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seek one's fate  作者: 六軒さくみ


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*見失う未来2*

「大尉!」


 後ろから声とともにバタバタと駆けてくる足音がして「お前ら軍人だろ、気配を消せ、気配を」と無理難題を心の中で呟きつつタイスはさてどうしようかと考える。

 出来れば今は逢いたくはなかったが、まさか「今はしゃべりたくない」とも言えないから、その場で立ち止まり思っていたことなどおくびにも出さずに、いつもの表情を作ってから振り返った。

振り返れば其処には声の主だけでなく、他の三名も顔に困惑と不安とをない交ぜにした表情で立っている。

 タイスは内心で大きなため息を零しつつも、表情だけは崩さずにどうしたと問いかけた。


「……あのローダデイル少尉のお父様が処刑されるってお話は本当ですか?」


 部下四人組のリーダー格のユマの質問にタイスは「やっぱりきたか」と喉の奥で呟いたが、ドミニクから繰り出された言葉にさすがに表情を変えてしまった。


「ローダデイル少尉がそのせいで謹慎になっているって」

「おいおい、なんだよ、それ。俺は知らないぞ!」

「その、会議にも出席されていませんでしたよね……」

「……お前達さ一応はステラ候補だろ。だったらそんな流言飛語を信じて惑わされてどうするよ」

「でも…」

「でもじゃないだろ。それにそんなに気になるなら人に聞かないで、自分で確認しろ!」


 と、ついとがった声を出してしまったと、部屋に戻って来るなり愚痴るタイスに、覇気もなくベッドに座っているアスランは薄く笑みを浮かべただけだった。 

 一応軍服を身につけてはいるものの、真面目なアスランには珍しくネクタイを外し、ボタンもファスナーも外している。


「すまない、いろいろと」


 これまた覇気のない声で謝られ、これはこれで問題だと頭を抱えたくなるのをタイスは必死に我慢した。


「謹慎…マジなのか?」

「タイスまで何を言ってるんだよ。……まあ、似たようなものかもしれないけどな。事が済むまで大きな作戦には参加するなと言われたんだし」

「お前の父さんと爺さん、一体何があったんだ? あ、いや、話したくないなら別に話さなくてもいいんだけどさ」

 タイスの言葉にアスランは困ったような表情を浮かべる。


「俺にも……よく判らない」


 その呟きに嘘はない。

アスランの父親であるエイドリアンと、祖父のドーマスカーの間に、確執などという一言では済ませられないモノが存在していることは薄々、気が付いてはいた。

 幼い頃からエイドリアンは自分の父親であるドーマスカーの話になると時に険しい表情を見せ、時にひどく緊張していた。

 だから、アスランも幼いながらも二人の間にただならぬ事があったことは理解していた。

 それでも、父がアスランに向かって祖父の悪口や、アスランの心証が悪くなるようなことを一度として、口にしたことはなく、アスランの考えを誘導したこともなかった。

 もちろん恨み言を聞いたこともない。


 だからこそ、二年前に藁をも掴む思いで、アスランは祖父を訪ねたのだ。


 その時の祖父の態度を思い出すと今は言いようもなく苦い感情が心を支配するが、それを気にするだけの余裕を当時は持つことが出来なかった。

 徐々に祖父の口から様々な事を聞かされ、そして色々な事実を知れば知るほど、自分は間違っているのではないかという思いに駆られている。

 父が一度として口にしたことがないことを、祖父は平気で口にするのだ。

 アスランにとっては父のこと母のこと、そして兄のこと。

 たとえ身内であろうとも、自分の母親や父のことを悪く言われて笑っていられるほど、アスランは大人でもなくそして度量が広いわけでもない。

 つい最近、その祖父と大きく衝突したのもそれが原因だった。

 それでも祖父のアスランに対する態度は改まることはなく、アスランも避けていた節はある。

 が、先日、突然に配置転換を命令された。

 エイムズに赴任を命じられて日も浅く驚いたことは言うまでもない。

 しかも新しい配属先は新造艦ジェミニ。

 よくよく考えれば、それはエイドリアンの処遇に対するドーマスカーの布石だったのだ。


 リバティ・ベルは現在、連邦軍の本部の護衛艦隊に組み込まれている。

 本来ならばアスランはタイスと共にリバティ・ベルの所属になるはずだったのに、リバティ・ベルが、アトランティス海域から離脱すると同時に、エイムズへの配属を命令された。

 そして今度は、そのエイムズが補給のため海域を離脱することを伝えられると同時にジェミニへの配置換えを知らされた。

 本部から一番遠い部署へと。

 その直後に届いたのが、父エイドリアンの処遇に対する通達書だった。

 息子として父親を助けたいのに、肝心の祖父とは連絡が付かない。

 付いたとしても祖父が威圧的な態度で「お前は軍属の人間だ」とこんな時にばかり正論を吐き出す。

 正直、身動きの出来ない状態にいる。


「……父と祖父との間に何があったにしろ、俺は何かを見落としている気がするんだ…」








「なんで…そんなことになってるの?」


 ルリの口から飛び出した言葉は当然の響きだった。

 どう説明していいのか、ルク自身もよく分からない。


「驚かれるのも無理はない。これには私も予想外の展開でした。ですが、コウキ代表が直々に通達を入れてきたと言うことは信憑性も高く、そして猶予もないということです。あなた方が宇宙から墜ちてきたと同時に連絡を受けましてね。もう少し早く伺う予定でしたが、何分にも連邦の攻撃が意外と熾烈を極め、遅くなった次第です」

「その連絡はいつ?」

「あなた方が砂漠に墜ちて直ぐですよ。コウキ代表はこちらと連絡が取れなくなり、かなり気を揉んだようです」


 ヴィマーナが味方の援護射撃のミサイルに当たり舵取りに失敗し、しかもそのまま砂漠になんとか不時着した直後、本国と連絡が取れなくなった。

 コウキが言っている「連絡がとれなくなった」というのはその時の事に間違いがない。

 だから、コウキは恥を忍んでラシードに連絡を入れたのだ。その時のコウキや首脳部の一員として働いている人間達の顔を思い浮かべると、ルクは申し訳なさで居たたまれない気持ちになった。


「コウキ代表の言い分は最もだと思いますよ。貴国にとっても、貴国と足並みを合わせた国にとっても、彼が処刑されては元も子もない。もっとざっくばらんに言わせて頂ければ、貴国のあおりを受けて攻撃されるのは割に合わない」

「それは、いたく判りやすいお言葉で……」

「だからといって、今さら無かったことに出来るはずもありません。すでに弱腰になってしまった国もありますが、そんなものは捨て置けばいいんですよ。たなびく風に流されるようでは、この先も期待できないでしょう。ですが、このままでは事態は悪化し、もっと混乱を招きかねません。コウキ殿は必死に打開策を考えておりますが、一国の代表となられた身では限界はあります。そこで、これはここだけの話として、心にしまって置いて欲しいのですが覚悟はよろしいかな」 


 強い口調で呟いて、彼はルクではなくルリとルカを見つめる。


「我々が連邦の大統領を暗殺し、事実上連邦軍を指揮しているドーマスカーの孫息子を誘拐します。それを取引材料にしようと思います」


 というラシードの口から出てきた言葉を聞いた瞬間、ルクは眼を剥き、ラシエルは腰を抜かしかけ、トマソは息をするのを忘れた。

 ルリとルカに至っては、と、心配してルクが衝撃から立ち直って二人を見れば、ただ真っ直ぐとラシードを見つめているだけだった。


 微かな音すら消された部屋で誰もが息を詰める中、ルカがくすりと笑った。

 その冷たい笑いをルクは一度見たことがある。



「こんな時に冗談を言えるなんて、ヌミディアの英雄は剛気なんだね」

「何故、冗談だと?」

「本気なら、あなたはここにいないでしょう?」


 ルカの言葉にラシードが声を挙げて笑うと、ルク達は詰めていた息を吐き出す。


「まあ、そんな方法をとったところで意味はありませんから、もちろん冗談ですよ。一刻の猶予も無いのは事実ですが。ですから、これから話すことはコウキ殿や月政府そして他の国とも話した結果です。多少、強引だとは思いますが、これしか方法が思いつかないということで一致しました」


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