覚えていてほしい
「俺は、まぁ外から来た部外者だからいいんですけど。
どうも囲ヵ原と華之宮家の今の状態が見えてこないんですよ。
焔当主と白月さんの関わりは今話していただいたので、分かります。
でも鞘さんがどうしてまひるに仕えているのか。
そして急に二人の契りを早めたのはなぜか。
それは両家に何をもたらすのか」
破滅です、と暗い声で呟く白月さん。
あまりにも暗いので人格が変わったのかと思ったくらい。
白月さんの顔は絶望に染まっていた。
「歴代の『鞘』は外から…華童子一代から成る華之宮家、それを支援・補完する我々囲ヵ原家…この世界の外に含まれる人間を取り込んでいったのです。
両家は支え合いで成り立っていた。
でも兄様は囲ヵ原の人間です。
つまり両家が一緒になるということ。
血を同じくするということ。
関係が混然と…崩れてしまう。
奥方様もこの事態に慎重な対応を取っていたのですが、焔様は率先して契りを迫っているのです。」
当主の焔は、この両家を崩したい、のか?
俺が口にすると、白月さんはありえないことですが、と首をかしげる。
「焔様御自身にとってもそんな事態は避けるべきことなのです。
奥方様のように慎重に対応を練り、両家の繁栄を願うべき行動をするはずですが…行動がちぐはぐです。
なにか悪い組織にでも耳を傾けてしまったのか…」
いっそう暗い顔をする白月さん。
俺には何となく分かった気がする。
けど…それは彼女に言わない方がいいのだろう、きっと。
「では、鞘さんと…いや、黒霧さんとまひるはどうしてあんな関係に?
廊下で鉢合わせでもしたんですか?」
なんてねーと軽い口調で言ったのだが、白月さんはきょとんとして笑わなかった。
まぁおもしろくなかったけど。
「…まさか、そうです。
まひる様が覚醒された時…そうですね、あなたは」
『さい君』さん、ですね?
不思議な呼び方をされた。
それに戸惑ったのではない。
「…どうして、その呼び方を?」
ゆうちゃんは俺を道祖土としか紹介していない。
ゆうちゃん自身、俺のことをまひるから聞いていたから、それを知っているが。
この呼び名は、まひる以外に呼ばれたことない。
白月さんは一瞬口を押さえたが、それでも毅然とした態度で頷いた。
「口止めされていましたが、いずれ当たらねばならない壁です。
貴方はそれを踏まえた上で、気持ちに答えを出さねばならない」
物々しい言い方だ。
なんですかそれ、と苦笑いする俺に白月さんは睨むように言う。
「もう、いいですよ、―――想い出しても」
脳の奥から、ぶつん、という音がした
ような
き
がした




