第七十二話 レオネルの「反逆」が報われる日
島を出て三日目の昼過ぎ、一羽の鳥が船に降りてきた。
羽の色が金属的な銀色で、嘴の先から淡い魔力の光が漏れている。王都の伝書鳥だ。
レオネルが筒から紙片を取り出して読み始めた瞬間から、その表情が変わった。険しくなったのではなく、緩んだ。長い時間をかけて固めてきた何かが、静かに解けていくような顔だ。
王都評議会からの通達だった。レオネルの反逆告発の取り下げと、名誉の回復。新設される王都外交使節団への参加要請。
ウルが「やった!」と声を上げた。アルが静かに「よかった」と言った。ノアが「やっと、か」と呟いた。
レオネルは紙片を丁寧に折り畳んで、胸のポケットにしまった。
「外交使節団への参加は断ります。今の私にはこの旅の方が先にある」
「後悔しない?」
「しない。国が何であるかよりも、今ここで何をするかの方が重い」
その夕方、夕食が終わった後でウルがレオネルに近づいた。
「レオネルさん、よかったね」
「ああ」
「なんか、嬉しそうじゃないね」
「嬉しくないわけではない。ただ、思ったより静かな気持ちだ」
「どういう意味?」
レオネルが少し考えてから言った。
「名誉を回復してほしかった頃の自分が、もうここにいないから、かもしれない。今の私には、あの評議会の判断よりも、この旅の中での出来事の方がずっと重い」
ウルがしばらく黙ってから「それって、すごくいいと思う」と言った。
「そうか」
「うん。昔の傷より今の方が大事って思える人、かっこいいと思う」
レオネルが、珍しく少し笑った。ウルらしい言い方だ、という顔だった。
私はその場面を少し離れて見ていた。アルが私の隣に来て、小声で言った。
「ウルは、ああいうことを真っ直ぐ言えますね」
「あなたには言えない?」
「……言えますが、タイミングを選びすぎてしまいます」
「今度から選ばなくていいよ」
アルが少し間を置いて、「考えてみます」と言った。その顔が、少し柔らかかった。




