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洗脳されて闇騎士になった僕、なぜか中身はマイペースなゲーマーです~親友を救うため、前世知識でバッドエンドを攻略します~  作者: 終端カヌレ
第1部:すれ違いの残響編〜呑気な闇騎士と失意の救世主〜(第1話〜第33話)

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第31話 【狂気の最適化】すべては飯のせい。システムエラーが弾き出した最悪の生存戦略


暗い昏い闇の底。

頭の中でミルトレッドの悲鳴と、燃える故郷の幻影が、終わらない悪夢として僕を何度も何度も責め苛(さいな)む。


『僕がやった。僕がのんきに魔王城を観光している裏で、この肉体(ヴェイグ)はみんなを殺した。イヴェットの心まで壊した。全部、ぜんぶ、僕のせいだ』


『消えたい。いっそこのまま、目覚めなければいい──そうしたら……』


その時、僕の脳内に、何かが「異物」としてノイズ混じりに介入する。


── 繧キ繧ケ繝?Β繧ィ繝(システムエラー)ゥ繝シ。精神崩壊の危機。防衛繝励Ο繝医さ繝ォ(プロトコル)を起動します。


『待て。本当に、僕が悪いのか……?』


そもそも、なぜ魔王軍はこれほどまでに狂暴なのか。なぜ砦を落とし、村を焼き討ちする必要があった?


『……あぁ、そうか。原因は、ご飯(メシ)だ。』


脳内で、何かがカチリと最悪の方向に噛み合う。あまりにも都合がよく、あまりにも狂った思考のすり替え。

だが、耐えがたい罪悪感から逃避したい僕の心が、それを『真実』だと誤認した。


『あのひどい食生活だ。魔物も魔族も、毎日毎日、魔力回復効率だけを求めた泥を煮詰めたようなマズい食事しか摂取していなかった。

彼らにとって食事はただの魔力供給源で、味なんて二の次の嗜好品だったから。味を無視して効率だけを詰め込んだ歪(いびつ)な歪(ゆが)みのせいで、彼らの魔力は暴走し、常に精神が磨耗していたんだ。


そんな環境にいたら、誰だって魔力が荒んで狂暴になるし、侵略戦争だって引き起こす。』


『僕がのんきにしてたからじゃない。

僕がもっと早く厨房を統率して、美味しいご飯で彼らの胃袋を満たし、精神を安定させていれば……魔王軍が遠征することなんてなかった。レテラ村だって、燃える必要はなかったんだ!』


罪悪感から逃れるために、脳が"料理をしなければ"という義務感で全ての思考が強制的に埋め尽くされていく。


『泣いて立ち止まってる場合じゃない。

まだ間に合う。僕が魔王軍の食生活を完全に改善して精神と魔力を制御すれば、これ以上の犠牲は防げる。


それに、原作知識があれば、イヴェットたちがこれから戦場で仲間を失う絶望イベントを、僕が裏から工作して回避できるはずだ。

……そうだ、そうだよ。すべては僕の料理で、解決できる。


新メンバーの加入イベントも前倒しして、あいつの戦力を一気に上げてやるんだ……!』



◇



「──はっ!」


弾かれたように目を開ける。

驚くほどに視界がクリアだった。


あれほど灼けるように痛み、燃えるように熱かった胸の貫通痕も、割れそうだった頭痛も、そして喉の奥にこびり付いた鉄の味も、嘘のように消え去っている。


代わりに部屋を満たしていたのは、鼻を突くほどの強烈な薬草の匂い。


「ヴェ、ヴェイグ様……!?」


枕元を見ると、魔力切れで顔を真っ青にしたイシューが、ガタガタと膝を震わせながら、すり潰した薬草の残骸(あかいいろ)を握りしめていた。


イシューは、主の過呼吸と吐血を見てパニックになり、藁にもすがる思いでその花をすり潰し、僕の口に流し込んだのだろう。


「……ありがとう、イシュー。もう大丈夫だ」


すっとベッドから立ち上がる。


イシューや、駆け寄ってきたアラン、ロスタが「そんな、まだお体に障ります!」と驚愕するのを横目で見ながらも、僕の足取りは驚くほど軽い。


『よし、動ける。イヴェットは生きてるんだ。僕がここで立ち止まるわけにはいかない』


僕の内心はいつの間にか、前向きなゲーマー工作員モードに完全に切り替わっていた。


裏からイヴェットを勝たせるための作戦を練り、魔王軍を料理で手懐ける計画を思い描くことができ、モチベーションは最高潮まで上がっている。


だが。


鏡にふと映った自分の顔を見て、僕は一瞬、息を呑む。


そこにいたのは、いつものように心の中でツッコミを入れながら、前向きに笑おうとしている自分の顔ではなかった。


──顔の表情筋が完全に死に絶え、瞳からは一切の光が消え去った、精巧な「お人形」のような闇騎士ヴェイグがそこに立っていた。


鏡の中のそいつは、光のないガラス玉のような目で、口元だけを不気味に釣り上げて不敵に笑おうとしていた。


まるで自我を失った殺戮兵器が、人間の『笑う』という動作をぎこちなく模倣しているかのように──脳が無理やり出力させた、歪な笑顔。

悍(おぞま)ましすぎて、自分でも寒気がした。


だが、次の瞬間には何を思ってそうしていたのか分からなくなる。

自分の顔の異変にすら気づけないまま、僕は無造作に、枕元にあった漆黒の手袋をはめる。


手に付いた赤い血を、完全に覆い隠すように。


「アラン。ロスタ。厨房へ行くぞ」


声のトーンは、これまでのどんな時よりも低く、冷たく、冷酷で感情の一切合切が抜け落ちていた。


「──私たちの、料理(しごと)を始めよう」


恐怖に息を呑む従者たちを従え、完全に目が死んだ闇騎士は、静かに幽鬼のように歩き出すのだった。


第31話をお読みいただきありがとうございました。


明日は【18:00頃】に29話で触れたエルニアとイヴェットのすれ違いの原因の砦作戦の番外編を投稿予定です!

(連日投稿中!)


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