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かみしめておきたいんだよ

俺の隣に座っている、華乃宮ゆう。

どうやら彼女は、経営責任者を兼任する現役小学生らしい。


なんの経営か。 ―――それは、国。

彼女は日本の政治を左右する椅子の一人なのだそうだ。


「もともとお父様の影響ですが…お父様が全くの無能で。

今では私がほとんどの責務をこなしているのですわ。

仕方ありません。お父様は無能であっても高貴なる身ですので、私も甘んじて許し、愛しております。」


こんな子供の言葉を聞いたら、お父様は死ぬだろうか。

少なくとも俺なら泣く。


車の中で(リムジン)、ゆうちゃんはオレンジジュースを口に含みながら、淡々と話し続ける。


「それでも私、一応普通の女子です。

仕事では大人の対応を望まれますが、日常生活ではそういうのは、難しいのです。」


「そういうのって?」


「私、ほとんど学校行っていないのです。

だから親しい学友が…恥ずかしながらいないのですわ。」


ゆうちゃんは頬を赤らめる。

友達がいない。彼女くらいの年なら、きっとそれは切実な悩みなのだろう。


「もしわたしの所に来ていただければ、

きちんと家も食事も与えますし、

経済的な保障は限度がありますが億以下であれば私有財産から出しましょう。」


そうかやっぱり小学生で経営者って言うと友達できないんだなかわいそうに…って話を聞いていたら、おこづかいが億以下でいいという条件。

あ・遊んで暮らしていいのか…!


どうやら本当に友達というものを知らないらしい。

俺はそこに、ゆうちゃんの可愛らしさを垣間見た。

スマホをかばんから取り出し、ゆうちゃんにアドレスの画面を見せた。


「…ゆうちゃんの携帯って、赤外線通信できるか?」


きょとんとした後に、彼女の顔に少女らしい微笑が浮かぶ。


「…はい、衛星ともつながっておりますから。」


でもそのへんの小学生とはやっぱり違う彼女。

ゆうちゃんと俺は、アドレスを交換した。


「暇なときにメールでもしてよ。

バイト以外ならだいたい返せるからさ」


「会議の合間にメールを書かせてもらいますわ。

道祖土さん、思った以上にお優しいのですね。

下僕じゃもったいないくらいですわ。」


下僕=友達っていう方程式は、どこで覚えたんだろうもう少し親交を深めてから訂正しよう。

…と、俺は思いつく。


「あ、ねえ。まひるのアドも分かる?

教えてくれないか?」


メールや電話なら殺されることはあるまい。

普通の日常生活なら、まひると過ごした日々は心地よかったし。

そんな軽い気持ちで聞いた俺に、ゆうちゃんは体を硬直させたように固まって、驚いていた。


その表情から、感じ取れるまひるへの不安。



「お姉さまは、長野の『地下庭園』に籠もられる準備をされておいでですわ…。

もう二度と日の目を浴びることはない使命を胸に…。

道祖土様、ご存じないのですか。」


圏外どころの話じゃなかった。






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