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イヤです  作者: 倉名依都
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アカザ村での薬師ライフ(2)

お昼の鐘が鳴ったら門番小屋を出て、ジャンニの別邸で調合する日々が続いた。

クロウは別邸に着いて挨拶すると、ジャンニとアニタの昼食が終わるまで調合部屋を掃除して待った。

ジェンニは身の回りのことをするときにわずかな時間起き上がるだけで、ほとんどベッドに横になる毎日だ。

アニタが顔を出したら、その日調合する薬の種類と量を決めるためにジェンニのところに行き、アニタがその量を作るための薬草を揃えるのを待つ。

調合に必要なだけの薬草が揃わない日もあった。その時はジェンニに相談して新しく量を決めてから調合にとりかかった。調合した数量は、その日のうちに記録に残すことにした。



寒さが身に染みるようになり、足に不調を抱えるトニオは顔をしかめることが多くなっていた。

「あのー、トニオさん、ちょっと右足を見せてもらってもいいですか?」

マユは思うところがあってトニオに頼んでみた。

「お、クロウ、解呪のポーションでも作ってくれるのか」

「いえ、あの、たぶんこれは呪いじゃないです。治癒が効くなら薬が作れるかもしれません」

「おお、そりゃ願ってもないがな、まあ、期待しないで見てもらうか」

トニオは痛みをこらえながらブーツから足を抜き、マユは慎重に靴下を脱がせて足の腫れを観察した。治癒のポーションを振りかけて様子を見る。


この病気は知っているかもしれない、とマユは思った。これは、祖父と祖父の弟が患っていた病気ではないか。

「トニオさん、同じように足が腫れた人を知っていますか?」

「ああ、冒険者は年を取るとなる奴がいる。俺はちょっと早いがな。

それで、倒してきた魔獣の呪いじゃないかと言われたりする」

「え、っと、それなら、女性冒険者はどうですか、女性でなった人いますか?」

「そう言われてみれば知らんな」

「治癒ポーションは効くんですよね、それで、治りきらないけど、また飲むと効くんですよね」

「そうだ」


マユはまず、治癒ポーションを細かく磨り潰した粘土に混ぜ込んだ湿布を試作して、トニオの足に貼れるようにした。治癒ポーションは腫れを治すだけだから、瓶一本を飲まなくても湿布にして貼れば十分に効果があるはず、という考えは当たっていた。

高価なうえに入手が難しい治癒ポーション1本で湿布は何枚も作れると聞いて、痛みが改善したトニオは大喜びだ。


マユはよく考え、トニオに明るい見通しを示してもいいと判断した。

「トニオさん、もう一度調べてみますけど、これは病気で僕は薬を作れると思います。

ただ、副作用が悪質で、え~っと、何て言えばいいかな、薬を作るとき毒を薄めて混ぜることがあるって知ってますよね」

「ああ、もちろんだ」

「強い薬で一度に飲んでもらえなくて、少しずつ長い期間飲んでもらうんです。悪い効果が出ないように飲む量を調整しなくちゃならなくて、その間僕がずっと見守らせてもらうことになるんです。

薬を飲む間隔が長くなって、薬だけ渡せるようになるまでに1年以上かかります」

「薬をやめたらどうなる?」

「はい、残念ですが、治まっていてもまた腫れてきます」

「うーむ、そうか」


ウッドハウスに帰って一般向け医学事典をよく読み、さらにもう少し詳しい本をイメージして巨木に魔力を注いだら、10冊以上の専門書が実ってげっそりした。医学論文を読む能力などあるはずもないので、異空間収納に直行だ。

専門書をおざなりに収穫していると製薬会社の小冊子が何冊か混ざっているのを見つけた。それは真剣に読んだ。たしかに、祖父や大叔父、祖父の世話をした祖母の話と一致していて、マユは自分の考えでいいだろうと決意した。


「トニオさん、念のために鑑定したいので、血を1滴もらっていいですか?」

「ああ、いいとも」

ナイフで指を切り、皿の上に血を垂らす。真由はもう1枚の皿に自分の血を垂らし、血液全体に対する尿酸の割合、とか、難しいことを考えながら鑑定、比較した。トニオと真由の血液に含まれる尿酸の量は大きく異なっていた。


「トニオさんの病気は痛風という名前です。

痛みは主に足の親指の根元あたりが腫れることで始まりますが、長く放置すると足首まで腫れるようになり、関節が変形することもあります。僕の生まれた国では患部に風が当たっても痛むという強い痛みで知られています。

治癒ポーションで完治しないのは、病気の原因が腫れている部分にあるのじゃなくて、尿酸を作る肝臓、尿酸を体から外に出す機能など体全体のバランスの問題で、異常ではないからでしょう」

「そうか、すごいなクロウ。おまえの生まれた国では薬があるのか」

「はい」

マユはまたひとつ異世界の神さまにお礼を返すことができた。

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