったでしょ」
「重かった」
「それは言わなくていい!」
「でも温かかった」
ウルが少し黙って、それから「よかった」と言った。その顔が、照れているようで、嬉しそうだった。
アルが起き出してきて、二人を見て言った。「おはようございます。……また主様の横で寝ていたんですか、ウル」
「たまたま」
「毎回たまたまなんですね」
「うるさい」
外が白んでいた。今日が始まろうとしていた。




