12 到着
浜川優空恵の場合2
氷鬼ごっこ最終日、7月31日、朝の6時。麻林家にはミス、玲点、チェック、優空恵が集まっていた。
「ペケは?」
玲点は辺りを見渡すも、姿はなかった。家内にいるのだろう。
「バツと最後の時間を過ごしたいんだって」
「そっか。……今日を逃げきればもう怯えることはない」
玲点は確かにそういった。
皆は木刀や箒、傘などを持ち寄っていた。
食事もお手洗いも済ませた、丸夫と佳代子、夢は車でコミュニティのいる競技場を目指した。ミスの運転で集まったメンバーも後に続いた。競技場まで2時間かかった。
着いたのは稀に見る広い体育館のような場所だった。強化ガラスで内側と外側で仕切られている。
競技場でゴーグルを持っているコミュニティの男に見られた。鬼のゴーグルをモデルにした、自作のゴーグルらしい。
「麻林ミスと浜川優空恵さんは入れません。鬼の可能性があるので。それ以外の方はどうぞ中に!」
非常に厳格な声で優空恵とミスは止められた。
「あたしは一人暮らし、優空恵ちゃんはセンターに入ったのよ、それに鬼の服装してないじゃない」
「ですが、証明できるものはありませんよね? そのバッグの中に爆弾が入っていて強化ガラスを突き破り、鬼の仲間を中に入れるかもしれません」
「いいよ。お姉さん。すみません、この前で待っているのは、別にいいですか?」
「それならいいよ、お嬢ちゃん」
「そうします、ご飯はどうしますか?」
「コンビニまで買いにいく? お姉さんが奢ってあげる、はい千円」
ミスは優空恵に先輩風を吹かせる様に言うと、お金を差し出した。
「千円?」
「買ってきてくれる? 私カレーパンとコーンマヨパンとお茶ね、お釣りはあげるから」
「どこにコンビニが?」
「さっき見なかったの? ここから500メートルくらいのところに道なりに行けばあるからさ。頼んだよ」
ミスは木陰にケータイを手にして座り込む。
仕方ない。
優空恵はトボトボと歩きだした。そして暑い中、コンビニまでやってきた。
店内は冷房が効いていて涼しかった。
パンをいくつかレジに運ぶ。前の人は古い作業着で髪はパンチパーマだ。個性的な人物がいるのを優空恵は見逃さなかった。
清算して、店を出た。目の前にさっきの作業員が先導するように歩いている。
よく見ると両手に溢れそうに入った食料と飲み物を持っていた。
競技場まで到着しそうになると作業員は裏の道を通っていった。
気になり後を追った。
いきなり、作業員は優空恵の身長ほどある石垣をひょいと乗り越えた。
優空恵は石垣を背伸びしてみてみた。
反対側でピッケルとシャベルを持っている2人がいた。鬼の格好をしている。そしてコンビニから戻った作業員もいた。
大変だ! 裏側から鬼が入ろうとしている。
優空恵はミスにこっそりと伝えて、見てもらった。
「裏側は脆そうだ。あの子達に電話した?」
ミスは玲点に電話をした。
こんなに近くにいるのに電話が繋がらない。電源が切られているようだ。
時刻は9時半だ。
「繋がらない、電源が入ってませんって」
「どうしよう!」
「どうかしたのかい?」
声をかけたのは里津だった。軽くパーマがかった髪が揺れた。
「あ! す、杉浦先輩! こんなところで何を?」
「家族を鬼から逃げさせようと思ってね。麻林さんも?」
「私は入れなかったんです、鬼かもしれないって言われて。この子も」
「大変なんです、裏側からこの競技場を壊している鬼がいるんです」
優空恵は一生懸命言葉を交わす。
「警察に言っても未介入だと思うよ。俺がやっつけてくる」
里津は意気揚々と曲がり角を曲がった。
「見に行く?」
「うん!」
2人は曲がり角を曲がろうとした。だが曲がれなかった。
シューーー!
スプレーが2人の顔面をおそった。催涙スプレーのようで涙で顔が濡れた。
「わああああ」
「きゃあああ」
2人はクロロフィルムをかがされて意識を失った。
「お前達、しっかりしろよな」
里津の声が最後に聞いた声となった。
斎藤玲点の場合5
玲点は疑問に感じていた。
コミュニティ競技場は体育館以上に広いが、来ている人数も多いので、実際には狭苦しかった。
ビュッフェが中にセッティングされており、お手洗いもある。幼児用の遊び場もだ。
何故か外部との連絡を断ち切ってしまわなくてはならないと言われて電源を落としたケータイを回収された。
カンカン
何か音が聞こえる。
コミュニティの管理人によると裏の家が取り壊されているそうだ。
10時になる。
何もすることはできないので眠くなってきた。
ブランケットも用意周到に置いてあった。
12時になるまで眠っていよう。
11時になる頃だった。
ガシャン! ガタタタン、ドカーーン!
大きな音が鳴り響いた。
玲点は飛び起きた。
「鬼だ!」
20メートル右に穴が開いている。そこはまるで蜂の巣を触ったかのように逃げ惑う人々がいた。そして鬼がいた。
皆触られて、意識を落としている。
「ここを開けてくれ」
若い男性の声が不協和音に混じって聞こえてくる。
外側から閉められた強化ガラスは叩いてもびくともしない。
混沌とした世界だ。
玲点は夢と佳代子と丸夫を空間を開けて、守っていた。
しかし、圧迫される。
俺ここで死ぬのかな?
そう思っていたときだった。
「皆、大丈夫!?」
そんな中、助けが来た。
宮内淳子だった。拳銃は突きつけて、スーツの主催者らしき男に施錠ボタンを押させていた。
強化ガラスがあがっていく。押し寄せた人の波に押されて出ていく。
「ミスさんと優空恵ちゃんは!?」
「攫われる様子、私がYUOTUDEにあげといたから、多分大丈夫です」
表情から見て、丸夫と佳代子と夢はタッチされずに済んだようだ。
七師優の場合2
最後の日、7月31日、12時。王子が閉会式でテレビ局に行っている時間でもあり、あるものは絶望、あるものは幸福を感じている時間でもある。
まもなく氷鬼ごっこの終了のベルがなった。
『全国の皆さん12時を迎えました。氷鬼ごっこはいかがだったでしょうか? コールドスリープにかかられた人は100年後に蘇ります。なので、彼ら、彼女らの宝物を受け継いであげましょう。それでは閉会式を行います』
守は前に出た。
『捕まったコールドスリーパーの数は九千五百万人。念願の一億には惜しく届かなかったが、人を100年後に全滅しているかもしれない人間を再復興できる機会かもしれない。国民の未来に祝福しようではないか! それでは1番多くの子を捕まえた鬼を発表する〜〜〜〜』
王子が元気に対応する。
「薬、全然効いてないな」
「早く殺さないと、我々が先に殺されてしまう」
「じい、なんとかしないか!?」
口々に言うのは元国王のお気に入りの召使達だ。
手紙にかいてあることは話した。しかし、睡眠薬で眠らせて、コールドスリープにかけるというのは疑り深い王子にはなかなかできなかった。なので、体調を少しずつ悪くして、その吐き気止めの薬に睡眠薬を混ぜるという思惑だった。
そして帰ってきた王は床についた。
「お薬をどうぞ」
「ああ、助かる」
王子は薬を飲み込んだ瞬間、周りの兵士にロープでぐるぐる巻きされた。
「謀ったな! じい」
王子は眉間にシワを寄せる。
「超強力な睡眠薬でお眠りください」
「誰か、誰か、助けたものに褒美をやろう」
「氷鬼ごっこを止めなかったのに、信頼は地の底じゃぞ」
「死にたくない」
「実験がうまくいけば、死にはしませんのじゃ」
やっと、悪の権化を排除することができる、次に王になるものは誰なのじゃろう?
「次王になる人は誰になるのですかい?」
召使はじいの思っていることと同じことを会話し始めた。
「思い切って王政を止めるのはどうじゃ?」
「それがいい。ここを展示用の宮殿にしてお金を集めよう」
「皆、家族のもとに帰るのじゃ。退職金を国王の倉庫から売れるものを売って払おうぞ」
「そうだ、そうしよう」
「それに伴い、国民皆の意見で議員と大統領を決めるのじゃ」
「さっそく、13時になったら、テレビのマスコミに報告しておこう」
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