第10話 友達の友達
「死ね」
剣を振り下ろされた─────刹那。
「……あ?」
俺を切るはずだった剣は宙を舞い、男の右腕はドサリと落ちた。断面からはドバドバと血があふれ、下には血だまりが出来始めていた。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!くそくそくそ!!聞いてねぇぞこんなの!?」
痛みに悶え、男は膝をつく。
「言ってないからな」
誰かが助けに来た、と言う訳ではなく俺が切った。
「そ、そもそもなんだそれは!?聴覚上昇じゃなかったのか?!」
「どうだろな、俺も自分の能力が知りたいよ」
「じゃあそれはなんだ!?」
血相を変えて質問してくる。
それとは、先程こいつの腕を切った剣のことだ。ただこれは元々持っていたものではなく、ついさっきアニマで具現化したものだ。
「お前じゃわかんねぇよ、んで……」
リーダーの後ろにいた奴らに俺はニヤリと笑い、問う。
「来ねぇのか?どうせリーダーがこんなんだ。負けるってわかってんなら、せめて足掻いてみろよ」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
数分後、俺は他の奴らを圧倒した。
もう少し苦戦するかと思ったが、群れる時点で弱いということだろう。
さすがにまずいと思い、全員の止血は済ました。
そうして全て終わった─────わけではなく
「そこのお嬢さん、敵意がないならなんもしないぜ俺」
草むらからノソノソと出てきたのは、白髪のストレートロングの少女だった。おびえた様子でこちらを見ている。
「……すみません、隠れてて」
「いや、別にいいよ。仲間は?」
「……」
……下を向き、黙り込んでしまった。しまった、そんくらい察しておけば……!
そんな後悔を感じていたら
ぐぅ〜
……静まり返った森に、情けないほど間の抜けた音が響き渡った。
「ご、ごめんなさい……」
頬を赤らめ、うずくまってしまう。
「あーえっと、その〜なんだ、食うか?」
すっ、とサンドイッチを手渡す。
「いいんですか?一応敵ですよ?私」
「ほっとくのは違うじゃん」
謎の少女はぽかんとして、そこから笑顔を浮かべた。
「ありがとうございます!お名前は?」
「一之瀬大和、君は?」
「天野花音です」
「天野、悪いがついてきてくれ」
「え、でも私敵ですよ!」
「でもほっとけないんだ、頼む」
もちろん嘘だ。敵なら囮としても人質としても使える、これほどいい人材なんていない。それに仲間を聞いたときに黙り込んでいたのは、仲間がリタイアしたからだろう。その状況を利用する。
「……!ありがとうございます!」
感謝を告げられ、罪悪感が出てしまう。しかしそれではだめだと思い持ち直す。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
天野を連れてきたときには、俺がいなくなったことに気づいた赤羽がいた。
俺の後ろにいた天野を見た瞬間、赤羽が鬼の形相になって近づいてきた。
「勝手にいなくなったかと思ったら女連れてきて、どういう事よ!」
赤羽が武器としている薙刀を持って詰めてくる。俺達仲間じゃ?
「だーー!待て!これには事情がある!だから薙刀を下ろせ!」
「ええい問答無用!」
「聞いたのそっちじゃ?!」
俺たちが騒いでいると、橘が起きてしまった。
「うるさい、まだ夜だよ」
何事かと思い橘がこちらを見た途端、衝撃的なことを口にする。
「……あれ、花音。何でここにいるの?」
「琴佳ちゃん!?わぁ!ここで会えるなんて!神様ありがとう!」
ダッシュで橘に駆け寄り、派手なハグを炸裂する。
「花音、熱い」
「とりあえず、二人はもう寝ましょう。花音ちゃんは私の寝床使っていいから。一之瀬はこっち来なさい」
俺達の絆はどこ行ったんだ、どうか赤羽に帰ってきておいで。
そんなことを考えながら二人で森の中に入るのだった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「聞きたいことが山ほどあるから、覚悟しなさい」
三人から少し離れたところで、赤羽からの尋問が始まる。
「どこに行って何をしてたの?」
「森に行ってチームを倒していった」
「なんで?」
「赤羽の作戦は皆がやると思った。だから俺がそいつらを倒せば速いだろ」
はぁ~、とため息された。
「体力を温存させるためのサバイバルにしたのに、何をしてるのよ」
「わりぃ」
「まぁいいけど、それであの子は?」
「拾った」
「子猫か」
「でも囮とか人質に使えるぞ」
「あっあんた、あんなかわいい子をそんな目的で拾ったの?恐ろしいこと考えるわね」
「ひ、ひどい!勝つためにしたのに!」
「ひどいのはあんたよ」
しまった否定できない、こいつたまに頭良くなるのなんなん?
「今変なこと考えてなかった?」
「ソンナコトナイヨ」
「ふぅん、戻るわよ」
「え?あ、はい」
いきなり尋問が終わり、俺たちは川に戻ることになった。




