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ハズレスキルだと追放された少年 最高神の加護を受け、美少女たちと最悪の厄災に立ち向かう  作者: ミコジ


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同じ夢を見る

秋の気配がダンジョンの冷たい空気に混じり始めていた。蝉の鳴き声は遠のき、木々の葉が色づき始める頃、俺たちの日常は確実に、しかし緩やかに変化していた。


初めはただの「結城さん」「神代くん」という呼び方から、いつの間にか「琴葉」「光輝」と名前で呼び合うようになっていた。半年という月日は、俺たちの距離を縮めるのに十分すぎる時間だった。拓也たちに追放されたあの日の無力感は、もう遥か彼方の記憶だ。交代でトドメを刺し、肩を並べてレベルを上げる日々は、俺たちに確かな絆と、対等な信頼を与えてくれた。


「光輝、右から来るよ!」


琴葉の声が洞窟の反響に混じって響く。半年前なら恐る恐る短剣を構えていた彼女は、今では迷いなく前線に立ち、ゴブリンの動きを的確に封じ込んでいた。


「ああ、わかってる!」


俺は剣を振り上げ、弱ったゴブリンに走る。半年前の俺なら考えられなかった動きだ。レベルが上がるにつれて、身体は軽くなり、感覚は鋭敏になっていた。


剣がゴブリンの急所を捉える。獣の悲鳴と共に、体が光の粒子となって弾ける。


《レベルアップ》


その瞬間、俺の体が強烈な光に包まれた。今までのレベルアップとは明らかに違う。視界が真っ白になり、体の内側から熱い何かが溢れ出してくるような感覚。


「光輝!」


琴葉の心配そうな声が聞こえるが、目を開けることができない。光が収まるまで、数分かかったかもしれない。荒い息を吐きながら、俺はステータス画面を開いた。


レベル:5

スキル:照らす

加護:天照大御神


「…え?」


思わず声が漏れた。スキルが「分ける」から「照らす」に変わっている。そして、加護の欄には見慣れない文字が刻まれていた。


「光輝、どうしたの? 今の光?」


駆け寄ってきた琴葉に、俺は震える声で言った。


「琴葉、見てくれ。俺のステータス…」


彼女が俺の目の前にある空中のウィンドウを覗き込む。その瞳が大きく見開かれた。


「天照大御神? 光輝、これって、日本の最高神じゃないですか!」


「ああ、そうだ。でも、なんで俺に…」


海外のダンジョンでは、一神教の神の加護を受けた探索者が、規格外の力を発揮して暴れ回っているという噂を聞いたことがある。彼らは「最強の個」と呼ばれ、一国の軍隊をも凌駕する力を持つという。対して日本では、八百万の神々が細分化され、それぞれが人間に加護を与えるため、突出した「最強の個」は生まれなかった。それが常識だった。


だが、今、俺の目の前にはその常識を覆す加護がある。


「すごいよ、光輝。こんな神様の加護がつくなんて…」


琴葉の声には、純粋な驚きと、少しの畏怖が含まれていた。俺は戸惑いながらも、スキルの変化に意識を向けた。「照らす」。名前からするに、ただステータスを分けるだけの能力ではないようだ。


「とりあえず、今日は帰ろう。このスキルの検証は明日やってみないと」


「そうだね。家に帰って落ち着いて考えよう」


俺たちはダンジョンから出て、いつものように別れを告げた。しかし、心の中には言いようのない不安と期待が渦巻いていた。


その夜、俺はベッドに入っても興奮と不安で眠れなかった。天照大御神。日本の最高神。その加護が意味するものは何なのか。スキルが変わったことの真意は。


まどろみの中で、意識が遠のいていく。その時だった。


──光輝。


優しく、しかし威厳のある声が響いた。ハッとして目を開くと、そこは俺の部屋ではなかった。まばゆい光に包まれた、神聖な空間。隣には、はっとした表情のパジャマ姿の琴葉が立っていた。


「琴葉? これ、夢?」


「光輝、私も…同じ夢を見てるの?」


俺たちが顔を見合わせる前に、光の中から一人の女性が現れた。黒髪を夜の闇のように長く垂らし、白い衣は月光のように輝いている。その佇まいは、ただ者ではなかった。


「よく聞きなさい、光輝。そして琴葉よ」


女性は静かに口を開いた。その声は、俺たちの魂に直接響いてくるようだった。


「日本に、厄災が降りかかろうとしています」


「厄災、ですか?」


俺は声を絞り出した。


「ええ。遠からず、この国を覆い尽くす闇が押し寄せるでしょう。それに対抗するため、私はあなたに力を分け与えました、光輝」


彼女は俺を真っ直ぐに見つめた。


「仲間を集めて強くなりなさい。必ず私の日本を守るのです」


「仲間を…でも、どうやって?」


「接吻をしなさい。そうすれば、相手はあなたの本当の仲間、あなたの眷属となるでしょう。あなたの力は、眷属を強化するものです。あなたの光が照らす時、眷属は最強になるのです」


「接吻…眷属…」


俺は言葉を反芻した。まるで神話の時代のような話だ。


「いいですね。必ず眷属を増やして、日本を救いなさい。頼みましたよ」


女性は微笑むと、光の粒子となって消えていった。


「──ッ!」


俺はベッドの上で飛び起きた。心臓が早鐘を打っている。額には冷や汗が滲んでいた。夢ではない。あれは、現実の啓示だ。


スマホの時計を見る。夜中の2時だった。どうしようか迷っていると、スマホが震えた。琴葉からの着信だ。


「…もしもし」


『光輝、今起きた?』


電話の向こうの琴葉の声も、震えていた。


『今天照大御神様が夢に出てきて…厄災とか、眷属とか…』


「俺もだ。俺も同じ夢を見た」


『やっぱり…。これ、本当に起こるのかな』


「わからない。でも、あの神様は本気で言っていると思った」


俺は受話器の向こうの彼女に、自分の決意を伝えるように言った。


「明日、話し合おう」


『うん、わかった。おやすみ、光輝』


「おやすみ、琴葉」


電話を切った後、俺は暗闇の中で自分の手を見つめた。眷属を作る力。接吻。その言葉が、妙に生々しく胸に残った。


翌日、俺たちは平日の放課後、誰もいない教室の隅で顔を合わせた。昨夜の夢について、改めて言葉を交わす。


「厄災か。俺たちに何ができるんだろう」


俺はため息交じりに言った。


「わからないけど…でも、やるしかないよね」


琴葉は前髪の間から、真剣な瞳で俺を見つめた。半年前の、自分に自信が持てなかった彼女とは別人のようだ。


「それで、接吻して眷属を作るって話なんだけど…」


俺は言葉に詰まった。顔が熱くなるのを感じる。


「眷属になってもいいよ」


琴葉が、小さな声で、しかしはっきりと言った。


「え?」


「私、光輝の眷属になってもいいよ」


彼女の頬も、俺と同じように赤く染まっている。


「でも、接吻だぞ?」


「…初めてだからね」


彼女は視線を伏せた。その仕草が、初々しくて可愛らしくて、俺の心臓が跳ねた。


「俺も…初めてだ」


俺は震える手で、彼女の分厚い前髪をそっとかき上げた。隠れていた瞳が、潤んだ光を帯びて俺を捉える。俺たちは互いの息遣いを感じるほどの距離に近づいた。


ゆっくりと、唇を重ねる。


柔らかい感触と、甘い香りが俺を包み込む。その瞬間、再びあのまばゆい光が俺たちを包んだ。体の奥底から熱い何かが溢れ出し、琴葉の中に流れ込んでいくのがわかる。彼女の魂と俺の魂が、深いところで繋がった感覚。


唇を離しても、まだ繋がっている感覚は消えなかった。いや、これからも消えることはないのだと直感した。


「…繋がったね」


琴葉がはあ、と熱い息を吐きながら呟いた。


「ああ。俺の力が、琴葉の中にあるのがわかる」


俺は彼女のステータスを見た。そこには、衝撃的な文字が刻まれていた。


光輝の眷属

加護:大国主命


「琴葉、見てみて。大国主命おおくにぬしのみことの加護だ」


「えっ? 私にも、神様の加護が…」


彼女は自分のステータスを見て、驚きに目を見開いた。大国主命。国造りの神であり、医薬の神でもある。回復役である彼女に、これ以上ないほど相応しい加護だった。


「すごい…。これなら、もっと皆を助けられるかも」


彼女の瞳に、希望の光が宿る。


「ああ。俺の光が照らす時、眷属であるお前は最強になる。天照大御神様はそう言った」


俺は拳を握りしめた。俺たちはもう、無力なレベル1の探索者じゃない。日本の最高神と、国造りの神の加護を受けた、新たな可能性そのものだ。


「行こう、琴葉。俺たちの力で、日本を守るんだ」


「うん!」


彼女の笑顔は、もう前髪の奥に隠されてはいなかった。爽やかな秋の風が教室の窓から吹き込み、俺たちの新しい旅立ちを祝福しているようだった。俺たちは手を取り合い、まだ見ぬ厄災に立ち向かうべく、第一歩を踏み出したのだった。

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