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竜魔伝説  作者: 融合
復讐編
332/345

331話 二人のユーラシア・スレイロット

「ようやく目が合ったな」

 男がフードを外し、顔を露わにする。

 肩下まで伸びる長髪は、額の中央から綺麗に二色の色で染められていた。

 真紅と漆黒。

 瞳は自身と瓜二つの緑色。

 顔全体には複数のヒビのようなモノが存在し、肌色が剥けた部分は、血肉を表す赤色ではなく、漆黒の皮膚が浮かんでいる。

「お前その顔——————」

「ようやく会えたな。この世界のオレ」

「何言ってんだ? この世界って・・・・・まるで別の世界から来たみてえな言い方じゃねえか」

「ああ、未来でも過去でもない・・・・・オレは別の世界から来たもう一人のユーラシア・スレイロットだ」

 あまりにも信じ難い現実がユーラシアの目の前に佇む。

 しかし目の前の存在の顔は、偽りようのないほど自身と瓜二つ。

 そして、今のユーラシアには真偽を追求する精神力など余っていなかった。

「仮にあんたが別世界のオレだったとしても、現実は何も変わんねえ」

「そうだな」

 同情や否定ではなく、ただ肯定される。

「——————オレも、シエルを失った」

 ユーラシアは、失われつつあった興味を、再びもう一人のユーラシアだと名乗る男へと向け直す。

「お前とは状況が違うけどな。オレの場合は、暗黒世界に落とされた時だ」

「それじゃあお前・・・・・オレとシエルの子供に会ったのか?」

「ああ」

「そうか・・・・・」

 喜びを滲ませるこの世界のユーラシアとは異なり、険しい表情を浮かべる異世界のユーラシア。

「・・・・・シエルがあの子につけた名前は、『フォスペス』。オレたちの光となるようつけた名前だ」

「お前・・・・・ほんとに——————」

 半信半疑であったこの世界のユーラシアの心が徐々に解けていく。

「けど・・・・・オレは妻と息子の命を奪っちまった。抗うことのできない暗黒の力に支配され、ひどく苦しむ妻と、闇に染められた息子のことを——————」

 その後の言葉が続かない。

 けれど、同一人物だからこそ、共感することができる。

 現に先ほど、愛する妻の苦しむ姿を目の前に、命を奪ってあげることしかできなかった。

 全ては、自分自身に力がなかったせい。

「悪りぃな。もっと早くお前を見つけていれば、お前にまでオレと同じ苦しみを味合わせずに済んだのによ」

「いや、お前のせいじゃねえよ。オレがみんなを殺さなくて済んだのは、お前がみんなを守ってくれたからだろ? 正気に戻れたのもお前のおかげだ」

「オレにはもう何もねえけど、あいつらは、オレにとっても大切な存在だったから」

 異世界のユーラシアの瞳から小さな涙がこぼれ落ちると同時に、顔面半分が崩壊する。

「おい! 大丈夫なのかよ」

「力を使いすぎた代償だな」

 そう言うと、異世界のユーラシアは、ユーラシアの瞳を強く見つめる。

「いいか? もう時間がねえ。さっきまではオレがなんとかウィータルへの侵略者を食い止めてたが、それももう限界だ」

 それは、崩壊し続けている体が強く物語っている。

「だからオレの持つ力の全てをお前に託す」

「それを受け取れば、オレの力はあいつに届くのか?」

 

 「あいつ」。

 それが誰のことを指すのか、問うまでもなかった。

「これは奴から無理矢理渡された力だ。そのせいでオレは——————かつてシエルを奪われた時のように理性を失くし、オレ自身の手で大切な者全てを奪った。お前には、そうはなって欲しくねえ」

 シエルを失う苦しみは、これまで経験してきたどんな痛みよりも激しかった。かつてシエルを奪われた時以上に、自身の手で奪う現実はあまりにも過酷すぎた。

 しかし、目の前のこいつは、シエルや自身の子供の命だけでなく、ケンタ、シェティーネ、レイン、その他にも多くの大切な者たちの命を自らの手で奪わされたと言う。

 その時の絶望は、今のユーラシアにも想像すらつかない。

「お前——————」

「この世界の邪神から与えられるよりも先に、オレからお前にその力を与えれば、少なくとも最悪の運命は回避できるはずだ。だから、今度こそ守れ!」

「けど、その力をオレに渡せば、お前はどうなんだ?」

「渡さなくたって結末はもう変えられない。それに、オレは力を渡すためにお前を探し出したんだ」

「あぁ、何度だって言ってやる。今度こそ、オレはオレの愛すべき存在を全て守る」

「強い目だ。だが、その前に一つやり残したことがある」

「何だ?」

「この世界の勇者に合わせて欲しい。どうしても伝えなくちゃなんねえことがあんだ」

「それなら魔大陸だ」

「そうか。それなら捕まれ、今のオレなら転移も使いこなせるからな」

「分かった」

 すると直後、視界の端で小さく揺らめく紅き炎を捉える。

「あいつ・・・・・まだ生きてたのか」

 徐々に地を這って二人のユーラシアへと近づくその存在は、先ほど丸焦げとなった太陽の意思。

「ゼェ・・・ゼェ・・・ゼェ——————オデも連れてけ」

 纏う炎は静かに揺らめき、次第に宿す色は静寂を示す蒼へと変化する。

「オデの美しいを汚したあいつを、絶対にぶち殺す!」

 静かに、それでいてこれまで以上に熱くたぎる蒼き炎。

「捕まれ」

 蘇った太陽の意思を交えた二人のユーラシアは、勇者のいる魔大陸ディアステッロへと転移するのだった。

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