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もしもう一度来てくれたなら

「大成功よ。こちらの計画通り、混乱した囲ヵ原のいない間に財政界に手を回すことができたわ。

私の名前を少しもじって、『黄昏たそがれかい』よ。

父様は驚いていたけれど、分かっていただけたわ。華童子のビジネスには未だ及ばないから、しばらく…そうね、二三年は混乱期から抜け出せられないと思うけれど、計算上では二十年は保てるわ。

もちろん、その間に新資産運用を創設していかないといけないのですけれど。

頼りはあるので心配は無用ですわ。

当面上の問題は…


これから?

ああ、そちらもすでに手配済みです。

道祖土様はともかくお義姉様はしばらく隠遁いんとんしていただかないと困りますが、予測では三か月以内に追手はなくなるはずです。


何故ってそれは…それは、…それでもやっていけるからですよ、経済界が。

あちらは私利私欲のために動いているとしても、金が入ってくれば立場は変わりませんからね。

こちらとしても囲ヵ原の使い道は考えていますし、当主とも話をつける算段は付いています。

…当主ではなく奥方様の方に話を通せば、納得していただけるでしょう。


あの兄妹は、無事に再会・解放されましたよ。

鞘さんは暫く療養が必要だそうですが、それほど深刻な状態ではないそうです。

ええ、そのまま自宅へおくってさしあげますわ。

約束があるのでしょう?

え?…ええ…かまいませんよ。

操縦士にその旨をお伝えくだされば、可能です。

ええ、では…後ほど。」


携帯電話の電源を切る。

俺の膝の上で寝息を立てている彼女を、起こさないようにそっと手を伸ばす。

黒革のケースは、久しぶりの活躍を楽しみにしているようにみえる。

大きく息を吸い、何度も繰り返してきた旋律をもう一度復唱する。

彼女にささげるために繰り返す旋律を、脳内で調律する。


没頭していて、足もとに懐かしい風景が広がっていることに気付かなかった。

誰もいない。当たり前か、今は…たぶん夏休みだ。

まひるを優しく起こす。

膝によだれを垂らされたけれど、この際仕方ない。


「おい、着いたぞ」


まひるが顔を起こす。

と、驚いたように目を点にしている。


「…さいく…」


俺たちの前には、あの体育館があった。

いつも聴かせていた、あの体育館が。



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