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第五十三話:レオネルの葛藤と、再会の「凶刃」


 王宮前広場。かつて「鉄の聖女」を打ち破ったその場所で、レオネルは信じられない光景を目にしていた。

「……ルカ、貴公。なぜそこにいる」

 新騎士団の若手たちを退け、瓦礫の上に座り込んでいる男。

 一年前に風のように去っていった、あの不敵なハサミ使いだ。けれど、今のルカが纏っている空気は、春の風などではない。すべてを拒絶し、切り裂くための「絶対的な断絶」の気配。

「あはは、レオ。相変わらず堅苦しい鎧着てるんだね。……そんなもの、僕のハサミにかかれば紙クズ同然なのに」

 ルカがパチン、とハサミを鳴らす。その瞬間、レオネルが展開していた防御結界が、紙を断つように音もなく上下に分断された。

「ルカ! どうして……!」

 駆けつけた私の声に、ルカがゆっくりと視線を向ける。その赤い瞳は、熱を失っていた。

「ねえ、結衣。君はこの一年、必死にこの街を『縫い直して』きたよね。でも、見てよ。王宮の裏ではまた利権争いが始まって、ブラック工房の残党は名前を変えて地下に潜ってる。……いくら縫っても、中身が腐ってちゃ意味ないんだよ」

「だからって、壊していい理由にはならないわ!」

「壊すんじゃない。――『切り離す』んだ」

 ルカが立ち上がり、ハサミを私に向けた。

「ジョンのじいさんは、僕に言ったんだ。『もし世界が修復不能な結び目になったら、その時は迷わず切り落とせ』ってね。……今の世界は、僕から見ればただの巨大なゴミの山だ」

 ルカの背後に、先日の仮面の集団が現れる。彼らはルカの協力者ではなく、ルカに「利用されている駒」に過ぎないのだと、その力関係で理解できた。

「君が縫い合わせるスピードより、僕が切り刻むスピードの方が早い。……どっちが正しいか、賭けてみる?」

 かつての仲間が、今、最大の障壁として立ちはだかる。

 ルカの持つハサミは、私が縫い合わせた「絆」さえも、容易く切り裂こうとしていた。


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