第八十九話 「ほどき屋」がルカを利用していた理由
ルカがほどき屋との関係について話したのは、崖の上に出た後だった。
空が明るくなっていた。濡れた岩が光を弾いて、足元がきらきらしている。ルカが崖の縁に腰を下ろして足をぶらぶらさせながら話した。以前の飄々とした動作に近い。でも今日のそれは、自分を落ち着かせようとしている動作だ。
ほどき屋と半年前に接触したこと。互いに利用し合う関係だと思っていたこと。でも実際には、ルカが各地で切断してきた魔力の供給路は、知らずにほどき屋の計画を加速させていたこと。
「知らなかったことが、俺の落ち度だ。もっとよく確認するべきだった。……叔父さんのことを恨むなら、俺も同じことをしたんだ。誰かの計画の一部になりながら、自分は正しいと思い込んでいた」
レオネルが「感情の墓場まで、案内できるか」と問うた。ルカが「できる。でも覚悟して行け。全員が自分の一番痛いところを見せられる」と言った。
「それでも行く」
「知ってた」
ルカが立ち上がった。「船に乗るか?」とウルが言った。声がわずかに震えていたが、真っ直ぐに言った。
ルカがウルを見た。一年ぶりに、正面から見た。
「……乗る。少しだけな」
砂浜を歩きながら、ウルが私の隣に来た。ルカが先を歩いているのを見ながら、小声で言った。
「ルカって、変わったと思う?」
「変わったと思う」
「どこが?」
「逃げなかったとこ」
ウルが少し黙ってから、「そっか」と言った。
「僕も少し変わったよ。前だったら、ルカが主様の近くにいるのが嫌で仕方なかったと思う。今は……一緒に帰れたらいいなって思う」
「一緒に、ね」
「うん。仲間として」
ウルの言葉が、潮風の中に溶けていった。船が砂浜で待っていた。ルカが乗り込む時、少しだけためらった。でも乗った。それだけで十分だった。




