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第八十七話 ルカが「切りたかったもの」



ルカが話し始めたのは、雨が少し弱まってからだった。

岩陰の入り口近くに立ったルカが、天井を見上げながら語った。

叔父のハサミがどこで欠けたか。切りたくなかったのに切るしかなかった夜に、欠けた。叔父の葛藤と諦めが、ルカの核にある。叔父を恨んでいるのかもしれない。恨んでいることを認められなくて、だから切り続けてきた。

後ろで、ウルが息を呑む音がした。アルが、手帳を持つ手を膝の上に下ろした。

「恨んでいいと思う」

「おじさんも完璧じゃなかった。でも、おじさんはあなたのことを知っていた。冊子に、叔父さんの息子たちへ、って書いてあった」

ルカの目が微かに揺れた。「……知ってる。読んだ。捨てようとして、捨てられなかった」

ルカは目を閉じた。雨の音が続いていた。

岩陰の中が、しばらく静かだった。雨がまた少し強くなった。ウルが私の肩に、そっと頭を寄せてきた。今日のウルは、しゃべらなかった。ただそこにいた。

レオネルが、岩陰の入り口から外の雨を見ながら言った。

「……ルカ。お前が恨む気持ちは本物だ。だが、お前が今ここで話してくれていることも、本物だ」

ルカが少し間を置いてから言った。「……おじさんみたいなことを言うな、あんたも」

「そうか。私は年を取ったということかもしれん」

レオネルが淡々と言った。ノアが「実際おじさんだろ」と言って、全員が少し空気を抜いた。

ルカが、初めて、この岩陰で小さく笑った。



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