あの時の
頭の中がはっきりと明瞭になる。
理路整然と整頓されていく。
ラピュタの城の中に浮いている四角い石が組み換えられていく。
あんなかんじだ。
――ああ、そうか。
俺は、一人だったんだ。
両親はいないんだ。
今の両親は囲ヵ原が用意した人たちで、その養子になったんだ。
両親は俺が小学六年生の頃、
まひるに殺されたんだ。
俺も殺されかけたんだ。
――ああ、そうだ。
俺は昔からまひると友達。
今と違って『普通の人間』だったまひるは、小学校に通ってて。
誰もいない体育館で演奏するのが好きな俺は、ヴァイオリンをこっそり弾いていて。
まひるはそれをこっそり聴いていたんだけど、俺にはバレバレで。
それからなんとなく仲良くなって、一緒に遊びに行くようになって。
特別な日だった。
初めてまひるが俺の家に泊まる日だった。
子守唄をヴァイオリンで弾いてやると約束してた。
まひるは待ち遠しいとしきりにジャンプしてて。
夜ご飯の時に、急にまひるは『覚醒』した。
俺はその記憶をほとんど覚えていない。
俺は両親が殺されたその場にいなかった。
おかわりをするために、台所にいて、
背を向けてた。
悲鳴に振り向いたら死んでた。
そして、
あの赤い瞳に射抜かれた。
動物みたいに跳躍して、腹を食い破られた。
記憶が遠のく。
視界が遠のく。
覚えているのは、
まひるの鳴き声。
『ごめんなさい』
『ごめんなさい』
『想い出さないで』
俺はその言葉通り、記憶に蓋をして、
まひるのことも両親のことも、
ヴァイオリン以外の記憶をすべて
捨てた。
すべてはまひるのために、まひるの約束の為に。
―――くらり、と手をつく。
指に食い込む畳の網目で、我に返る。
ここは、白月さんの部屋…囲ヵ原の、屋敷。
顔をあげると、白月さんの心配そうな顔があった。
口の中が異様に乾いている。気持ち悪い。
「それでも、まひる様と一緒にいたいですか?」
まっすぐな瞳。
名前のとおり、月に照らされているみたいだ。
一緒にいたいかどうかはわからない。
まひるのやったことを許す気はない。
それでも
「まだ、弾いてないんです。
ずっとあいつに、聴かせてやってないんです」
すべては、それから。




