パーティの連携
D級ダンジョンの入り口に到着した俺たちは、早速配信の準備を始めた。雪がスマホを操作してドローンカメラを起動させ、黒い機体がブーンという音と共に空中に浮かび上がる。
「皆さん、こんばんは! パーティ『天照の光』です」
俺がカメラに向かって挨拶をすると、琴葉と雪も手を振る。
「今日は新しいメンバーが入ったので、連携の確認に来ました」
俺はカメラを指差し、麗華を促した。
「タンクの麗華ですわ」
麗華が一歩前に出て、身の丈ほどもある巨大な盾を軽々と持ち上げて手を振った。その様子はまるで騎士の見本のようだ。
瞬間、コメント欄が爆発的な勢いで滝のように流れ始めた。
『お嬢様だ!』
『でっかい!』
『デッカ!』
『縦ロールお嬢様!』
『デカい!』
「何がデカイって言ってるんだろうな? 多分盾のことだよな?」
俺が苦笑しながら呟くと、麗華は誇らしげに胸を張った。
「ふふっ、私の立派な盾に注目されていますわね」
次に俺はみどりを紹介した。
「スカウトのみどりです! よろしくね!」
みどりは笑顔で手を振った。小柄な体がドローンのカメラに収まる。
今度はまた違う反応がコメント欄を埋め尽くした。
『ちっちゃくて可愛い!』
『小さい!』
『可愛らしい!』
『みどりたん!』
「みどり、結構人気あるじゃん」琴葉が肘で小突く。
「えへへ、なんか照れるね」みどりは照れくさそうに頭を掻いた。
「よし、じゃあ探索して行きます!」
俺が号令をかけ、歩き出す。こそっと全員に「照らす」をかける。目に見える光はないが、4人の体に力が満ちていくのがわかる。
先頭を歩くのはみどりだ。スキル「危険察知」がフル稼働している。
「2時の方向、距離20メートル。モンスター来るよ!」
みどりが鋭く叫び、俺たちの後ろに下がる。ほぼ同時に、曲がり角からオークが飛び出してきた。
「私が行きますわ!」
麗華が前に出て、その巨大な盾を構える。オークが凶悪な牙を剥き出しにして突進してくる。ドォン! という重い衝撃音が響いたが、麗華は微動だにしなかった。華奢な体に似合わない怪力だ。
「今です!」
麗華の声に合わせて、雪が薙刀でオークの腹を突き、俺が首元に剣を振り下ろす。オークは断末魔すら上げられず、光の粒子となって消滅した。
一瞬の出来事に、コメント欄が再び湧いた。
『D級ダンジョンで遊んでいるパーティじゃないだろ』
『もっと上に行けるぞ』
『あの盾、鉄壁すぎる』
『スカウトの反応速度エグいな』
「あら、まだ私とみどりさんはレベル1ですわよ?」麗華がカメラに向かって言うと、コメント欄はさらに騒然となった。
『あれでレベル1!?』
『嘘だろ、もっとあるだろ』
『照らすってスキルヤバすぎない?』
信じてくれていないようだが、事実だから仕方ない。その後も俺たちは快進撃を続け、ボス部屋に到達した。
ボスであるハイオークも、麗華の盾がその猛攻を完全に受け止め、隙を見せた瞬間に雪と俺の攻撃が決まる。余裕の勝利だった。
《経験値を獲得しました》
《レベルアップ》
ファンファーレが鳴り響き、麗華とみどりのレベルが2に上がった。
「上がりましたわ!」
麗華が瞳を輝かせて喜ぶ。みどりもステータス画面を見て目を丸くしている。
「すごい…1日でレベル2だよ」
俺たちはカメラに向き直り、締めの挨拶をした。
「ということで、新メンバーとの連携もバッチリです! 次はいよいよC級に行きます! また見てください!」
5人で手を振り、配信を終了させる。コメント欄をスクロールすると、ある共通した言葉が目に留まった。
『ハーレムパーティ最高!』
『羨ましすぎるだろ…』
『ハーレム配信者誕生かよ』
俺は苦笑いするしかなかった。
その日の夜、俺たちはグループ通話で次の予定を決めていた。
「ねえ光輝、ハーレムパーティを目指してるの?」
みどりが好奇心旺盛な声で聞いてきた。
「イヤ、目指してるわけじゃないんだけど…キスが条件だからどうしてもそうなるしな」
俺がため息交じりに答えると、麗華がうっとりとした声で割り込んできた。
「あら、光輝さんが男性とキスするの見たいですわ」
「はあ!?」
「男同士の絡みを見たくない女性はいませんわ!」
麗華の爆弾発言に、通話の向こうで雪とみどりが「うんうん」と頷く気配がした。
「えっ、お前らもそうなのか?」
「まあ、それはちょっと…興味ありますね」雪がもごもごと答える。
「腐女子的心情的に、見たいかも…」みどりも小声で肯定する。
俺は最後の希望を込めて、琴葉にすがりついた。
「琴葉、お前はそんなこと言わないよな?」
「えっ? うん、そうだね…」
琴葉の歯切れの悪い返事に、俺は絶望した。
「お前まで!? 勘弁してくれよ!」
俺は頭を抱えた。健全な男子高校生として、それはちょっと勘弁してほしい。
「でもね、絡みは見たいけど、男性メンバーはいらないかな」みどりが言った。
「そうですね。女性のみの方が波風が立ちませんし」雪も同意する。
結論として、今まで通りメンバーは女性から探すことになった。
「みんな腐っているのか!」
俺はツッコミを入れたが、4人の笑い声が重なっただけだった。賑やかになったパーティだが、前途はまだ多難そうだ。




