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第13話 気づけば最高幹部なのに英雄と呼ばれました。ところで固有スキルのグラが凝りすぎて(?)胃痛が限界です


息を切らせながら門を潜ると、衛兵たちが慌てて巨大な鉄の扉を閉めた。



「ヴェイグ様……ご無事で」



アランが安堵(あんど)の息を吐き出す。



「お疲れ様でした……」



イシューは魔力を一度に使い過ぎたようで、額に汗を浮かべ、少し顔色が悪い。

だが、彼の魔法のお陰で、どうにか全員無事だ。本当に良かった。


抱えていた老人と親子をゆっくりと、地面に下ろす。



「あんたのお陰で命拾いした……ありがとうよ」



老人が震える手を差し伸べてきた。

ヴェイグの口が、ゆっくりと動く。



「礼は要らん。次からは用心しろ」



これくらいの台詞なら、洗脳の抵抗も少なく言えるようだ。少しずつ試していくしかないね。

背後で、アランが深く一礼した。



「迅速なご判断に感謝いたします。ヴェイグ様の勇気が、多くの命を救いました」



「私は何もしていない」



『嘘だろ、お前が一番先頭で道を作って、皆を守ってただろ!? 凄いぞアラン。執事業だけじゃなく戦闘まで出来るとは万能だよもっと誇って。誇って!』



「いいえ」



アランが真剣な眼差しで首を振る。



「あなたがいなければ、我々も逃げ遅れていました」



「そうですよ!」



イシューも笑顔で同意する。



「あなたは間違いなく英雄です!」



『英雄……? 闇騎士の僕が? 洗脳状態の僕が? ──なんだよ、この違和感は……』



衛兵たちが敬礼で見送る中、ふと胸の奥に、(えぐ)られるような鋭い痛みを感じた。

いや、違う。あれは──。


……いや、やっぱり胃が痛い。

市場で食べた、あの瘴気鹿(しょうきじか)のせいだろうか。

それとも、固有スキルを使った極度の緊張のせいか。




「ヴェイグ様……? お顔が青白いですよ……?」



イシューが心配そうに顔を(のぞ)き込んできた。

そして、僕の胸元に視線を落とした瞬間、彼とアランの表情がピキリと凍りつく。



「あ……」



アランが小さく息を()む。


その瞳に宿ったのは、明らかな戦慄(せんりつ)と絶望だった。

まるで、取り返しのつかない恐ろしい何かが失われていく瞬間を、目の当たりにしたかのような──。


彼らの苦しげな視線を追って自分の胸元を見ると、服の隙間から、禍々(まがまが)しい紫黒色(しこくいろ)の魔力が陽炎のように揺らめき、肌を焼くように(くす)ぶっていた。


固有スキルの演出なのだろうが、製作スタッフはいくら何でもヴェイグのグラを凝らせすぎだ。そんなに厨二病心を(うず)かせるデザインが好きなのだろうか。



『それともやっぱり、あの鹿の肉が腐ってて変な瘴気でも出てるんだろうか……!』



そんなことを考え悩んでいたせいで、僕は従者たちの悲痛な表情を見逃してしまった。


アランが震える手を伸ばしかけ、しかし最高幹部への不敬を恐れるように、その拳を強く握りしめて耐え、イシューの方はいつもの微笑みも完全に消え失せ、痛々しいものを見るかのように視線を伏せている。



「何でもない……」



ヴェイグの声でぶっきらぼうに告げる。

大丈夫、多分ちょっと食べ過ぎただけだ。しばらく安静にしていれば治るはず。



城壁の向こうでは、まだ赤い火の手が上がっていた。

しかし、僕たちは一時的に危機を脱した。


まずは報告を。経済や生態系の調査(という名の買い食い)の成果もまとめるべきだろう。

そして──何よりも早い休息だ。





居室に戻るなり、ソファに倒れ込んだ。



「お休みください」



アランが手際よくクッションを整えてくれる。



「お湯の用意をしますね」



イシューが微笑んだ。

市場で買った花束を、そっと机に置きながら。

二人とも、本当に優しいなと思う。



「今日の件は、私の責任だ」



「いいえ。ヴェイグ様は常に最善を尽くされています」



アランが即座に言葉を返す。



「だが……」



「お忘れですか?」



イシューがそっと言葉を付け加えた。



「あなたは魔界に必要不可欠な存在です。だからこそ、私たちは命をかけてあなたを守ります」



魔界に必要不可欠、か。

そう言われると、どうしても重責を感じてしまう。

洗脳状態の操り人形に向かってそう言われても、複雑な気持ちになるだけなのだが。



「わかった……今日は休む」



ヴェイグの低い声で宣言し、(まぶた)を閉じた。


明日になったら、また新しい一日が始まる。

きっとまた、気の重い任務などが待っているのだろう。


けれど、瞼の裏に映るのは──市場で見かけた人々の笑顔や泣き顔。


『チャンスがあれば、またあの戦慄した影の男について調べるべきか。正体は分かっているが目的が分からない……』


なぜ、僕をじっと見つめていたのだろうか。


窓の外から、夜風が瘴気を運んでくる。

ヴェイグの深藍色(ふかあいいろ)の長髪が、かすかに揺れた。


答えは明日以降、探すしかない。

深い闇の底へ、ゆっくりと心地よい眠りが訪れようとしていた──。


★1週間連続毎日投稿・実施中!


第13話をお読みいただきありがとうございました!

騒動を片付いたと思ったらまた、新たな問題が発生!?いや、ただのスタッフの遊び心なのか?闇騎士ヴェイグは開発スタッフのお気に入りに違いないと思ってるエルニアでした。


次回の第14話は、【明日のお昼(12:00頃)】に投稿予定です。


※当初「1週間連続投稿」とお知らせしていましたが、

物語のキリが良いところまで皆さんにお届けしたいため、急遽【火曜日】まで毎日投稿を延長することにしました!

定期更新のスケジュール(火・金・日)などについては、最終日となる火曜日の後書きにて改めてお知らせいたします。まずは火曜日まで、ノンストップでお楽しみください!


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明日もどうぞよろしくお願いいたします!


※本作は「なろうチアーズプログラム」に参加しています。画面下のボタンから応援チアをいただけると嬉しいです!

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