第26話 救世主という名の贄② ──「救世主の寿命は最短5年」親友を救うため、闇騎士の仮面を被り直す
かつてのゲーム画面で輝かしい英雄譚として描かれていた光景が、すべて仮初の衣装を剥がされていく。
満月教の大司教たちが笑顔で見送っていたあの輝かしい出発シーンも──全ては出来損ないの悲劇の幕開けだったのか?
「ヴェイグ様」
アランの冷静な声が、僕を現実に引き戻す。
「どうやら……この内容は一般に伏せられていたようですね」
「そうだな」
アランの表情を見るに、これが魔族すら知らなかったトップシークレットの情報か……。
ふと視線を落とした先、古書の隙間に小さな写真が挟まれていた。
黄ばんだ紙片に映るのは、少年時代のイヴェットによく似た男の子──おそらく過去の、とうに使い潰された救世主候補だろう。
そのあどけない笑顔が今のイヴェットと重なって、胸が激しく締め付けられる。
「アラン」
「はい」
「この情報……どこまで信用できる?」
『まさか、全部デタラメじゃないよな……?』
でも、魔王軍の最深部に保管されている以上、その信憑性は最悪なまでに保証されているはずだ……。
アランが慎重に首肯する。
「原本の筆跡や印章から判断するに、第二暦初期のものと思われます。年代的には満月教の創設以前に相当します。長命なエルフや魔族でも、この時代から生きている者は少ないはずです」
『おいおい、冗談だろ……』
元ネタどころか、救世主システムそのものの起源が敵(魔王)側にあるってどういうことだよ……。
足元から這い上がる底冷えするような恐怖と怒りが渾然一体となり、胃を削り取る。
自分の中でエルニアとヴェイグの境界線が急速に薄れていく感覚──まるでゲーム画面の枠組みがベリベリと剥がれ落ちたようで、酷く気分が悪い。世界が足元から崩れていくような、猛烈な吐き気がする。
「救世主の寿命はどれくらいだ」
「記録によれば最短五年、最長十五年」
『思ったよりも、短すぎる……!』
「次回の【供儀式】はいつだ?」
「一週間後、予定されているそうです」
『一週間……!』
猶予は、もうどこにもない。
仮にヴェイグの身体を使えば阻止できるだろう。
だが、それは敵軍最高幹部・闇騎士ヴェイグとしての最悪のスタンドプレーを意味する。それをあの魔王が見逃してくれるかどうか。
さて、どう動くのが最善だろうか?
「ロスタに伝えよ! すぐ古文書を全て回収しろ! 誰の目にも触れさせてはならぬ。この古文書は秘密保持対象とする。調査担当以外は閲覧禁止と宣言する。通達を頼む」
僕──いや、もういいや、今はヴェイグモードでいこう──が冷酷に言い放った瞬間、アランは微かに眉をひそめた。
『こういう厳格モードのヴェイグって怖いよね、なんか圧が半端ないよねホントごめんね!?』
内心で必死に謝りつつも、顔だけは能面のように自動的に保たれる。
「承知しました」
アランはその場に膝をつく。
今までだったら「やめてくれ、そういう儀礼作法苦手なんだって!」って叫ぶところだ。でも、今はそれすら許されない。
一週間。──詰んでる。どう考えても、手札が足りなさすぎる……!
第26話をお読みいただきありがとうございました!
明かされた救世主システムの残酷な真実と、刻一刻と迫るタイムリミット。
イヴェットを救うため、エルニアの裏からの真エンド解放作戦がいよいよ本格化していきます。
【★重要なお知らせ★】
来週8/18(火)より第1部クライマックスに突入いたします!
これに伴い【5日連続投稿】を行いますので、ぜひお楽しみにお待ちください!
次回の第27話は、【8/16(日)の夜(18:00頃)】に投稿予定です。
続きが気になる方、応援してくださる方は、ぜひページ下部から一言コメント、ブックマーク登録や評価(☆☆☆☆☆)をよろしくお願いいたします!励みになります!
皆様の応援ポチが、何よりの執筆の原動力です……!
明日もどうぞよろしくお願いいたします!
※本作は「なろうチアーズプログラム」に参加しています。画面下のボタンから応援チアをいただけると嬉しいです!




