きみのぬくもりを
考えてみれば納得のいく結果だ。
国の財政を裏から支え、国家間の重役を魅了する秘薬を作る、たったひとりの存在。
それが人の目につく場所でのうのうと暮らせるはずがないのだ。
狂気の発症もあるが、暗い世界からの思惑・独占欲など、様々な牙を向けていることだろう。
ゆうちゃんが言うには、華之宮家は一子相伝の素質で保たれているために、
華童子の親は片親であることが多いのだという。
ゆうちゃんはまひるのお父さんの、再婚相手であるお母さんの連れ子。
まひるとは、ほとんどまともに会ったことがないという。
「華童子は代々『鞘』とともに、
『地下庭園』という地下の隔離施設で生活するんです。
子を成すと、華童子は古来からの習性でか、自分か『鞘』を殺そうとするので、とにかく赤子だけは地上へ一旦隔離されます。
華童子は子を成した後は無用の生物ですから、そのまま地下に放置し、新たな華童子の育成と生き残った『鞘』を保護します。
それをまひるお姉さまもご存じのはず。
ですから、華童子はお姉さまで最後になるかもしれないと私は思っております。」
リムジンをいずこかへと走らせながら、ゆうちゃんと俺は真夜中の田舎道を進んでいく。
時計を見ると、イチ時を回っていた。
「私は以前より、華童子を中核に担う今の経済界を危険視しておりました。
私はこの事態を予期して対策を立てておりました。新体制の経済界を打ち立てるつもりで動いております。
…それで、道祖土様はどうなさるのですか?」
そう言いながら、ゆうちゃんは後ろのシートから何かを取り出してきた。
黒い、革張りの小ぶりのケース。
「やるよ、俺も。
だってまだ…弾いてないしさ」
かぱりと蓋を開けると、飴色に光る彩色。
黒く張られた艶やかな弦。
手に馴染んだ手触り。
「あまり似合いませんね、ヴァイオリン。」
ごめんなさい。




