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第八十一話 組織の名前と目的



捕縛したのは、偶然だった。

遺跡を出て三日が経った夜のことだ。霧の中に小型の船が浮かんでいるのをウルが見つけた。灯りを消して漂流しているような状態で、最初は難破船かと思った。しかし近づいてみると、甲板に複数の人の気配がある。静かにしているのは、わざとだ。

レオネルが判断を早めた。私たちの船を横付けにして乗り移った。相手側の船に乗っていたのは、三人だった。鎖と天秤の意匠の法衣を着た人間だ。あの組織の人間だ。

三人はウルとレオネルに瞬く間に取り押さえられた。船室に連れ込んで、レオネルが質問し、アルが記録を取り、ノアが後ろで腕を組んで立った。ノアがそこにいるだけで、相手の口が軽くなる。彼の赤い瞳の前では、たいていの人間が早めに話し始める。

三人のうち、一番若い男が先に口を割った。組織の名は「ほどき屋」という。

「感情という名の汚染から、世界を浄化する。感情があるから、人は傷つく。感情があるから、人は誰かを傷つける。感情を取り除けば、誰も傷つかない」

男は一本調子の声で言った。信念のある声だ。本当にそう信じて行動しているのだと分かる声だ。

私は答えられなかった。その問いの根っこに、本物の痛みがあることが分かったからだ。

尋問が終わった後、三人を去らせた。船室に残って、しばらく窓の外を見ていた。

そこへ、ウルが来た。

「主様、ぼーっとしてる」

「考えてた。……あの人の言葉」

「感情がなければ傷つかない、ってやつ?」

「うん」

ウルが私の隣に座って、少し考えた。

「でも僕、感情があるから主様のこと好きだと思う。感情がなかったら、好きって気持ちもないんじゃないかな」

「そうね」

「だから僕は感情を取り除きたくない。傷つくのは嫌だけど、好きでいたいから」

ウルが私の肩に頭を乗せた。いつもの、子犬みたいな甘え方だ。

「主様はどう? 感情、取り除きたい?」

「取り除きたくない。あなたたちのことが好きだから」

ウルが少し黙った後で、「それ、もう一回言って」と言った。

「一回で十分」

「えー」

そこへレオネルが来て、「何をやっているんだ」と言った。

「甘やかしてもらってます」とウルが答えた。レオネルが一瞬だけ羨ましそうな顔をして、それをすぐに消した。私はちゃんと見ていた。

「……結衣殿、疲れているだろう。早めに休め」

レオネルが素っ気なく言って、自分の当直に戻った。その背中が、少し照れているように見えた。

銀の針が、橙色に静かに光っていた。



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