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あなたへ  作者: 臣 桜


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飯島紗栄子

 私――、飯島(いいじま)紗栄子は、洋子の葬儀後に送られてきた動画を見終わり、顔を引きつらせて固まっていた。


「……な、なんなの……」


 動画を見終わったあと、確かに誰かに肩を掴まれた感覚があり、耳元で洋子の声がした。


 バッと振り返っても誰もおらず、静まりかえったリビングがあるのみ。


「……呪いなんて……」


 私は自分に言い聞かせ、せせら笑う。


(どうせハッタリに決まってる。世の中に呪いなんてものはないし、幽霊なんてものもいない。あれも洋子が適当にらくがきした紙で、何の意味もない)


 そう思った私は、足音を忍ばせて別室へ行き、寝ているはずの子供の無事を確認しに行った。


「……真優(まゆ)、何やってるの?」


 寝ていると思っていたのに、下の子――娘の真優が暗闇の中、誰もいない空間を向いて立っている。


「あ、ママだ」


「『ママだ』じゃない。何やってたんだよ。早く寝ろよ」


 娘を叱ってベッドにつれて行こうとした時、真優が変な事を言った。


「今ね、もう一人のママと話してたの」


「……は?」


 この子の母親は紛れもなく私だ。


 もう一人のママなんている訳がない。


「何言ってんの。いいから早く寝ろって」


 私は真優の頭を軽く小突き、ベッドに押し込む。


 娘に布団を掛けたあと、何となく室内に誰かがいるような感じがし、嫌な感覚を得た私は、そそくさと部屋を出た。






 その後、あの人――安藤哲也(あんどうてつや)と会って話したら、二人ともに洋子から動画が送られたと知った。


「死ぬ勇気があるなら、一言ぐらい何か言えばいいのに」


「……言えなかったから、思い詰めてああいう手段をとったんだろ。……っても、最悪な最期だな。若干の罪悪感もなくなったわ」


「でも、お金はたっぷりもらえたんでしょ?」


「まーな」


 私たちは微笑み合い、これからどうするかを話し合っていった。


 洋子が亡くなったあとに、同じ職場にいる夫と親友とが再婚したら、何か言われるだろう。


 だから一年ぐらい、私が彼を支える形で付き合い、再婚しようと決めた。

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