【88】 本当の理由
太陽は沈んだ。
夜空には大きな三日月が姿を現し、闇を支配していく。そんな月下を闊歩し、セイフの街のスュール教会へ入った。
「ここなら人もいない」
「あ、あのさカイト。こんな人のいない教会に連れ出して……あたしにえっちなことする気なの? それはちょっと困るっていうか、ドキドキがヤバいんだけど……」
「んなことするかっ!!」
「え……そ、そう」
なぜションボリする。
ソワソワしているソレイユは椅子に座り、俺もその隣へ。
「ひゃぁ……ち、近いわよ」
「最高レベルの男が好きじゃなかったのか?」
「……好き。でも、レベルはもうあんまり関係ないかも」
頭を俺の方へ預けてくるソレイユ。良い匂いがする。
今俺は、彼女を独占している。みんなの憧れを。
「ひとつだけ確認したい。ソレイユ、お前は男遊びなんてしていないだろ。俺と出逢ってからはそんな素振りもないし。どこかへ行っている気配はあるけど、今日のような御粧しはしていない。それにさっきだ。中堅ギルドとはいえ、あの優男のセントラルを拒絶すらしていた。あとお前、経験ないってなんだよ」
「…………もう隠せないか」
「え?」
「ごめん。男遊びは大ウソ。彼氏なんていたこともない未経験よ。まあ、男とか作る気もないけどね。強いていえばカイトでいっかな~って」
「!?」
やっぱりか。
おまけのカミングアウトはビックリしたけど。
「どうして、モテないとか男遊びしてるとか言ったんだよ」
「――オービット戦争。【帝国・レッドムーン】と【共和国・ブルームーン】は戦争中なのよ。毎日、どこかの街が巻き込まれているの。それでさ、孤児とか出るのよ。あたしは、そんな可哀想な戦災孤児たちを支援しているの。孤児院ってお金掛かるのよね~…」
「――――――」
…………そういう事情だったのか。
「だからね、あたしは皇帝に直談判して【ワンマンアーミー】の特権を付与してもらったの。そしたらさ、あっさりオッケー。
さすがの皇帝も、誓約を固く結ぶ【エクリプス家】をないがしろには出来なかったわけね。だからこれはあたしの使命。やらなくちゃいけないの。あの子たちの為に。だから、お金が必要。レベルを売ってでもね」
そうか――それでソレイユは『Lv.2000』も売ったのか。




