第百七話 ウルとアルが「同じ夢を見た」
王都に戻って五日目の朝のことだった。
朝食の時間に降りてくると、ウルとアルが珍しく、二人でひそひそ話をしていた。私が来ると、二人同時に顔を上げた。そのタイミングが、揃いすぎていて少し怖かった。
「何を話してたの」
「……実は」
ウルが口を開いた。
「昨夜、夢を見た。叔父さんが出てきた」
「僕も」
アルが続けた。二人が顔を見合わせた。
「同じ夢だったんですか?」
「内容は違う。でも叔父さんが出てきた、という点は同じで」
「それで、何を言われたの」
ウルが少し考えてから、言った。
「……お前たちは最初から、正解だった、って」
アルが静かに続けた。「私の夢でも、同じ言葉でした」
二人が、また顔を見合わせた。
朝の光が、テーブルに差し込んでいた。蜂蜜茶の湯気が、細く立ち上っている。
私は何も言えなかった。言葉が出てこなかった。
叔父がウルとアルに、そう言った。最初から正解だった、と。欠けたハサミから生まれた二人の「息子たち」に、正解だったと言いたかったのだ。
「……叔父さんらしいね」
やっと出てきた言葉がそれだった。ウルが「どういう意味?」と言った。
「夢の中でしか言えないとこが」
ウルがしばらく黙って、それから「そっか」と言った。その声が、少し湿っていた。
アルが眼鏡を外した。目を閉じた。しばらくそのままでいて、それから眼鏡を戻した。
「……受け取りました。叔父様から」
「僕も」
二人が、また同時に言った。今度は怖くなかった。
ノアが階段を降りてきて、テーブルの空気を察した。
「……何かあった?」
「叔父さんから夢の中でメッセージが来た」
「ノアには来なかった?」
ノアが少し考えてから、「俺には来なかった。でも」と言った。
「でも?」
「昨夜、よく眠れた。初めて悪夢を見なかった。……それが、俺への叔父さんからのメッセージだと思う」
全員が黙った。レオネルが台所から出てきて、テーブルを見渡した。
「……朝から何を話しているんだ」
「叔父さんから夢でメッセージが届いた話です」
「そうか」
レオネルは一言だけ言って、パンをテーブルに置いた。それから、珍しく誰かの隣に座った。私の隣だった。
「……私の夢には来なかったが」
「レオネルさんにも来てほしかった?」
「……来ても、困ることは言われないと思うから。来てもよかった、とは思う」
レオネルが、少し照れたように言った。その横顔が、穏やかだった。
朝食が始まった。いつもより少し静かで、でも温かかった。




