ダンジョン突入前日
S級ダンジョン突入の前日、俺はまたしても麗華の家にお泊まり会に呼び出されていた。
「S級に挑む前は、英気を養っていかなくてはなりませんわ!」という麗華の一言で、天照の光のメンバー全員が集まったのだ。
広い屋敷のリビングで、俺たちはゲームをしたり、麗華の家のシェフが作った豪華な食事を楽しんだり、他愛のないお喋りに花を咲かせて過ごした。S級ダンジョンという未知の領域へ向かう緊張感はあるはずなのに、みんなと一緒に笑い合っていると、不思議と心が安らいでいく。
「これ、美味しいね! 光輝くんも食べてみて!」詩乃が差し出したデザートを食べると、甘さが口いっぱいに広がった。
「明日はいよいよだな。でも、今日はゆっくり休もう」俺がそう言うと、みんなも笑顔で頷いてくれた。
夜も更けてきて、俺は順番が回ってきたので、一人でバスルームへ向かった。
麗華の家のバスルームは、もはや温泉と呼べるほど広い。ジャグジーもついていて、湯船に浸かると全身の疲れが溶けていくようだ。
「はぁ…生き返る」
暖かいお湯に包まれ、独り言を呟いて目を閉じた。明日の不安、これまでの苦労、そして仲間たちの笑顔。色々な思いが頭をよぎるが、今はただこの温もりに身を委ねていたかった。
…その時だった。
ガララッと扉が開く音がした。
「え?」
目を開けると、そこには信じられない光景が広がっていた。
麗華の家のバスルームに、メンバー9人が全員入ってきたのだ。
しかも、全員一糸まとわぬ姿で。
「な、なななっ!?」
俺は湯船の中で固まった。視界いっぱいに広がる白い肌、揺れるおっぱい、むっちりとしたお尻、そして秘部を守る黒い茂み。百花繚乱とはこのことか。
のぼせそうだ。お湯の温度が一気に上がった気がする。
「もっと女の子の裸に慣れてもらわないといけませんわ!」
麗華が堂々と宣言しながら、真っ先に湯船に足を入れてくる。
「そうそう、いざって時に慌てられても困るしね」朱音も平然と続く。
「光輝、背中流してあげるよ」琴葉が無邪気に近づいてくる。
「…慣れろ」夜羽が淡々と隣に座る。
「あー、湯加減いい感じ〜」みどりが伸びをする。その胸もお腹も丸出しだ。
俺は目のやり場に困り、視線を泳がせるしかない。どこを見ても裸だ。可愛らしい下着姿ですら卒倒しそうな俺に、生きたままの全裸なんて刺激が強すぎる。
「お、お前ら、いくらなんでも唐突すぎるだろ!」
「男の子ってこういうのに弱いですよねえ」美咲が水面から顔だけ出してニヤニヤ笑っている。
「はやくこっちに入ってください」雪が手招きする。
「ふふ、緊張していますね」詩乃がクスクス笑う。
凛は無言だが、真っ赤な顔をして俺の反対側にちょこんと座った。
結局、俺は9人の全裸の美少女たちに囲まれて、湯船に浸かることになった。
香りも、温もりも、柔らかさも、全部が俺を包み込んでいる。正直、鼻血が出るかと思った。思考回路が焼き切れそうだ。これが天国か、それとも地獄か。
「もう、光輝ったら真っ赤よ」朱音が俺の顔をのぞき込む。
「あ、当たり前だろ! こんな状況で平然としてられるか!」
「ふふっ、可愛いですわ」麗華が俺の腕に自身の腕を絡めてくる。柔らかい感触が俺の腕を圧迫する。
「あ、あのな…」
限界だった。これ以上ここにいたら、理性のブレーカーが飛んでしまう。
「も、もう出るよ! 俺は!」
俺はそう叫んで、勢いよく立ち上がった。
しかし、湯船から出る瞬間、熱さと緊張で足がふらついた。
「あっ!」
バランスを崩し、手に持っていたタオルが床に滑り落ちる。
俺は咄嗟に体を起こしたが、その時にはもう遅かった。
俺の下半身が、湯気の向こうに露わになっていた。
しかも、さっきまでの裸の女の子たちとの密着状態のせいで、俺のアレはすでに大きくなっていた。
そして、それを9人の視線が一斉に捉えた。
時間が止まった。
沈黙。
俺のアレが、湯気の中で天を衝くようにそそり立っている。
「…………」
みんなの視線が俺の下半身に釘付けになっている。瞳孔が開いている。
俺の脳内も真っ白になった。
「あ…う…」
その時、9人の心の中で、同じ言葉が叫ばれていたはずだ。
(お、大きい!)
女の子たちの喉まで出かかったその言葉は、しかし声には出なかった。ただ、全員の顔が瞬時に茹でダコのように真っ赤に染まっていった。
凛は耳から煙が出そうだし、麗華は口元を押さえて固まっている。琴葉でさえ言葉を失っている。
「す、すみませーん!」
俺は脱兎のごとくバスルームから逃げ出した。落ちていたタオルを拾う余裕もなく、剥き出しのまま走り去った。後ろで「きゃあああ!」という悲鳴が聞こえた気がするが、振り返る余裕などなかった。
その夜、俺は布団の中で死んだように眠った(あるいは気絶した)。翌朝、目を覚ました時、昨夜の住人たちと顔を合わせるのが酷く気まずかったのは言うまでもない。
しかし、変な隙ができたのか、それとも究極の恥を共有したのか、空気はむしろ以前より温かくなっていた気がする。
朝食の席で、誰も昨夜の件には触れなかったが、俺たちの間に確かな絆が深まったことだけは確かだった。
「じゃあ、行ってきます」
屋敷の前で、俺たちはS級ダンジョンへと出発した。
「S級ダンジョン攻略したら、またみんなで遊ぼうな!」
俺が振り返って言うと、みんなも笑顔で首を振った。
「もちろんよ!」「さっさと攻略するからね!」「いいとも!」
最後に朱音が、ちょっと不安そうな顔で言った。
「…フラグになりませんように」
「バカ! そういうこと言うなよ!」
俺はツッコミを入れつつ、みんなと笑い合った。
大丈夫。俺たちは必ず帰ってくる。そしてまた、こうして笑い合えるはずだ。




