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9話 フユキの悩みその1

空の酒瓶や飲み掛けの酒が机に散乱している俗に言う汚部屋の中に居るのは、自分の体よりも一回りはでかいであろう安物のジャージに身を包んだ、容姿端麗な部屋や服装を見なければ清楚そのものの女性。


そうその正体は黒斗の同期でもある、クラウン五期生所属のフユキその人だ。


その姿は日頃リスナー達から、清楚清楚と言われている彼女のものとは真逆で、その姿は堕落惰性不衛生などの、あまり良くない言葉が似合う姿になっていた。


「…………どうして。」


彼女フユキはベッドから体を起こすと、自分がいつも配信をしている席を眺めながら、そう一言呟いた。



元々彼女はそこそこのお金持ちの家の子だったのだが、彼女の両親がやたら外見や外面を気にしており、そのせいで小さい頃から多くの習い事に言葉遣い、更には交友関係にまで口出ししてきて、それが嫌になったフユキは、家を飛び出し一人暮らしをする事にした。


初めは誰にも縛られない生活を喜んでいた彼女だったが、それも初めだけだ。


すぐに家から持ってきていた貯金は使い潰し、それからはバイト生活で何とか食いつないで行っており、やはりどれだけ嫌がっていたとしてもフユキはあの外面を気にする両親から生まれた子だ。


初めはバイトも特に苦ではなかった彼女だったが、元金持ちという事もあり次第に自分はもっと上に行ける存在だと思う様になったが、現実そんな事はなくどれだけ経とうと彼女のバイト内での地位は変わらず、いつしかそれに対してイライラする様になり、それを誤魔化す様にお酒を飲み始めたのだが、これが彼女を1番狂わせる要因となった。


そう、彼女はお酒にどハマりしてしまったのだ。


バイトで稼いだお金は最低限の生活費を残し、残りは全てお酒に充てる様になり、そんな彼女が最終的に行き着いた場所が、バイト中に飲酒をしていることがバレ、バイトをクビになるという何とも言えない事だった。


流石にこれは自分に非があることを認めたフユキは、それからお酒を飲む量を減らしていく事と共に、次は仕事中に飲酒をしていてもクビにならない職種を探したところ見つけたのが、飲酒配信という彼女の目指していたものが全て詰まった配信だ。


それからの彼女の動きは早かった。


持ち前の清楚そうな声と話し方を用いた動画を撮り、それをvtuber事務所の中で1番大きな所に送った。


結果は当然の失格だった。


それはそうだ、今どき声と話し方だけで受かるものなどほとんどいない、だがそれでもフユキは諦めなかった。


何故ならお酒を飲んで話しているだけでお金がもらえて、更にはそれが人気商売だったからだ。


そんな彼女の努力が通じたのか、五回目の応募で彼女はクラウンに合格することができた。


その事に喜びフユキは酒を飲み1人で宴会を始めた。


まさか明日事務所に来る様にという連絡が来ているとも知らず。


その結果フユキは、若干お酒が残っている状態で、自分の同期となる人達と出会う事になった。




「どうも♡姫は、姫花って言うの!よろしくね!」

「ええ、私はフユキです。よろしくお願いしますね」


事務所に来てから集合場所に指定されていた部屋に入ると、そこには私と同い年ぐらいの長身の男性とその男性と話している年下の男の子に、今さっきいの一番に話しかけてきたこの中では最年少に見える姫花ちゃんの3人が居た。


そして、姫花ちゃんが挨拶した事によって奥にいた2人もこちらに気づき、話をやめこちらに近づき挨拶をしてきた。


「初めまして俺はケミーって言います。ゲーム配信を主体に活動しようと考えています」

「はい、私はフユキって言います。よろしくお願いします」


ケミーと名乗った男性は、私と同様お酒を飲む様で、私が少し酔っていることに気づくと、ほどほどにねと優しく注意というほどではないがそう言いうと、何事もなかった様にケミーさんの後ろにいる男の子と入れ替わる様にその場を後にした。


そして次に挨拶をしてきたのは黒斗と言う少年、本人は19歳で大人っぽく振る舞っているが、26ともなると正直まだ19歳は子供の様に思えてしまうのだが、それは流石に本人の前では言わずにいた。


そしてその黒斗くんは何でもここのクラウンという事務所が設立した時から知っているらしく、クラウンに入るために高校生活のほとんどを捨てて来たとまで言う。青春を両親に潰された私から見れば何で勿体無いことをしたんだと言いたくなるも、本人がそれで満足しているのなら私がいちいち口出しすることではないと思った。


そんな高校3年間を犠牲にクラウンに入った黒斗くんにだけは、自分が飲酒配信目的で入った事だけは絶対に言わないと心に決めた。



それから私達には1ヶ月間の準備期間を与えられたが、vtuberについてそこまで詳しくなかった私は色々とパソコンを使ってvtuberについて調べたりしていた。


そんな色々と努力している私とは違い他の3人は、毎日の様に通話しており、何でそんなにもお気楽なのかしらと思いながらも、一応同期だしと思い何度か通話に参加して見たものの、そこではほとんど黒斗くんがvtuberについて語っており、たまに私にも偉そうに「こうすればいいよ」と上からの物言いをしていたが、そのぐらいネットを探せば書いてある様な内容ばかりで、特に必要ないなと思いながらも、気分を害したら良くないと思いその場では「ありがとうございました」と少し煽てておいてあげた。


そうして1ヶ月はすぐに過ぎ、私達五期生の初配信当日になったのだが、何と黒斗くんが流行病にかかってしまったらしく、初配信ができなくなったらしい。


流石にこれには同情はするが、それでも皆んなに自分のvtuber知識をひけらかす前に、もっと他の知識を入れておけばよかったのにとも思わなくはなかった。


そうして私達五期生は1人を除いて上手くデビューする事が出来他のだった。


それからの1ヶ月間は自分のキャラをリスナー達に定着させる為に、同期以外のメンバーとのコラボを運営さんから禁止していたのにも関わらず、姫花ちゃんが初配信の次の日には先輩とコラボした事には驚き、まさか自分が人気になる為にここまでやる子だったと思いながらも、今回の事で姫花ちゃんが運営さんに怒られるだろうなと予想していたが、まさかのその配信が大バズりし運営は姫花ちゃんが行なったその行為を怒る事もなく、逆にもっとコラボする様にと促し始めた。


結果姫花ちゃんのチャンネル登録者数は、五期生の中と言うよりもクラウンという事務所の中でもトップ層に1人で爆走して行き、私を含めた残りの3人は姫花ちゃんに置いて行かれる様な形となった。


だがそれでも私はそこまで落ち込むことはなかった。


何故なら私も姫花ちゃんほどでは無いが、デビューにはそこそこ成功しており、すでに登録者は20万人もいて、更にはまだデビューもしていない黒斗くんはなんだが、ケミーさんと黒斗くんは登録者数が5万人程度で、これは俗に言う箱推しと言うクラウンに入っているから、一応登録しておくと言う層だけが登録している状態の2人がいる為、安心していたのだが……


そのうちのケミーさんが、配信で得意とするゲームの攻略の仕方や、練習方法などをリスナー達にわかりやすく説明し始めてからは、その部分の切り抜きが大量に作られるようになり、徐々にだが登録者数を伸ばしていき、いつしか私と並ぶ様に20万人ものチャンネル登録者を手に入れるまでになっていた。


それにより今までは姫花ちゃんと言う例外を除いて、自分が五期生の中でトップだと思っていたから安心していられていたのだが、それもケミーさんが実力で私と同じ所まで上り詰めて来た事により、自分もどうにかしてケミーさんに抜かされない様に頑張らなくてはと考えていた時に、とある事件が起きた。


そう、ケミーさんの過去のアカウントが有志の手により発掘され、そこでゲームの上手さで売っているケミーさんがチートを使っていたと言う発言が見つかり炎上したのだった。


それを見た姫花ちゃんと黒斗くんは直ぐにケミーさんのことを心配をしていたが、ケミーさんが炎上している事に気づいた時の私から出たのは、心配の一言ではなく安堵からくる吐息だった。


それを認識した瞬間口を両手で塞ぎ周りに人がいないかと見渡してみるが、そこには最近飲む量が減ったお酒の空瓶が転がった、人が住んでいい様な部屋では無い状態な自分の部屋だけだった。


それから少し経った頃、自分が炎上した同期に対して心配では無く、そんなことをしてしまった事に驚き、直様2人に続く様にケミーさんに大丈夫ですかとメッセージを送った。


そしてこれからケミーさんがどんどんと炎上してしまったらどうしようかと考えていたが、その日にケミーさんが自分のチャンネルにて、過去にチートを使っていたことを認めるのと、今はチートを使用していなことを証明する為に、機材一式を運営さんに渡して確認してもらってることを伝え、今はしてなかったとしても、過去にチートを使用していたのは事実だといい、リスナー達に誠心誠意頭を下げた。


その素早い行動と過去にチートを使用していたことをウダウダ言い訳をする訳ではなく、キッパリと使用を認めた事により、それ以上ケミーさんの炎上が燃え広がることはなく、それから1週間の謹慎を言い渡された。


その炎上で悪い事だけが起こった訳ではなく、今回の件を機にケミーさんを知り、チャンネル登録するものが続出した結果、ケミーさんのチャンネルは私のチャンネル登録者数を上回り30万人前後にまで一気に膨れ上がった。


今回のケミーさんの炎上でほとんどケミーさんにダメージが無かったどころか、逆にプラスのことが起こり過ぎているせいで、一瞬ほんの一瞬だが今回の配信は自演なのでは?と思ってしまったのだが、こんなことを一瞬でも考えてしまったことを、2日後には死ぬほど後悔する事になるとは、思っても見なかった。




そしてケミーさん炎上事件の2日後に、私達五期生にとっては一生忘れられない程の大事件が起きた。


それはいつもの様に配信をしている時に起こった。


「へーそうなんですね。今度私も試してみたいと思いますね」


:そうそうあの化粧品めちゃくちゃいいから

:おまいら何でそんなに女性ものの化粧品とかに詳しいんだよw

:今ケミーさんすごい炎上してるけど大丈夫?


ケミーさんが炎上してる?


「ケミーさんの炎上って確かもう決着したんじゃ無かったんですか?」


:だね

:炎上してるよ

:すぐに謝罪したのはよかった

:確か結構すぐに鎮火したよね


コメント欄では燃えてる派ともう燃えてない派で意見が割れていたが、私も含めもう鎮火したと思っている人の方が多かった為、この話はそのまま流れたのだが、配信が終わった後少し気になりトゥイッターでケミーさんの名前でエゴサーチしてみた所、2日前とは比べものにないほどの大炎上を起こしていた。

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