4/18
2-2 交換日記
そんなある日、遥が唐突に言い出した。
「交換日記しない?」
「え、それって……親の世代がやってたやつじゃない?今ならメッセージアプリでよくない?」
「隼人ってほんと現実的。でもね、手書きだからこそ伝わることがあると思う。即答じゃなくて手紙みたいに、ゆっくり考えて書けるし。それに……もうすぐこの学校も終わり——この町もね」
最後の一言だけ、遥の声が少し沈んだ。その言葉に、胸の奥がざわついた。
「……要は思い出作り、ってことか」
「そうそう。でね——」遥はトートバッグの中に手をやる。
「じゃーん。もうノートは用意してます」表紙にシールが貼られたノートを差し出し、遥は笑った。
「強引だな」
「私の分はもう書いてあるから、次は隼人ね」
「で、書いたらどうする?」
「教室じゃ目立つし、下駄箱もオープンだから……百葉箱はどう?」
「百葉箱?」
「もう使ってないし、他の人の目につきにくいし、ちょうどいいでしょ?」
「……なるほど。じゃあ、それで」
僕は観念したように頷いた。
「他の三人を交えてではなく二人だけでいいの?」という質問は口にしなかった。その方が特別なものを共有できる気がした。
夕陽を浴びた遥の笑顔が、今も脳裏に焼き付いている。




