S級パーティ、アマゾネス
俺たちは、S級でも大丈夫なのか? それが一番の不安だった。
誰もいなくならないように。
だから、安心する材料が欲しかった。S級のリアルな情報と、俺たちの戦力が通用するという確信が。
電話口の萌香さんは快諾してくれた。
「今パーティハウスにいるから来いよ。S級ダンジョンの動画を見せて解説してやる」
ありがたい。俺は場所を聞き、すぐに向かった。
教えられた住所は、探索者協会が管理する高級マンションの一室だった。
「これがS級パーティの拠点か…」
俺は気後れしながらインターホンを押す。
「おう、入れ入れ!」
重厚なドアが開くと、広大なリビングが広がっていた。家具も豪華で、まさに一流探索者の住まいだ。
リビングには、アマゾネスのメンバー全員が集まっていた。
俺が入ると、一斉に視線が集中する。
「ハーレム王だ!」
「かわい〜!」
「若いねー、幾つなの?」
「良い男じゃない、お姉さんと遊ぶ?」
「萌香さん、いいの? 食べて良し?」
熱烈な歓迎というか、品定めというか、とにかく凄まじい勢いで囲まれた。
色気と迫力のある大人の女性たちに囲まれて、俺は頬を赤らめながら挨拶した。
「はじめまして、神代光輝16歳です」
「16!? 期待以上だねぇ」
彼女たちはケラケラと笑いながら、自己紹介を始めてくれた。
「宮本萌香だ。盾と剣で前衛をしている。さっき電話したよな」
筋肉の鎧を纏った彼女が、ドンと胸を叩く。
「井沢栞よ。剣士で萌香さんと同じ前衛ね」
長身でクールな美人が、サラリと髪をかき上げる。
「長島真奈美。回復担当よ」
眼鏡をかけた落ち着いた雰囲気の女性が微笑む。
「河合優子。氷魔法が得意なの」
小柄だがどこかミステリアスな雰囲気の女性が手を振る。
「山下香織。スカウトだよ」
鋭い目つきだが親しみやすい笑顔の女性がウィンクした。
全員が20代前半くらいの、成熟した女性たちだ。色っぽい。これがS級の貫禄か。
俺は彼女たちにソファに座らされ、S級ダンジョンの動画を見せてもらうことになった。
巨大なモニターに映し出される戦闘映像。
強烈な魔法攻撃、苛烈な物理攻撃。S級モンスターの動きは速く、一撃が重い。
俺は食い入るように見つめながら、自分たちの戦力と比較する。
一通り見終わった後、萌香さんが俺の肩をポンと叩いた。
「ハッキリ言うぞ。天照の光の戦闘力は、私たちより上だ」
「えっ?」
俺は思わず聞き返した。
「戦闘だけじゃない。総合でもかなり上のレベルだよ。あんたたちの連携と火力は異常だ」
香織さんも深く頷いている。
「あのちっこいスカウトの子…みどりちゃんか。何あれ?『嫌な予感がする』って罠を見つけるなんて、凄すぎよ。スカウトとしての才能が爆発してるわね」
「みどりは危険察知のスキルがありますから」俺が答えると、「それよ!」と香織さんは指を差した。「あれがあるだけでダンジョン攻略の安全率は段違いに上がるのよ」
萌香さんは腕を組み、ニヤリと笑った。
「まあ、今の時点でもS級ダンジョンは楽に攻略出来るだろうな。太鼓判を押してやるよ」
S級パーティのリーダーからそう言われると、不安が一気に消えていくようだった。俺たちならやれる。仲間を守り抜ける。
「ありがとうございました! 参考になりました」
俺は深く頭を下げ、立ち上がった。
「それじゃあ、俺はこれで…」
帰ろうとすると、萌香さんが不満そうな顔をした。
「えっ? 泊まっていかないのか? 全員で相手してやるぞ?」
周りのメンバーもニヤニヤしながら俺を見ている。
「若い精を吸わせておくれよ」「一晩中たっぷり可愛がってあげるわよ」
大人の色気ムンムンの誘惑攻撃に、俺はタジタジになった。
心臓が早鐘を打つ。凄く嬉しいお誘いだ。正直、蕩けそうになる。でも。
「あ、ありがとうございます…皆さんキレイで嬉しいですけど…初めての相手はもう決めてあるんで…すみません!」
俺は顔を真っ赤にしながら、必死に断った。
一瞬の沈黙の後、萌香さんがブッと吹き出した。
「ははっ! 冗談だよ! そんなに真っ赤になるなって」
彼女は腹を抱えて笑っている。
「で? 誰なんだ? メンバーにいるんだろう?」
ニヤニヤしながら聞いてくる。逃げられない。
俺は観念して、小さく答えた。
「…回復担当の子です」
琴葉だ。彼女が追放された俺について来てくれたあの日から、俺の中では決まっていた。
「あー、最初からいた子か」萌香さんは納得したように頷いた。「あの子なら可愛いしな。応援してやるよ」
彼女は優しく俺の背中を叩き、玄関まで送ってくれた。
「S級で無双している配信、楽しみにしてるからな」
「はい! 負けませんよ!」
俺は力強く答え、ハウスを後にした。
外に出ると、夜風が火照った頬に心地よかった。
不安は消えた。代わりに、確かな自信と決意が胸に満ちている。
俺たちはS級に行ける。そして、必ず全員で帰ってくる。
明日から始まる新たな戦いに向けて、俺は拳を握りしめた。




