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洗脳されて闇騎士になった僕、なぜか中身はマイペースなゲーマーです~親友を救うため、前世知識でバッドエンドを攻略します~  作者: 終端カヌレ
第2部:???編(第34話〜)

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第51話 ワンパンで助けたはずが……救世主の狂気がアクセル全開になっていた件について


(ルーカス視点)



──同時刻。港の広場。


「……は?」


聖剣を抜いた姿勢のまま固まっているイヴェットの横で、オレは開いた口が塞がらなかった。


ほんの数秒前まで、海面を割って現れた巨大な魔獣──グラナーダの自警団すら束になって挑むような絶望的な巨体が、イヴェットが踏み出した瞬間に跡形もなく消滅したのだ。


(い、いやいやいや! おかしいだろ絶対!! 今、物陰から概念ごと消し飛ばす勢いの高火力の闇魔法が着弾したぞ!? 誰だ今のを撃ち込んだ化け物は……!?)


冷や汗をダラダラと流しながら周囲を見回すが、犯人らしき人物の気配は微塵もない。


だが、隣に立つイヴェットは違っていた。


ゆっくりと聖剣を鞘へと収めるイヴェット。

その瞳からは琥珀色の光が消え、暗く重い、だがどこか愛おしむような笑みが浮かんでいた。


この頃──いや、正確にはあの日以降、よく見られるようになった狂気的な表情。オレを見ているようで、ここにはいない「誰か」を見つめているような瞳のまま、彼は囁くように言った。


「……見たか、ルーカス」


「え、あ……うん。見た、というか……」


「やっぱり……エルニアなんだ」


「はぁ!? え……!? いやイヴェット、それは流石に──」


「あの日、俺に言ったろ。『痛みを半分こしよう』って。……遠く離れていても、アイツの心が俺の隣にいてくれてるんだ。俺が傷つかないように、陰から守ってくれてるんだよ」


うっとりと頬を緩ませるイヴェットの言葉には、確信めいた執着と、歪みきった狂愛が満ち満ちていた。


「待っていてくれ、エルニア……。どんな手を使ってでも、俺が必ずお前を魔王の手から解き放つ。お前が俺を守ってくれた分、俺の全てを懸けて……お前を取り戻してみせるから」


握りしめられた聖剣の柄が、きしみと悲鳴を上げる。

その目は「救世主」のそれではない。獲物を何が何でも奪還しようとする執念の肉食獣の目だ。


(ダメだ……今のイヴェットに何を言っても届かねぇ……!)


胸の奥でドス黒い不吉な予感が渦巻く。


『剣すら抜いていないのに敵が消えた』なんて、まともな神経なら一秒で異常だと見抜けるはずだ。だが今のイヴェットは、「エルニアが影で自分を守ってくれている」という都合のいい解釈に縋ることで、取り戻すための決意と正気を極限まで歪ませて補強している。


(……思い返せば、あの供犠式の時だってそうだった)


あの日、儀式の最中。

イヴェットが気付いたとは思えない。恐らく、オレだけがあの深藍(ふかあい)色髪の男──ヴェイグ(エルニア)の姿を、偶然にも目撃してしまっていた。


(あいつ……イヴェットにバレないように陰でコソコソ裏工作して、イヴェットがこれ以上傷つかないように守ってるつもりになってるだろ……!)


魔王に洗脳され、敵になったはずのエルニア……いや、闇騎士ヴェイグが、なぜか救世主を裏から完璧にフォローしている。


最初はその意図が分からず混乱した。だが、今ならハッキリと分かる。

あの男の意識の中にまだエルニアが残っていて、必死に抵抗しながら、オレたちが危険に陥らないように今回のような手助けをしてやっているのだ。


(なぁエルニア……お前、よかれと思ってやってるのかもしれねぇが……逆効果なんだよ!!)


オレは冷や汗を拭いながら、暗い笑みを浮かべるイヴェットをチラ見する。


イヴェットがこんなおかしな状態になっているのを、あの男は知っているのだろうか?


「エルニアが俺を守ってくれる」「だから俺は何としてでもアイツを奪還する」と自分に言い聞かせ、歪んだ使命感と過剰な執着に酔いしれながら、着実に引き返せない泥沼へと突き進んでいるイヴェットの姿を。


あいつが優しさや過保護で手を貸せば貸すほど、イヴェットの『奪還への狂気』は重症化し、取り返しのつかない事態へと加速していく。


(お前が陰でイヴェットを守れば守るほど……コイツの重すぎる執着が歯止め効かなくなっちまうんだぞ……!!)


声に出せない叫びが胸を焼き焦がす。


手応えのない勝利。自分たちが無傷でいられる理由を「親友の愛と絆」に都合よく変換していくイヴェット。


「絶対に連れ戻す」という強烈すぎる狂気を破滅の燃料に積み込みながら、救世主一行は魔王の待つ深淵へと着実に突き進んでいくのだった。

第51話をお読みいただきありがとうございました!


主人公は「完璧な裏工作だぜ!」とドヤ顔でグルメを満喫しているのに、被害者(?)のルーカス視点から見ると「親友の善意がヤンデレの導火線にガンガン火を点けている最悪のホラー」になっているという、見事なすれ違いをお届けしました(笑)。

不憫なツッコミ枠・ルーカスの胃痛が心配ですね……!


次回の第52話は、【10/9(金)の夜(18:00頃)】に投稿予定です。


ここで読者の皆様への質問です!

「今のところ登場したキャラ(エルニア、イヴェット、ルーカス、三従者など)の中で、一番『この先の未来が心配だな……』と感じる推しは誰ですか?」(ぜひコメントで教えてください!)


続きが気になる!と思ってくださった方は、ページ下部から【ブックマーク登録】や【評価(★★★★★)】、一言コメントをいただけると大変励みになります!

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次回もどうぞよろしくお願いいたします!


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