↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
洗脳されて闇騎士になった僕、なぜか中身はマイペースなゲーマーです~親友を救うため、前世知識でバッドエンドを攻略します~  作者: 終端カヌレ
第1部:すれ違いの残響編〜呑気な闇騎士と失意の救世主〜(第1話〜第33話)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/57

第28話 【朗報】ブラック企業の元社畜、魔王城のホワイトすぎる福利厚生に感動する ──上司に怪しいハーブティーを勧められました


アランに無理矢理、身だしなみを整えさせられて、僕は彼と共に魔王城の最深部、魔王ユラシーズの私室へと続く長い道のりを進んでいる。


胃は緊張でキリキリ痛むし、内心行きたくなくて肩は下がりっぱなしだし、頭は魔王城のマッピングで大忙しだが、相変わらず僕の身体は連れ従うアランを供(とも)に爽快に風を切って歩いている。


「随分と奥に部屋があるのだな」


「ええ、この辺りは転移魔法を禁止している区域でもありまして、直接向かうしかないのです」


『げぇ、マジか……! 少しでも時間を伸ばして魔王との対面を遅らせたいのに、僕の足は無情にもスタスタと最深部へ向かって進んでいる。頼むからゆっくり歩いてくれ僕の身体! こうなったら会話を引き延ばして時間を稼ぐしかない……!』


「何か結界でも張っているのか?そのような魔力反応は感じられないが……」


僕、エルニアは至って普通の魔法剣士のステータスだったので、隠密スキルなどは皆無に近かった。

昔、かくれんぼをして遊んだ時も、イヴェットに一番に見つけられるくらい下手だったものだ。


それが、闇騎士ヴェイグにされたことで、元はあまり得意ではなかった魔力探知や痕跡探しなどもできるようになった。

今なら、勘の鋭いイヴェットにだって見つかる気がしないね。

これは嬉しい誤算だ。暗躍にちょうどいいよね、このスキル。


しかし、その力を使って目を凝らしてみても、この辺りにはそのような形跡は一切見当たらない。


「私(わたくし)も仕組みは詳しく存じ上げないのですが、この使われている材質が特殊で魔法反応を打ち消すと聞いています」


へぇー、そう言えばそういう系のエリア、満月教の総本山にもあったな。


供儀式(くぎしき)の時に儀式に使うための聖具がそれぞれ別の場所に保管されてて、何故か救世主イヴェットが回収して回るっていう。


タイムリミット有りの迷路ステージで、ちょっといつものダンジョンと違う雰囲気が新鮮だったなぁ。


だが、そこと同じ素材とか?なんで?


魔王軍と満月教って敵対してるんじゃないのか??


頭は疑問でいっぱいだが、口からは滑らかにアランへの答えが出てくる。


「ふむ。そのような特殊な素材があるのだな。興味深い」


「本当にヴェイグ様は調べるのがお好きですね。あとでロスタに言って、それ関連の資料を取り寄せておきます」


「あぁ、頼む」


そんな会話をして少しでも到着を遅らせようと無駄な足掻きをしているうちに、今までの廊下とはまた違う豪華な装飾が施されている場所に辿り着いた。


「ヴェイグ様。ここが陛下の私室でございます」


アランは手に持った献上品を丁寧に抱えながらそう告げると、恭しく扉をノックした。


返答を待たずして重厚な扉が自然と開き、中に入ろうとして気づく。

ヴェイグの部屋の前ですら守衛の兵士が居たのに、ここにはそれがない。

扉の周辺には巨大な彫刻が置かれているだけだ。


確かに、豪華で目を引く空間だが、何故か寂しさを感じるのは何なのだろう……。


さぁ!気を取り直して、覚覚悟を決めろエルニア!絶対に魔王から情報を抜いてみせるぞ!


そう心の中で気合を入れて、僕は一歩前へと踏み出した。



◇



部屋に入るとすぐに中庭に通され、そこは現世で言うとさながらイングリッシュガーデンのような風貌だった。


魔界の魔王城のはずなのに、植物や花が溢れ、太陽の木漏れ日まで再現された異質な空間。


そこにあの男は優雅に紅茶を片手に僕を待ち構えていた。


「アラン。例のアレを……」


「はっ、ヴェイグ様」


そう言って魔王に付いている従者へ献上品を渡す。


ここ数日悩んだが正解が分からず、セドューレさんが気に入っていたマカロンを持参した。


丸いコロンとしたマカロン、猫の肉球形と雲形のキュートな物。


あの魔王がキュートな物を持っている光景が見たくて、わざと持って来たようなものだ。


それくらいさせてもらわないと、こちらのメンタルが保たないからね。


「ふむ。コレが報告にあったモノか」


魔王は手の中でマカロンをつぶさに観察するように弄び、ゆっくりと一つ食べる。


「ほう……これは見事な魔力制御だ、素晴らしい美味(びみ)だな」


『やったー!魔王も気に入ってくれたのなら、これで少しは厨房の料理も改善されるはず!

そして、絵面が最高だ!可愛いマカロンが絶妙に似合わなくて少し気持ちがスッとしたぜ』


「実に見事な『赤』だ。これだから君の観察は止められそうにない」


『いやいや、そんな変な行動してないので早めに飽きてもらえないかなぁ』


ユラシーズはまた、僕をマジマジと見ながらまた一つ。


今度は肉球形のマカロンを手に取り、咀嚼する。


その時、一瞬だけ眼光が鋭くなった気がしたが、それを注視する前に話しかけられる。


「そう言えば、数日前はセドューレの所で大暴れしたそうだな」


「大暴れなんてとんでもありません。兵士達に手合わせをどうしてもと乞われたので指導したまでです」


『そうだよ!!別に越権行為をするつもりは無かったんだよ。本当にごめんなさい、セドューレさん』


「ふむ。そうなのか……。まぁ、程々にしてやってくれ。兵の士気を上げる分には構わないが、セドューレの立場もあるからな」


「御意」


やはり、魔王の前だといつもより口調が滑らかに矯正されている気がする。


自分とヴェイグの境界が曖昧になっていくような、そんな気がするのだ。


「この菓子も素晴らしいが、やはり、先日の『仕事』も見事だったな。流石(さすが)は私の片翼だ。期待以上の成果が出ている」


そう言いながらユラシーズは執事然としている魔族の男に新しいお茶を淹れるようにと指示をしながら、会話を一方的に続ける。


「そんな君にコレを……、私自らが調合したハーブティーだ。よく効くから飲みなさい」


「勿体ないお言葉。陛下の期待に応えられたのであれば、これ以上の誉れはありませんが、有り難く頂戴いたします」


『ふふ。やっぱり、料理改善は大切だよね!魔王様、意外と末端の報告までちゃんと目を通すタイプなんだね。まぁ、あの組織図を見れば細かい所まで気になる性質(タチ)だとは思ってたけど……、魔王がホワイト上司とか変な感じだなぁ』


ゆったりと給仕された目の前のティーカップを手に取り、香りを嗅ぐ。


地獄のゲキマズ飯とは違い、馨(かぐわ)しい香りが特徴で、ハーブティーに詳しくない僕でも美味しそうだと感じるものだった。


一口飲むとその効果に驚愕する。


特に疲れていた自覚はなかったのだが、身体が滅茶苦茶軽くなった。


慣れない環境により起きていた肩コリですら解消されていく。


なにこれ、福利厚生手厚すぎない?魔王様。


前世のブラック企業の社長に見習わせたいレベルのホワイト上司だね!


僕が勢いよくお代わりまでしてしまった様子を、ユラシーズは朗らかに笑いながら観察しつつ、手元にある書類に淡々とサインをしていく。


『あっ!!この字はさっきの古書に走り書きしてあった字じゃん!!このマッドサイエンティスト!救世主についての情報やっぱり持ってるじゃないか!絶対聞き出さないと……』


その中の一枚を先ほどの従者が僕の目の前に置くと、魔王は手を止め、話し始める。


「さて……身体も軽くなったところで、次の『重要任務』を任せたい。君の生まれ故郷の近くに、救世主のネズミどもが潜伏しているという情報があってね。周囲の『警備・偵察』を頼めるかい?」


「かしこまりました。このヴェイグ、粉骨砕身(ふんこつさいしん)の覚悟で任務を全ういたします」


僕が何か反応する前に、勝手に僕の口は了承を伝えていた。


だが、これはある意味好都合かもしれない……。


『よっしゃあ!!これで人間界にいけるぞ!それも、初の任務が警備任務なんてキタ!!しかも故郷の近くか。もしイヴェットたちとニアミスしそうになっても、僕のゲーム知識をフル活用すれば絶対に戦闘を回避して逃がしてやれるぞ!よーし、裏で内通者として親友を全力サポートするぞ!期待しててねイヴェット!』


そう心の中で前向きな決意を固め、僕は優雅に魔王へと深く一礼した。



……チリ、と脳の奥で冷たい何かが刺さるような痛みを感じた。



『……あれ?今、何を考えてたんだっけ……?』



ほんの一瞬、思考の歯車がズレたように噛み合わなくなる。


何か大切なことを決意したはずなのに、その記憶の表面に、強制的に分厚いモザイクがかけられていくような奇妙な感覚。


思い出そうとしても引き出しから取り出せないもどかしさ……僕は今、何を……。



「では、期待しているよ。我が片翼(かたよく)」



ユラシーズのどこまでも優しい笑みを背に受けながら、僕は中庭を後にする。


脳の芯が痺れるような、妙な眠気が視界を侵食していく。



『あはは、ハーブティーが効きすぎてリラックスしすぎちゃったかな。……よし、初の警備任務、サクッと──』



カチリ、と。


僕の中の意識が、部屋の電気を消すように切り替えられた気がした。



◇



(アラン視点)



「ヴェイグ様?どうかされましたか?」


優雅に前を歩く主人の顔をよく見る為に少し歩調を早めて追いつこうとした時、彼は咄嗟にそれを手で制し、何でもないような様子で口を開く。


「いや、何。出陣の準備をせねばと思っただけだ。気にするな」


その口調はいつもと変わらないはずだ。


だが、何かがおかしい……。


冷徹に見えて我が主は優しく、細やかな気配りを絶やさない人だ。

その彼の瞳が鈍く深く殺意で燃えている気がしてならない。


陛下への忠誠心の高さは分かっていた事だが、彼の内側にある理性が完全に「殺戮」へと塗り潰されている。この状態のヴェイグ様が動き出せば、次に残るのは血の雨の跡だけだ。


また、料理人達に怯えられないといいが……。


そんな事を考えながらも私はヴェイグ様の出陣の準備を迅速に行う為にイシューやロスタに連絡を取るのだった。


第28話をお読みいただきありがとうございました!


魔王城のあまりにもホワイトすぎる(?)福利厚生と美味しいマカロンに感動しつつ、待望の人間界への任務を手に入れて意気揚々なエルニア。

……なのですが、ハーブティーを飲んだ後の彼の思考に、何やら妙な違和感が混ざり始めてしまい……?


【★5日連続投稿中!★】

ただいま『第1部クライマックス記念』として5日連続投稿を実施中です!


明日の第29話は、【8/19(水)の夜(18:00頃)】に投稿予定です。

いよいよ出撃するエルニアの初任務と、彼を待ち受ける展開を、ぜひ見届けていただけると嬉しいです……!


続きが気になる方、エルニア(と胃を痛めているアラン)を応援してくださる方は、ぜひページ下部から一言コメント、ブックマーク登録や評価(☆☆☆☆☆)をよろしくお願いいたします!


皆様の応援ポチが、何よりの執筆の原動力です……!

明日もどうぞよろしくお願いいたします!


※本作は「なろうチアーズプログラム」に参加しています。画面下のボタンから応援チアをいただけると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シリアス ダーク 男主人公 魔王 勇者 西洋 魔法 冒険 日常 ハッピーエンド 勘違い 飯テロ ゲーム転生 闇堕ち コメディ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。