表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
109/110

第百九話 「第三の術式」の残滓が示す場所



王都に戻って十日目の夜、銀の針が光った。

深夜に目が覚めて、なんとなく針を見ると、橙色の中に青い光が混じっていた。嵐の夜に刻まれた海の記憶と、遺跡で感じた第三の術式の残滓が、重なるように共鳴していた。

(何かを指している)

地図を広げて、二つの記憶が示す方向を探した。北東の方角、境界の海の向こう。そこに、叔父の旅の最終目的地があるのかもしれない。

翌朝の朝食の時間に、地図を広げた。

「見てほしいものがある」

全員が集まった。針の光が示す場所を説明した。

「また旅ですか」とウルが言った。嫌そうな顔ではなかった。ただ確認しているだけの顔だった。

「叔父の旅の続きを辿るなら、そこへ行かないといけないかもしれない。でも、今すぐじゃない。準備が要る」

「準備って何が必要?」

「縫いながら織ることを、もっと安定してできるようになること。……島のカナとまた会う必要があるかもしれない」

「カナ!」とウルが顔を輝かせた。「また島に行けるの?」

「行くかもしれない、という話」

「でも行く可能性がある」

「ある」

「やった」

アルが「騒がないでください」と言い、でも手帳を取り出して何かを書き始めた。おそらく、次の旅の準備リストを作り始めている。

ノアが「俺も折り紙、上手くなってから行きたい」と言った。「カナに見せるの?」と聞くと、「……まあ」と言って目を逸らした。

レオネルが地図を見ながら言った。「この場所は、前回の遺跡よりさらに遠い」

「そうですね」

「では、今度こそちゃんと船の装備を整えた方がいい。前回は境界の海に不意を突かれた」

「レオネルさん、もう次の準備をしてる」

「当然だ。準備なしに出ることが、どれだけ危険か、この旅で学んだ」

ウルが「レオネルさん、旅が好きになった?」と聞いた。

レオネルが少し間を置いた。

「……嫌いではなくなった」

「それって好きってこと」

「嫌いではない、と言っている」

「同じだよ」

「違う」

ウルとレオネルが言い合いを始めた。アルが手帳から顔を上げずに「ウル、準備リストを手伝ってください」と言った。ウルが「えー今?」と言いながら椅子を引いてアルの隣に行った。

私は銀の針を手の中に収めた。青い光が、まだ静かに灯っていた。次の旅の予感が、そこにある。でも今はまだ、ここにいる。ここで、この仲間たちと、人形を直して、お茶を飲んで、笑っている。

それが今の私の、全部だった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ