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あなたへ  作者: 臣 桜


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8/9

安藤哲也

 紗栄子と再婚したはいいが、洋子が死んでからというもの、彼女とセックスしようとした時に限って、不可解な現象が起こるようになった。


 どこのラブホに行っても急にテレビがついたり、シャワーが出たりした。


 お互いの家にいてもラップ音のような家鳴りがし、物が落ちる、倒れるなどが起こる。


 加えて家の中を洋子らしき女性がスッと通り過ぎる幻覚を視るようになり、洋子と住んでいたマンションは早々に引き払い、早めに家族で暮らす一軒家を建てる事にした。


 しかし紗栄子がたびたび言っているように、子供たちの様子もおかしくなっている。


 誰もいない空間に向かって笑いかけ、「ママ」と言っているのを見るとゾッとする。


 洋子が知るはずがない練馬の新築にいるのに、その家でも彼女の気配を感じ、幻を見る。


 紗栄子を抱いている時、上になっているあいつの顔が洋子に見えて、思わず突き飛ばした。


 仕事帰りに一杯引っかけてから帰ろうと思ったら、一人で入店したのに、二人分のチャージを出される。


 街中を歩いていると、ショーウインドウに洋子が映り、信号待ちをしていたら道路の向かいに洋子が立っている。


 紗栄子も同じような目に遭っているらしい。


 おまけに彼女はパッチリとした目をしていたのに、近年どんどん腫れぼったい目になり、一緒に歩いているのが恥ずかしくなるようなブスになっていった。


「ストレスで食べてる」と言うが、信じられないぐらいジャンクフードを食べ、結婚前の体型が嘘のように太っている。


 洋子と結婚していた時は、健康的な手料理を毎日食べられたのに、今は新築の家でコンビニ弁当ばかり食べている。


 紗栄子は家事をまったくせず、フケの溜まったボサボサの髪、洗濯していないスウェット姿でソファに寝転び、スマホばかり見ている。


 あれだけ金があったと思っていたのに、紗栄子はホストクラブに通い、スマホゲームの課金でどんどん金を溶かしていた。


 おまけに何十万もするパワーストーンを買ったり、霊媒師に頻繁に相談して、一回につき十万ちかくかけたりしている。


「お前! 今月何万使ったのか分かってるのかよ!」


「金ならあるんでしょ!」


「そういう問題じゃねぇよ! くだらねぇ事に金使うなって言ってるんだよ!」


「はぁ~? だったらお前もキャバ行くのやめろよ! 酒臭いし香水くせーんだよ!」


「俺は付き合いで行ってるんだよ!」


「付き合いでキャバだって~! 仕事でおっぱい揉むのかよ! 私のおっぱいでも揉めよ! ほら!」


「誰がお前みたいなデブに欲情するんだよ! 頭おかしーんじゃねぇの」


 瞬間、紗栄子はティッシュの箱を投げつけてきた。


「図星突かれたからってヒスんなよ! 悔しいなら痩せろや!」


「お前も最近毛根が寂しくなってきたんじゃないの? フサフサになってから人様に文句をつけたら?」


「なんだとぉ!?」


 カッとなった俺は紗栄子の襟元を掴み、思いきり平手をした。




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