↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
あなたへ  作者: 臣 桜


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/9

真優と勝斗の〝ママ〟

 真優にはママが二人います。


 一人のママはいつもゴロゴロしているし、すぐ怒るのであまり好きじゃありません。


 もう一人の〝ママ〟は綺麗なお姉さんで、いつもニコニコして私の話を聞いてくれます。


 一階からパパとママの怒鳴り合い、ドタンバタンという物音が聞こえる中、私は勝斗(しょうと)お兄ちゃんと一緒に、〝ママ〟からお話を聞いています。


[……そしてシンデレラは、王子様と幸せに暮らしました。めでたし、めでたし]


 白いワンピースを着た〝ママ〟はニコッと笑い、絵本を閉じました。


 パパとママには〝ママ〟が見えていないようだけれど、私とお兄ちゃんには〝ママ〟がハッキリ見えているし、〝ママ〟は物に触る事もできます。


 パパとママは「うちには幽霊がいる。呪われてる」と言っているけれど、多分その幽霊は別の幽霊なんだと思います。


「死ねよ! お前! 死ね!!」


 一階からパパの声がし、ママの悲鳴とガシャーン! という音が聞こえました。


[ねぇ、勝斗くん、真優ちゃん。もし良かったら〝ママ〟のおじさんの家で暮らさない? 大輔(だいすけ)おじさんって言って、子供がいないからきっと二人が来ても歓迎してくれると思うの]


 私はお兄ちゃんと顔を見合わせ、「どうしよう……」と視線を合わせる。


[あのね、二人ともちゃんとお風呂に入っていないし、ご飯もろくに食べてない。このままじゃ死んでしまう。パパとママは他の大人が話を聞いてくれるから、二人は一旦大輔おじさんの所に行こう?]


〝ママ〟に言われ、私はクンクンと自分の匂いを嗅いでみました。


 でもずっとこの家にいるし、ずっとお風呂に入っていないし、同じ服を着ているし、変な匂いがしているかは分かりません。


「……僕、行く」


 お兄ちゃんが頷いたので、「私も!」と手を上げました。


[良かった。〝ママ〟が大輔おじさんの家まで一緒にいくから、心配しなくていいからね]


 私たちは〝ママ〟と一緒に階段を下りていきました。


 さっきまであれだけパパとママが大声を上げていたのに、今はシンと静まりかえっています。


[お金はこの引き出しにあるから、ポーチに入れて]


〝ママ〟に言われた引き出しを開けると、クチャクチャになったお金が入っていたので、ママがまだ優しかった頃に買ってくれた、〝ひゃっきん〟のピンクのポーチに入れました。


 リビングを通ると、変な匂いがします。


 ママは顔を変な色にして、仰向けに寝たままおしっこを漏らしていました。


 パパは首から棒を生やして、ママの上に重なるように倒れています。


[二人の事はいいの。大人がちゃんとしてくれるから]


〝ママ〟に言われて、私たちはリビングを通って玄関に行き、靴を履きました。


 夜に外に出るのはいけない事なのでドキドキするけれど、〝ママ〟がいるなら大丈夫。


[さあ、二人とも行きましょう]


 私は〝ママ〟の左手を握り、お兄ちゃんは右手を握って、夜の道を歩いていきます。


 角を曲がる頃、近所のおばさんがうちから駆けだしてきて、「誰かーっ!」と叫んでいるのが聞こえました。


[ほら、綺麗なお月さんだよ]


〝ママ〟に言われて空を見ると、黒い空に白くてまん丸なお月さんが浮かんでいました。


〝ママ〟は『うさぎうさぎ』の歌を歌い始めて、私とお兄ちゃんもそれに合わせて歌います。


 夜に外を歩いてワクワクしているせいか、どんどん楽しくなっていきました。





 大輔おじさんの家に着くと、とても驚かれたけれど、その日は正子(まさこ)おばさんがお風呂に入れてくれて、温かいお布団で眠れました。


 次の日、〝けいさつ〟が来て、パパとママが死んだと言ってきたけれど、よく分かりませんでした。


 しばらくしてから、大輔おじさんと正子おばさんが、パパとママの代わりになりました。


 二人と一緒に暮らすようになってから、美味しいご飯を毎日食べられて、前よりとても幸せです。


〝ママ〟はずっと傍にいてくれるし、多分今まで私たちと一緒にいたママは、どこかの知らないおばさんだったんじゃないかな、と思うようになりました。


〝ママ〟はいつも綺麗でニコニコ笑っていて、毎日話を聞いてくれます。


 真優は、とっても幸せです。




**





 紗栄子の首を絞め、あいつに包丁で首を刺されたあと、どんどん体から血を失い、体温が下がっていくのを感じた。


 薄れゆく意識の中で、白い足と血に染まったワンピースの裾が見える。


 ――あぁ、迎えに来たのか。


 結局、俺は洋子が言ったように呪われてしまったのだ。


 観念して視線を上げると、首があり得ない方向に曲がった洋子と目が合った。




 ――これで一緒だね。




 血まみれの洋子が言い、五指が折れ曲がった手が眼前に迫った。





 完


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。