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第3話 初めての街へ

転生したけどレベル1に戻る俺。新魔法をつくるスキルで最強を目指す も書いてますのでよろしくお願いしますm(_ _)m



 森を抜ける頃には、太陽がすっかり高く昇っていた。


「……町がある」


 街道の先。


 小さな城壁に囲まれた町が見える。


 キラは思わず足を止めた。


 王都を出てから、初めて見つけた人の暮らす場所だった。


「ソラ、あそこに行ってみよう」


「ぷる!」


 キラの肩に乗っていたソラが元気よく跳ねる。


 昨日までなら、町へ入ることすら怖かっただろう。


 けれど今は違う。


 隣にはソラがいる。


 それだけで少しだけ勇気が出た。


-----


 町の名前は、ミレア。


 王都から馬車で二日ほど離れた、小さな町だった。


 入口には二人の門番が立っている。


「止まれ」


 声をかけられ、キラは足を止めた。


「……」


 怖い。


 怒られるかもしれない。


 追い出されるかもしれない。


 キラは無意識に胸元のペンダントを握った。


「子供一人か?」


「……はい」


「親はどうした?」


 キラは答えに迷った。


 何と言えばいいのだろう。


 父親に捨てられました。


 家から追い出されました。


 そう言えばいいのか。


「……いません」


「家出か?」


「違います」


 キラは首を横に振った。


「僕は……」


 言葉が詰まる。


 そのとき。


「ぷるっ」


 肩の上のソラが顔を出した。


 門番が目を丸くする。


「スライム?」


「はい」


「お前、テイマーなのか?」


「……たぶん」


「たぶん?」


 門番は苦笑した。


 キラは俯いた。


 自分でも、まだよく分かっていない。


 すると、もう一人の門番が尋ねた。


「従魔証は持っているか?」


「……ありません」


「そうか」


 門番は少し考えた。


「子供一人でここまで来たのか?」


「はい」


「……そうか」


 門番はキラの薄汚れた服を見た。


 靴もボロボロ。


 身体も痩せている。


 明らかに普通の子供ではない。


「身分証は?」


 キラは首を横に振った。


「何も……」


「……」


 門番二人が顔を見合わせた。


 普通なら、身分証のない者を簡単には入れられない。


 だが――


「坊主」


「はい」


「腹、減ってるだろ」


「……!」


 キラのお腹が、


 ぐぅぅぅ。


 と鳴った。


「……」


「……」


「……すみません」


 キラが真っ赤になる。


 門番が笑った。


「ははは! 謝ることじゃない」


 門番は懐から小さなパンを取り出した。


「食え」


「え?」


「子供が腹を空かせてるのを見捨てるほど、俺たちは腐っちゃいない」


「……いいんですか?」


「ああ」


 キラは両手でパンを受け取った。


「ありがとうございます……!」


 一口食べる。


「……おいしい」


 涙が出そうになった。


 昨日もパンを食べた。


 でも、今日のパンは違う。


 誰かが自分にくれたパンだった。


 見返りもなく。


 怒鳴られることもなく。


「ゆっくり食え」


 門番は優しく言った。


-----


 町へ入ったキラは、まず冒険者ギルドへ向かった。


 門番に教えてもらったのだ。


「お金がないなら、ギルドで仕事を探すといい」


 冒険者ギルド。


 キラには初めての場所だった。


 扉を開ける。


 ガヤガヤとした声が聞こえてくる。


 大人たちが武器を持って歩いている。


「……怖い」


 キラが小さく呟く。


「ぷる」


 ソラが頭の上で跳ねた。


「うん」


 キラは一歩踏み出した。


 受付へ向かう。


「あの……」


「はい?」


 受付にいた女性が笑顔を向けた。


「冒険者登録をしたいんですが……」


「はい。年齢は?」


「十歳です」


「十歳……?」


 女性の笑顔が固まった。


「保護者の方は?」


「いません」


「……」


 女性は困った顔をした。


 すると別の受付嬢がやってくる。


「この子、昨日から一人で旅をしてるみたい」


「えっ?」


 キラは少し驚いた。


 門番が話してくれたらしい。


「危険ですよ」


「でも、僕……仕事をしないと」


「どうして?」


「食べるものがないからです」


 受付嬢はキラをじっと見る。


 そして、ソラを見る。


「そのスライム……」


「僕の仲間です」


 キラはすぐに答えた。


 受付嬢は少しだけ目を細めた。


「仲間?」


「はい」


 迷いのない返事だった。


「この子がいなかったら、僕は今頃どうなっていたか分かりません」


 受付嬢は優しく笑った。


「そうですか」


 そして一枚の紙を取り出した。


「冒険者登録は十歳でもできます。ただし、危険な依頼は禁止です」


「分かりました!」


「それと――」


 受付嬢がソラを見る。


「従魔登録も必要ですね」


「従魔……?」


「テイマーが連れている魔物は、登録しておかないと町で騒ぎになることがあります」


「はい」


「では、まずこの魔道具に手を置いてください」


 キラは言われた通り、透明な水晶へ手を乗せた。


 淡い光が浮かぶ。


『種族:人族』


『年齢:10』


『職業:テイマー』


『魔力:低』


『戦闘能力:低』


『固有スキル:――』


 そこで水晶が、


 ピシッ。


「え?」


 ヒビが入った。


「……」


 受付嬢が固まる。


 水晶の文字が乱れ始める。


『解析不能』


『解析不能』


『解析不能』


 そして最後に――


『固有スキル:測定不能』


 水晶が砕けた。


 ガシャァン!


「……」


 ギルド中が静まり返った。


「え、えっと……」


 受付嬢が慌てて立ち上がる。


「少々お待ちください!」


 奥へ走っていった。


-----


 しばらくして。


 ギルドの奥から、一人の老人が現れた。


 白い髭。


 長い杖。


 そして、鋭い目。


「この子か?」


「はい」


 老人はキラを見た。


 そして――


 ソラを見る。


「……なるほど」


 老人がソラに手を伸ばす。


 ソラはキラの肩から降り、老人の手を避けた。


「ほう」


「何か分かるんですか?」


「少しな」


 老人はキラを見た。


「坊主。お前はそのスライムと、どうやって契約した?」


「分かりません」


「分からない?」


「一緒にパンを食べただけです」


「……パン?」


「はい」


 老人は黙り込んだ。


 そして小さく呟く。


「まさかな……」


「?」


「いや」


 老人は笑った。


「面白い子供だ」


 そのとき。


 ギルドの扉が勢いよく開いた。


「誰か! 助けてくれ!」


 血だらけの男が飛び込んできた。


「森で……魔物に襲われた!」


 ギルド内が騒然となる。


「何体だ!」


「分からない!」


「場所は?」


「北の森だ!」


 男は息を切らしながら叫んだ。


「子供が一人、まだ森の中にいる!」


 キラの表情が変わった。


「……子供?」


「そうだ!」


 キラはソラを見る。


 ソラもキラを見た。


 昨日。


 自分が一人だったとき。


 ソラがそばにいてくれた。


 だから今度は――


「僕が行きます」


「え?」


 受付嬢が驚く。


「駄目です!」


「でも……」


「あなたは十歳でしょう!」


 キラは拳を握った。


 怖い。


 もちろん怖い。


 けれど。


「一人で怖がっている子がいるなら……」


 キラはソラを抱きしめた。


「助けたいです」


 その言葉を聞いた老人が、静かに笑った。


「なるほど」


「……?」


「やはり、あの伝承は間違っていなかったのかもしれんな」


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