第14話 闇騎士の素っ気ない労いと、ワンコ系従僕の可愛さが限界突破している件
市場での一騒ぎの後、僕は従者たちとヴェイグの私室に戻った。
だが、その後の記憶が曖昧だ。
つい、張り切って無詠唱で魔法を使ってしまった影響なのか。
それともただ、この体に慣れないだけなのか──物凄く疲れ果てていた。
気付いたらソファの上で行き倒れていたようで、従者の誰かが気を利かせて上手くクッションを当ててくれていた。
幸い、体に痛みはない。
「やはり、疲れがあまり取れていませんか?」
僕の起床に気付いたのか、イシューがソファのすぐ近くで跪きながら、僕の顔色を窺う。
「イシューこそどうなんだ? 先程の騒ぎでかなり魔力を消費していたようだが……」
すると彼は驚いたように目を見開き、細身な体を申し訳なさそうに少し縮めて、恥ずかしそうに言った。
「すみません、ご心配お掛けしました。基本的に私は執事業というか後方支援担当で、あまり走ったりするのは得意ではなくて。魔力の方も、もう問題ないです。ありがとうございます、ヴェイグ様」
「そうか。なら良かった」
『くっ……、なぜヴェイグの口調はこんなに素っ気なくなるのか!』
せっかく頑張ってサポートしてくれたイシューを労いたいのに、言葉が上手く出てこない。
ちょうどその時アランが奥の部屋から出てくると、香油の良い香りが部屋中に広がった。
「良かった、お目覚めになられたんですね……。ソファに座って暫くしたら、そのまま寝てしまわれたので驚いたんですよ」
アランが心配そうにこちらを見つつ、イシューとアイコンタクトを取る。
「アラン、ザッと見た限りでは大事には至ってないので安心して下さい」
「では、ヴェイグ様。私は夕食の支度を整えてきますので、お湯にしっかり浸かって疲れを癒やして下さいね」
そう言ってアランと入れ替わり、イシューは退出する。
アランがテキパキと入浴の準備をしているのを横目で見ながら、僕は昼寝のせいで書き途中になってしまった報告書に目を通す。
いやー、ただ市場視察に行っただけなのに見事なフラグ回収。
十中八九あの怪しい人物が主犯なのだろうけど、捕まってはいないだろうな。だってこの後、イヴェット達が教会の方で何回か遭遇するわけだし……。
まぁ、僕に用があるならまた会う事もあるだろう。
考えている間にもヴェイグの体は自動的に動き続ける。
僕、エルニアの字と違い、ヴェイグの字は綺麗で読みやすく、字面だけで気品を感じられる筆跡だ。
そんなくだらない事を考えているうちに、襲撃事件の報告書を書き上げてしまった。
アランを呼び止めようとしたが忙しく動き回っていたので、部屋の暗がりに向かってロスタを呼んでみた。
「……ロスタ」
「はい、お呼びですか。ヴェイグ様」
スッと闇の中からロスタが無音で現れ、跪く。
『かっこいい! 僕もいつかやってみたい!』
内心で興奮を爆発させつつ、僕はヴェイグの仮面を維持する。
「すまないな、書庫で資料を探してもらっていたのに呼び出してしまって」
「いえ、気にしないで下さい。主人に呼ばれて嬉しくない従僕はいないので」
『わー、忠犬系従者のロスタ、可愛過ぎないか!?』
こんな感じで魔界でやっていけてたのか?
おかしいな。どう考えても僕より身長も年齢も高そうに見える成人男性に犬耳が生えて見えるとは、おぬし、相当疲れているな……と自分にツッコミを入れる。
「これを書庫に戻るついでで構わない、提出しておいてくれ」
スマートに立ち上がり、お手本通りに書類を受け取った瞬間、また空間が歪む。
「では、引き続き調査して参ります」
そう言って、あっと言う間に転移していってしまった。
明るい所で転移しようとすると、あんな感じに空間に影響が出るんだなぁ。勉強になったな。
「お待たせしました、ヴェイグ様。準備整いましたのでこちらへどうぞ」
アランが満面の笑みで浴室に続く扉の前で一礼して言った。
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第14話をお読みいただきありがとうございました!
やっとロスタを久々に出せました!なぜかアランのキャラだけ濃くなってしまって……他の子の登場が減ってしまうんです。他の従者達も活躍させたい!
次回の第15話は、【明日のお昼(12:00頃)】に投稿予定です。
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