【89】 世の為人の為
俺は勘違いをしていた。
ソレイユはすごい騎士だ。
自らのレベルを売ってまで人助けをする。そんな献身的だとは思わなかったからだ。彼女はレベル売却時に『男遊び』だと口にしていたが、その真相は、世の為人の為にレベルを上げ、俺を頼って来たという事だった。
まるで噂に聞く聖女だな。
「……ソレイユ、すまない」
「なんで謝るの」
「俺は、今までお前を傷つけるような心無い言葉を……悪かった」
「細かいことは気にしない気にしない。あれくらいが丁度いいのよ。ていうか、帝国じゃマナーとかで堅苦しいのなんのでさ……だから、気兼ねなく会話できるみんなと居る方が何倍も楽しいわ」
そうクスクス笑うソレイユは、本当に楽しそうだった。
「そうか。それにしても――子供たちの為か。孤児院はどこに?」
「帝国よ。あたしが作ったの。だからさ、これから向かうなら……カイトにも見て欲しいかなって」
「分かった。約束だな」
「ありがと。――それでさ」
急に表情を変え、鋭い目つきで遠くを睨むソレイユ。背中に隠し持っていたらしい聖剣『マレット』を取り出し、いきなり教会の外へ投げつけた。
マジでいきなり!
「りゃぁ――――――!!」
ハンマー聖剣は『誰か』の顔とかにでも掠めたのだろうか、
「うあぁあぁっ……!!」
そう男の悲鳴が聞こえた。
「盗み聞きされていたみたい」
「はぁ? 誰だよ……って、セントラル!」
まるで『お前が犯人だ』と言わんばかりに月光が味方をし、そいつを照らしていた。……ああ、あの茶髪。見知った顔は間違いない。
誰が何と言おうとセントラル本人だ。
ソレイユの予想外の猛反撃に怯えるセントラルは、顔を紫色に変色させ逃げ出した。――てか、おい。盗み聞きとはサイテー野郎だな。しかもストーカーもされていたとか……気持ち悪い。
「…………」
ソレイユの顔が曇る。
心なしか恐怖で震えているようにも見える。
「カイト、あたし……怖い」
まあ……あそこまで粘着されるとはな。そりゃ怖いわな。
――そうか。
だから俺をこんなに頼って……俺しか信用できないと言ったんだ。
やっと全てが繋がった。
今彼女を守ってやれるのは俺だけだ。
「俺が守ってやるからな、ソレイユ」
「うん。やっぱりカイトを頼って良かったわ……」
まるで子供の様にして俺の腕に縋り付いてくる。そんな健気に細い指で握って……ちょっと可愛いなって俺は思ってしまった。
しかしそれよりも。
またヤツに尾行されて、ルナやミーティアにまで被害が及ぶかもしれないと考えると――そろそろ帰った方が良さそうだな。




