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あなたへ  作者: 臣 桜


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5/9

憧れからの悪意

 入社当初、同期の洋子を見た時に感じたのは『気に食わない』という想いだった。


 パッと見て美人! と思える派手さはないけれど、洋子はスッキリとした清潔感のある女性だった。


 長い黒髪が綺麗で、黒目がちの目は牝鹿を思わせる。


 バランスの取れた体をしていて、運動をしているからかスタイルが良かった。


 洋子はすぐに周りと打ち解けて、『感じのいい人』として馴染んでいった。


 入社当時の私は地味な女で、コンタクトを入れるのが恐くて眼鏡を掛け、自分に似合う服が分からずメイクも知らなかった。


 胸が大きいから、余計に着る服に迷い、下手な物を着ては太って見える、もしくは野暮ったく見えるのが悩みで、お洒落を諦めていた。


 入社後、親交を深めた洋子は私に似合う服や、胸のボリュームを抑える下着などを教えてくれ、垢抜けるためのメイクも教えてくれた。


 その結果、後輩ができる頃にはすっかり垢抜け、自分に自信を持てるようになっていた。


 洋子には感謝しているけれど、そんな彼女が周りに慕われ、中心人物になっているのを見るとモヤモヤする。


 垢抜けた今の自分なら、洋子がいる場所にいてもおかしくないのでは……と思ったのだ。


 私は洋子の振る舞いや言動、持ち物などをチェックし、少しずつ彼女を真似ていった。


 洋子ならこうするだろう、と思った事を実行していくと、周りから『飯島さんって思っていたより面白いね』と言われるようになった。


(私にはもともと素質があったんだ)


 そう思った私は、洋子が気に入っている服屋に入り浸り、新作が出たらすぐに買った。


 洋子が使っているコスメもすべて買ったし、洋子が通っている美容室やサロンにも通った。


 洋子と同じバッグを持ち、同じチャームをつけた時、彼女にこう言われた。


『……悪気がないのは分かっているんだけど、あまり同じ物を持たれると、バッグを間違えてしまう可能性があるから、もう少し差別化を図ってもらえると助かるな。私も気をつけるから』


 それを聞き、私は何も悪い事をしていないのに、物凄く責められた気持ちになった。


 洋子と懇意にしている女性社員まで、ヒソヒソと『真似女』と言っているのを聞いて、とても不快になった。


 ――きっと洋子も、陰で私を悪く言ってるに違いない。


 そう思った私は、洋子と親しくしている主任――安藤さんを味方につける事にした。

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