表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
84/110

第八十四話 ノアの「深淵」で組織の術式を解析する


港町から二日ほど進んだところで、ほどき屋の仕掛けた罠に引っかかった。

朝の霧の中に浮かぶ無人の小島に近づいた時だ。島の岩陰から複数の魔導師が姿を現し、魔力吸収の術式が網のように船を包んだ。ウルの炎が出なくなった。アルの術式が空回りする。

ノアが甲板に出てきた。

「……これ、深淵魔法と構造が似てる。俺が誰かの痛みを飲み込む時と、同じ種類の力の動き方をしてる」

「解析できる?」「やってみる」

ノアが甲板に膝をついた。深淵魔法が静かに発動した。黒い影が術式の網に向かって伸び、触れながら構造を読み解いていく。レオネルが剣を抜いて魔導師との間に立ち、ウルが炎の出ない拳を握って構えた。

三分ほど経って、ノアが目を開けた。「供給源が一箇所だけある。あの岩の裏に魔導石が埋めてある」

レオネルが即座に飛び込んだ。海に入り、岩場を泳いで回り込む。魔導師たちが動いたが、ウルとノアが足止めした。

二分後、爆発音がした。術式が解けた。ウルの炎が燃え上がり、アルの結界が展開された。魔導師たちは霧の中に消えていった。

甲板に戻ったレオネルは、右腕に浅い切り傷を作っていた。

「大事ない」と言って自分で布を巻こうとしたが、私は「貸してください」と言って手を取った。

「結衣殿、私は大丈夫だ」

「大丈夫でも手当てする。動かないで」

レオネルが観念したように腕を差し出した。傷を洗って薬草を当てながら、私は針と糸で布を固定した。

ウルが横から覗き込んだ。

「レオネルさん、痛い?」

「……これくらい何でもない」

「でも顔が少し引きつってる」

「引きつっていない」

「してる」

アルが「ウル、邪魔しないでください」と言って、ウルを退かした。ノアが壁に背を預けて腕を組んだまま、でも視線はちゃんとこちらを向いていた。全員に見守られながらの手当ては、レオネルにとって居心地が悪そうだったが、それでも腕を引かなかった。

「終わりました」

「……助かった」

レオネルが素っ気なく言った。でも、礼を言った。それで十分だ。

ノアが「可能性と現実は違う」という言葉を言った後、レオネルが珍しく声を出して笑った。ノアが口の端を上げた。ウルが「あ、ノアが笑った!」と叫んで、アルが「うるさいですよ」と返した。

霧が晴れていく。空が青くなっていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ